新世界のジュリエット
劇のハイライトって感じです
ロミオ(斎賀君)が私と対峙する。
「ジュリエット! お前は……間違ってる!」
「間違ってる? 二等兵如きがこの私を間違ってると指摘するか」
私は椅子に座り、ロミオを睨んだ。
「新世界にいけるのは選ばれしもののみ……? 新世界は誰にでも平等であるべきだ」
「平等とは理想論だな。この世に平等なんてものは存在しない」
私は足を組む。
「それに、新世界の恩恵を誰しもが受けれると思うな。新世界は狭すぎる。それに対し人類は多すぎるのだ。待っていれば全員に恩恵が渡る。悠長に弱者は待っていることだ」
「だがもう世界は滅ぶ寸前だ! 悠長に待っている時間はねえんだよ!」
「そうだな。もう、時間がない」
私は椅子から立ち上がり、ロミオをぶん殴る。
ロミオは殴られた頬を押えながら私を見上げた。
「二等兵の分際で総統である私への口の利き方がなっていない。軍は階級社会だ。目上は敬うのが当たり前だ」
「俺は……あんたを総統とは認めねえ」
「ああ、構わんとも。あんた一人が認めなくとも他が認めている。好きに軍を離れるがよい」
「…………っ!」
ロミオは立ち上がり逃げていった。
私は、顎に手を当てて考える仕草をする。
「時間がない、か。そうだな」
そして、舞台は暗転した。
で、シーンはロミオとの決闘シーン。
10分でもはやここまでとは結構詰め込みすぎだとは思うが一応最後までやりたいのだというわがままがあった。
「ジュリエット……! お前を倒しに来た。受け取れよ」
と、剣を足下に投げつけてくる。
「お前如き、短刀で構わん。どれほど力をつけたか、正々堂々と勝負しろ」
「正々堂々?」
と、背後から何者かがジュリエットの腕を掴む。
「正々堂々なんてするわけねーだろばーーーか! 正々堂々とやっても勝てないのはわかってるんでなぁ!」
「このバカッ!」
「命がかかっているのに正々堂々となんて笑わせんじゃねえ! ここが新世界の入り口か?」
「お前っ……!」
ロミオは枠にまたがった。
そして、その中に入っていく。
「俺は何が何でも新世界に行く。邪魔すんじゃねえ、ジュリエット」
ロミオはその中に入っていった。
また、舞台は暗転する。
ロミオが横たわって目が覚めるシーンだった。
ロミオが目にしたもの、それは大きな魔物が目の前にいた。ロミオは剣を抜き、戦おうとするが、その剣はへし折られ、ロミオは冷や汗を流す。
「殺ス……」
「こ、ここが、新世界、か? な、なんだよこのバケモンは!」
ロミオは走った。魔物はそれを追っていく。
ロミオはこけて、魔物はその手にした斧を振り下ろす。その瞬間、魔物は痺れたかのように動かなくなった。
ロミオは辺りをきょろきょろと見回した。
「だから正々堂々と勝負しろといったのだ。馬鹿め。私と正々堂々と勝負して勝てないのであれば新世界を生き抜くことはできない」
「そ、総統……」
「おまけにお前、運がないな。ここは魔物の巣窟だ。早く元の世界に逃げろ」
「総統っ……!」
ロミオは立ち止まる。
「じゅ、ジュリエット総統は……どうするのですか」
「どうする? 相手どるに決まってるだろう。私も逃げたのであればすぐに追いつかれる。お前は未来がある。才能がある。私に対してビビらないのは才能の一種だ」
「……俺が、間違ってました。新世界がこんな魔物の巣窟だとは」
「言ってなかった私も悪い。それに、新世界に行きたくないっていうのも困るのでな。こういうことは伝えないようにしていた」
「そ、総統……!」
「早く行け。もうじき囲まれる。そうなったら本当に逃げ場はないぞ」
「す、すいません……! いつか、助けに来ます……! 力をつけてっ……!」
「ああ、楽しみに待っている」
ロミオは逃げ出した。
ジュリエットは笑う。数の魔物に対して一人で挑む無謀さ。慎重にやってきたジュリエットにとってはただの恐怖でしかない。
足が震える。
「怖気づいてしまうな。だがしかし、私は生き延びる」
舞台は暗転する。
そして、数年後。
ロミオは部下を連れて新世界へと再び足を踏み入れた。前の弱い自分とは違う。力をつけた。ロミオは以前戦っていた場所を訪れる。そこにはジュリエットのものらしき拳銃が落ちていたのだった。
ロミオはそれを拾い上げる。
「総統……すいません、助けに来るのが……」
「遅すぎだバカ者」
と、ジュリエットが現れる。
ロミオはジュリエットの姿を見て、その銃を落とした。
「弾切れとなったんでな。いらないから捨てたのだ。ふぅ、疲れた。おい、ロミオ。私をかつげ」
「……はい! ジュリエット様!」
こうして、ロミオとジュリエットの新世界開拓物語は始まった……。
終わり。




