アリスのダンジョン ③
バルバッソがこちらに向かって駆けてくる。
「……っ! バルバッソ危ない!」
「アリス。気づくのが遅いよ」
地鳴りの音が聞こえる。
土煙が舞い上がる。
「な、なんだ!? 何が起きている!?」
「やっぱり、そうなんだ」
ダンジョンが絶対に壊れないというわけじゃない。
ダンジョンには核があることは知っていたし、壁などは破壊可能で壊されてもすぐに修復されるってことは知っていた。だがしかし、瓦礫ができるということ。
はじく力が強いとは感じていた。だからこそこういう手段に出たわけだけど……。
「それじゃ、みんな地獄で会おうぜ?」
その瞬間、部屋が崩れ落ちたのだった。
土砂が私たちの上に降りかかる……が、私は水のバリアを貼っていた。こういう時こそスキルを有効活用しないといけない。
降り注ぐ土砂。私は水のバリアに包まれながらやりすぎたと思っていた。
はじかれたクナイは壁に刺さり、ひびが入った。それを何度も何度も繰り返していった。そして、そのひびは大きくなり、崩壊した。
ここの構造は洞窟と遺跡を合わせた形に近かったからだ。ボス部屋は真っ白なコンクリートに覆われたような感じだったがためにこういうような作戦に出たのだ。
ま、すぐに修復されるからいいんだけどね。
すると、土砂がなくなり、ボス部屋に戻った。
目の前にはバルバッソが倒れており、アリスが水のバリアの中で腰を抜かしていた。
「こういうギミックも利用しないとね」
「……ねえ、ひび割れって計算のうちだったのですか? あんなに力が強いってわかっていたのですか?」
「いや、最初にクナイをはじく瞬間に感じたからそういう作戦に出ただけ」
私はバルバッソに回復魔法をかける。
バルバッソは起き上がったのだった。
「……なぜ崩落が。この壁が容易く崩壊するほどダメージを与えておりましたっけ」
「いや、結構新品に近かったけど、壊すだけのダメージを与えたのはバルバッソ自身ですよ」
「……なぜ私が」
「あのクナイ、躱したりはじいたりしたでしょう」
「まさか……そのクナイが?」
「あたり」
私がクナイを投げるだけじゃない。
ダメージを与えられる壁だって気づいたのと、崩落が起きることに賭けたことだ。崩落が起きない場合も考えたからそれはそれでよかったんだけど。
「がむしゃらにクナイを投げていたのにはそんな理由が」
「さらにすごい話をしますと、あなたがはじく方向がすべて壁のウィークポイントでした」
「……はい?」
「あ、やっぱり色が若干薄いところ脆いんだ」
全体的に白色の部屋なんだけど、一部だけ少しだけ色が違う。
ほとんど似たような色だけどね。
「あなたがはじくために投げた、はじく計算もして投げていたんですよ」
「え、ええっと?」
「ま、賭けだったけどね。はじくんならこういう角度ではじくだろうとはじかれた場合の計算をしつつやってたからね」
本当にはじくかどうかはわからなかったしな。
「貴方は追い込んでいたつもりでしょうが自分で自分の首を絞めていたんです」
「すべては手のひらの上……?」
「博打が多い計算だったけどね。壊れるだろうなとは思ってたけど崩落起きるとは知らなかったし。天井の瓦礫がワンチャン当たればいいなっていう感じだったし」
実用的ではないしなかば運も交じってる。
「ま、計算通りにいったのは安心したね」
「……参りました」
「さすがです」
もう二度とこれやんない。怖いし痛い。




