文化祭二日目 演劇前
文化祭二日目を迎える。
文化祭二日目は全部体育館でやる。クラス発表の出し物を見せるのだ。私たちの公演はなんと最後。くじ引きでこうなったわけなんだが。
一年でトリを飾るってなかなか生意気だよな。
だがしかし、問題が少々発生した。
「小道具が全部は出来ていない?」
月乃からの報告を受ける。
小道具を作ってはいたが全部できたわけじゃなかったという。あと三時間あればいけるらしいが、多分持ってくる時間を含めると無理。
「間に合わない……どうするのよ」
「どうするつっても私劇担当じゃないんだけど……」
そっちを頼り切りにしていたからこっちじゃもう作る素材がない。
「あと残ってるのは?」
「えっと、模擬短刀とか銃とか?」
「銃ならエアガン使うか。どうせ発砲はしないんだし」
「でも重くならない? 特にジュリエット」
「気合い」
新世界のジュリエットではジュリエットは剣も使えるが、一番の得意武器はジュリエットは銃だ。腰には二丁の拳銃を仕込んでおり、モンスターたちを倒していく。
あと、短刀を仕込んでおり、近接戦もできる万能キャラである。剣もロミオより数百倍上手い。
「短刀は……どうしよう。そればかりは本物ってわけにもいかないしな」
剣戟をやるので本物だと本当に斬ってしまう。
どこかのクラスから借りるか。剣を使うクラスはあったはずだ。それこそ、二組。二組は海賊をモチーフにした劇をやるようで剣ならばたくさんあるだろう。ただ、海賊の刀というと多分……。背に腹は代えられないか?
いや、そこはいいか。
「二組に借りに行こうか」
「委員長とパン子、行ってきなさいよ」
「私はわかるけどパン子ちゃんもなんだ」
「あのねぇ、私をこき使いすぎじゃない? 一応私一日目の喫茶店班なんだけど……」
小道具を作らされたり劇も手助けしすぎじゃないですか。
「あんた小手先だけは器用なんだから使われるのよ。ほら、行きなさい」
「へーい」
ということで二組が準備してるところにお邪魔させてもらった。
「あれ、夢野さん。どしたの?」
「いやー、ちょっと私たちの劇の時に使う剣を貸してもらえないかなって」
「は? お前らに貸す義理はっ……!」
「いいよ。私たちが悪いんだし」
安藤君が貸さなくてもいいだろうなどと後ろでいうのだ。
どの口が言うんだ。私は安藤君に詰め寄った。
「元はといえばあんたが悪いんだろ? それで貸さなくてもいいってのは違うんじゃないか?」
「お前だって……!」
「看板をダメにした……つってもあれプリントした奴だから紙さえあればできるんだよ。現に時間かかんなかったでしょ」
「そうだね。最近の技術って手描きっぽくできるのすごいよね」
そう。だからあれ一つ潰したところで問題は実はというとない。
わかっていたからこそあんなことをしたんだよ。こいつは手描きだと思っていたっぽいが。
「お前が壊さなければ借りることもなかった。なのに貸さなくていいってのはちょっと違うんじゃないか?」
私は安藤君に詰め寄った。
流石にこれは怒るぞ。
「う、うるせえ! お前らがいるからうちは負けそうになるんだよ!」
「ほう? つまり最初から負けを認めていたから壊したと」
「ち、ちげえ! 不安は取り除くにこしたことはないだろ!」
「それも一理ある。なら、私も今ここで不安を取り除くこと、してもいいんだよ?」
「ふざけんなよお前!」
と、安藤君が私の胸倉をつかんでくる。委員長が慌てるが、私は別に慌てることじゃない。むしろ、冷めていた。
つまんない奴。敵対しても面白くない。
「安藤! やめろ!」
「この女が悪いんだ! この女がっ!」
「討論で勝てなくなったら実力行使か? ほら、殴れるもんなら殴ってみなよ。私はいいよ? ほら、殴りなよ」
「パン子もなんでそんな煽るの!」
「ただ、私を殴ったら後悔するよ。その覚悟があるんなら、どうぞ?」
「う、うあああああ!」
と、安藤君が私を思いっきり突き飛ばす。そして、私はロッカーの角に頭をぶつけた。
いってぇ。たんこぶ出来たんじゃない?
「ちょっと、大丈夫!?」
「平気……。けど、あいつほんとクズだね。潰すか……」
「「「「「ひえっ」」」」」
ちょっと、なんでそんなビビるんですか。
だけどよかったよ。一応録画しておいて。こんなことになるかもしれないとは思ってたし。私は胸ポケットからスマホを取り出した。
「ちょっとこれ、先生に見せてくるね~」
私はその場を後にした。
「……もしかしてそうなるとわかってたから」
「予めとってたの? こわっ」




