アリスのダンジョン ①
風邪も治り、私たちは家の中でご飯を食べていた。
「はい……わかりました」
有栖川さんが電話で応対をしていた。
学校の電話番号だったから多分学校だろう。
「パン子さん。今日学校休みだそうです」
「まあ、しゃーない」
窓の外を見るとすごい嵐だった。
台風が上陸しており、この街に直撃しているために外はとても風が強い。窓に風が打ち付ける音が聞こえる。
今日外に出ようものなら飛ばされそうだ。
「そういえば縁側とかあきっぱだけどいいの?」
「その点は大丈夫。うちのもんがやってくれていますよ」
「なら安心」
毎日毎日お疲れ様です。
味噌汁を啜った。わかめの味噌汁。
「味噌汁の具はやっぱり油揚げが好きだなー」
「私は豆腐ですね」
「豆腐もいいよなー」
でも本当においしい。誰が作ってるんだろう。
出汁とかもきちんときいていて味わい深いぜ……。
「んじゃ、私もこの後ゲームするから。IUO」
「そうなのですか? なら私もやります。実は持ってるんですよ、IUO」
「へえ、こういったゲームやらなさそうだと思ってたけど。というか、さぼって買いに行ってたもんな」
「組の者に任せるわけにはいかないので……」
「ああ、怖いもんな」
周りがビビりそうだから自分で買いにいったのは正解だろう。
でも清楚な感じの有栖川さんがVRMMOをやるとは思えない。読書とかでもしてそうなイメージだったんだよな。
やはり流行りには乗りたいという感じだろうか。
「一緒にやりませんか? どこにいるのかわからないんですけど……」
「ギャラクシル大陸のアドバル公爵領のアドバル市」
「そこにいるのですか? 偶然ですね、実は同じところにいるのですよー」
と嬉しそうに笑う有栖川さん。
「じゃ、そこのアドバル公爵別荘前に集合」
「はい!」
ゲームにログインし、アドバル公爵別荘前についたのだが。
「えっと、有栖川さん?」
「はい! 有栖川です! アバターの名前はアリスです!」
うん、それはいいけど……。
「ご、ごつい鎧だね……」
「あ、すいません。戦闘し終わった後にログアウトしたもので……。装備変えますね」
黒の鎧がはがれ、中から金髪のドレス少女が出てきたのだった。
スペード、クローバーなどのトランプの柄が入ったドレス。不思議の国のアリスみたいでとても可愛いと思う。
「えへへ、モチーフは不思議の国のアリスです。どうでしょう?」
「似合ってるよ」
「ありがとうございます。えっと、パン子さんも似合ってますよ。水色のドレス」
「アバターネームはパンドラな。この服装は種族の関係でこうなってるだけ」
「なるほど……」
「それで何するの?」
「そうですね、まず一緒に冒険しましょう!」
アリスは私の腕を引っ張って平野に向かったのだった。
そして、到着したのは一つの穴の前だった。
「ここ、ダンジョンです。パンドラさん強そうなので一緒に攻略しませんか?」
「まあいいけど……」
「……何か疑ってますか?」
「いや、めちゃくちゃ怪しいなって思ってさ」
「そんなに信用ありませんか……」
「そうじゃないけど……」
穴が本当にダンジョンなんだろうか。そういった疑問がある。
こういったダンジョンは見たことがないからだ。階段とかも何もない単なる落とし穴みたいな感じの入り口は見たことがない。
前に説明はしたとおもうがダンジョンにはいろいろな感じのタイプがあり、どのタイプにも当てはまらない感じだ。近いのは洞窟型、遺跡型だが……。
「本当にダンジョン? こういう形見たことないんだけど」
「ダンジョンですよ? 保証します。ダンジョンマスターは私ですから」
「そう、だんじょ……え? 今なんて言った?」
「え? ダンジョンですよって言いました」
「そのあと」
「ダンジョンマスターは私ですから、と?」
「ダンジョン、作った?」
「あ、はい。実はダンジョンの主なんです」
ええ……。
「このダンジョンのボスは私ですけど倒さなくていいですよー。レアもの結構出る設定にしたのでがっぽがっぽ稼ぎましょう」
「あ、う、うん」
ダンジョンって、作れるんですね。




