いきなりエンカウント:死したはずの遊戯の神 ③
五枚の手札が配られる。
手札を眺めると、まあよくもないが悪くもない結果だった。
「じゃ、俺は三枚賭けるで」
「なら私も三枚」
手始めの様子見として三枚を出す。
とりあえず二枚交換に出す。
「しっかしあんた表情変わらんなあ。常にポーカーフェイスとか困るわ」
「わかりやすい顔のほうがよかった?」
「いや、そうはいってへんで。つまらなくないわ」
「面白いでしょ」
ローキッスは笑った。
ローキッスは三枚交換に出し、メルセウス様がシャッフルし、私に二枚、ローキッスに三枚渡す。結構いいが……。
ローキッスはどうなんだろうな。
「ちなみに勝負を降りることって可能?」
「可能や。降りたら賭けたぶん戻っては来るが相手が三枚増えるだけやで」
「じゃあ今降りたら私が20枚、ローキッスが23枚になるのか」
「せや」
降りるのも一つの手ではあるが……。
相手が何出来てるかわからないからな。
「なんや? 自信ないんか?」
「ただの確認」
「そっか。じゃ、見せるで。フラッシュや」
「奇遇だね。私も」
「俺がキング……あんたがエース。俺の負けやな」
「じゃ、私23ね」
チップを乗せる。
ローキッスはまだニヤニヤと笑っていた。まだまだ余裕そうではあるが、何か隠し玉でもあるのだろうか。
これは気をつけたほうがいいかもしれない。
二回目のカードが配られる。
「ものすごく不安そうだね。ローキッスさんよ」
「え゛っ」
「ローキッスが不安? そんなわけないじゃーん」
「せやな。俺のどこを見て不安だと思うんや」
「私の見当違いだった?」
「せや。俺を動揺させようたってそうはいかへんで」
「そっか」
ローキッスは何かに不安を感じているのかもしれない。
それはきっと、その不安感が彼を掻き立てている……。悪行もその不安によるものからやっていたんだとしたら。彼はきっといい神だろう。
「実際動揺してるけどね。あんた」
「なっ……!」
「あんたの不安がなにかはわかんないけどね」
私はカードを手に持った。
「じゃ、私全部かけるわ」
「……は?」
「遊戯の神という割に弱いじゃん? 手加減してるでしょ」
「……俺は手加減なんてしてへんで。あんたが幸運なだけや」
「本当にそう? さっき、本当は一発で滅茶苦茶強い引きしたんでしょ」
「……引いてない」
「引いてるよ。絶対に」
「引いてへんわ!」
ローキッスが机をたたく。
きっと彼は滅茶苦茶強い引きをしたのは本当だ。4カードかそこら…。キングの4カードだったはずだ。ちらっと交換するときに見えたのはキング3枚だった。
キング三枚を棄ててフラッシュにまでしたとなると彼は手加減していることになる。
「引いてないならなんでそんな動揺しているの? 勝負っていう割には手加減するし舐めてるの?」
「…………俺、あんたキライやわ」
「そう? 私は自分自身好きだけどね」
「なんでも見透かしたような目をして……。腹立つわぁ」
「見透かしたってことは事実なんだ」
「そういって揚げ足取りもするの、嫌いや」
「あはは」
「もういい。勝負は俺の負けでええ。金輪際悪いことはせえへんわ。俺は神やが、あんたが何よりも恐ろしい」
と言われたのだった。
まあ釈然とはしないが勝ちは勝ち。




