海の中のお姫様 ①
海だ。
ざざーんと押しよせる波の音。塩っ辛い潮風の香り。ああ、海だ。私は砂浜に一人座っていた。実はというと私は泳げない。ボールとか投げるのは得意だが運動は基本無理だ。
ゲームでも多分カナヅチ。
「師匠! 海での鍛錬ですか!」
「そうだね。あと、気分転換的な」
「砂浜走り込みしてきます!」
レブルは正直もう鍛えなくていいとは思うが。
ああ、でもこの波の音落ち着く。海は広いな、大きいなー……。自分が住んでるところは海がない県ではないが、海まで遠い。
それに、海なんて一度も行ったことはなかった。近くまでいったことはさすがにあるが、両親が死んでからは叔父さんの家なのでね。叔父さんと叔母さん急がしいから海に行く暇なんてなかった。
で、小学生の金力じゃたかが知れてるために海に行けても帰れないということになるので街中だけですごしていた。
もともとインドアだしね私。
「明日は劇やるんだもんなぁ。めんどくさいなぁ」
文化祭一日目でさえ疲れたのに二日目はもっと疲れそうだ。
明日文化祭が終わったらクラスのみんなで打ち上げをするらしい。参加はするけどどんなことをするのかがわからない。先生主体で行うらしい。あと、BINGOがあるらしい。景品豪華だと言いな。
「師匠! カニがいますよ!」
「ほんとだ」
ただ……。
「1mあるカニ怖いよ」
ものすごくデカかった。
多分魔物の一種だろうが、こちらを襲ってくる気はなさそうなのでスルー。レブルは平然としすぎだと思うんですよ。肝が据わってるというかなんというか。最初はおどおどしてたのになんでこうなった。
「師匠! 泳いでもいいですか?!」
「いいよいいよ」
「わーい」
レブルは水着姿になり、そのまま海へダイブした。
元気だなぁ。なんて思っていると、レブルが突然海に潜った。だが、すぐに上がってくる。
「ぷはっ」
「レブルどうした?」
「師匠! なんかこんなものが落ちてました」
海の上を浮きながら進んでレブルから手に取ったもの。
それは、海底神殿の証というものだった。なんだろうかこれ。使えるのか? そもそも海底神殿ってなんだよ。
ためしに天に掲げてみると……
「うそっ!?」
「すごいです! 海がぱっかーんて!」
海が割れた。モーセかよ。じゃなくて。
「歩いて海底神殿に行けってことか? レブル、戦う準備は一応しておいてね」
「大丈夫です! いつでもいけます!」
「そっか」
私たちは割れた海の中を歩いていく。
水族館みたいだという感想が湧く。魚が海の中を泳いでいるのを間近で感じ取ることができ、サメや魚の魔物が泳いでいるのも見かけられる。
そして頭上をイルカが飛び越えた。水しぶきが私たちにかかる。
「すごい……!」
「ふぅん」
私たちは海底神殿への道を歩き進めていると。
目の前に建物らしきものが見えてきた。だが、その前には数体のゴーレムがいる。海底神殿の守り神みたいなものだろうか。
『証ヲミセヨ』
「あ、これ?」
『……海王神ノ証。確認シタ。入ッテヨシ』
戦闘は……なさそうかな?




