有栖川さんのことを知る
制服も何もかも瓦礫の下で、また作り直すことになった。
しばらくは私服登校を許された。それはまあいいのだが。
「なあ、パン子の家にトラックが突っ込んだらしいぜ?」
「気の毒に……」
なんで私の人生こんなハードモードなんだろう。
イージーモード選びたかったよ。なんでゲーム難易度がハードしかないの? 私の人生バグってんの? 人生って超クソゲーだな。いや、ほんとマジでなんなんだ。
「ヘッドギアは会社にいえばデータそのまま復旧してくれるわよ。ソフトとヘッドギアは新しいの買ってあげるから……」
「だからそう落ち込むな」
はあああ……。
「相手の会社が賠償金1億だすだとさ。なんていうか、一億出せばいいだろうっていう魂胆が見え見え」
「まあ人の家にトラックを突っ込む会社なんだからそんなものじゃないのかしら」
「だよな」
結構な速度でぶつかったんだろうな。
家がほとんど壊れるってそういうことだぞ。住んでいた家が脆いというわけじゃないだろうし。一億じゃ足りないぞ。
「月乃。頼んだ」
「わかったわよ。何億くらい出させればいい?」
「三億」
「わかったわ」
月乃はにやりと笑った。
ちゃんと誠意を見せてもらわなきゃ困るんだよ。
放課後。
私は有栖川さんと一緒に車に乗って帰っていく。
「お帰りなさいませお嬢! パン子の姉貴!」
「ただいま、みんな」
「ただいまさーん」
一昨日くらいから居候を始めてもう歓迎されていた。
最初突っかかってきた人もいて勝負をした。ナイフでの体術とかは基本無理なのでエアガンを貸してもらったんだけど凄い音したね。あれは本当にエアガンなのだろうか。缶に穴開いてたしなんかマジモンだったような気もしなくは……。
考えないようにした。
で、正確な射撃をみせて突っかかってきた人の眉間を狙うとビビってそれからもう従順になった。
あの反応からしてあのエアガンって本物で弾ァ入ってたんじゃねェかな……。
「今日の晩御飯は?」
「はっ。鯖の塩焼きだそうで!」
「ああ、塩焼き。みそ煮のほうが好きなんですよ私」
「みそ煮うまいよね。あれご飯にあう」
「そうです! すごいご飯が進むんですよ!」
「ごはんが進むっていったら私は納豆にちりめんじゃこをいれたの好きだなー。納豆食べるときは入れないと食べないし」
「私はお肉ですね。焼肉のときのたれをご飯につけて肉と一緒にかっこむのが大好きなんです」
「あれめちゃうまいよね」
「やらない人いませんよね」
うんうん。
あれうまいんだよ。肉の脂と焼き肉のたれの味がご飯について超うまい。
「パン子さんも食べるのお好きなんですね。私も大好きなんです」
「まあ大好きってわけじゃないけど比較的好きかなー」
「よかったら今度一緒にご飯食べに行きませんか? 美味しい店知ってるんですよ~」
「マジで? 行く。ただ高級フレンチとかは月乃とたまにいってるからそれ以外かな?」
「大丈夫です。私は庶民の味のほうが好みですから」
少し有栖川さんについて分かった気がした。




