文化祭の王子様 ①
文化祭一日目が始まった。
私は既に王子様の格好をしており、お客さんを待っている状態である。
「いらっしゃいませー」
早速客が来たのだった。
女子高生三人組だったので男装している私の出番というわけなんだけどさ。私が近づくときゃーという声が湧いた。
ふっ。私のカッコよさにひれ伏すがいいぞ。
「女子だと思えなーい! 」
「写真撮っていいですかぁ?」
「か、構いませんがSNSにあげるのは勘弁してくださいね」
「はーい」
スマホでぱしゃぱしゃと撮られる。
意外と恥ずかしいものだ。ちょっと助けてください。いざ本番になると恥ずかしくて死にそうであります。逃げていいっすか?
「とりあえず席はこちらになります。注文がきまったら俺をお呼びください」
「はーい! でも名前知らないので呼べませーん!」
「え」
そっか。名前、か。
「えっと、俺は……」
眠男っていうのはちょっとダサい気がする。
うーむ、名前か。名づけって意外と難しいんだよな。ゲームでもちょっと悩むぐらいだし。男の名前……。眠……。
「えっと、俺は眠るに北斗七星の斗で眠斗っていいます」
「ミント君!」
「爽やかな名前だね!」
そうだね。スースーする名前だよね。
「では、ゆっくりと女装、男装を堪能してください。女装、男装を見て笑うもよし……。眺めるのもよし。至福のひと時をあなたに。私のお姫様方」
私は傅いて、手を取り頭を下げた。
「ひゃあああああ!」
「お姫様っ! 私お姫様だって!」
「かっこいい! 本当に女子なのかな!?」
本当に女子ですとも。今は王子になりきってるだけですからね。
王子ってこういうキザなほうが受けるでしょ? 多分腐ってるひとは攻めとかいいそうなものだけど。でもこういうのに限って受けなんだよな。
いや、そういう話はおいておいて。私腐ってないからね。
「さて、まだ客は来るから気を引き締めていこう」
結構な大盛況となっていた。
来る人来る人に結構レベルが高いと言われると嬉しいもので。時には女装とか気づかない人もいて好きだとかいう人もいた。
武宮君めっちゃこくられるじゃん。あと斎賀君もめっちゃこくられるじゃん。もう性転換したらいいんじゃない?
「もうお帰りですかお姫様」
「…………お、お持ち帰りって出来ますかっ!」
「当店ではお持ち帰りは……」
「貴方をお持ち帰り!」
「キャバクラか」
たまには素でつっこんでしまうこともある。
「それにしてもパン子すごい人気だな。いや、今は王子様か」
「こういうのは演技だからね。将来女優になろうかしらぁ?」
「……なんていうか悪役のほうがもらえそうだな」
「うっさい」
主演女優なんて無理に決まってんだろ。
どうせ私は悪役だからな。
「というかそろそろ交代の時間だぞ」
「あれ、もうそんな時間?」
「ああ。だから俺が来てるわけだ。ほら、さっさと交代」
「へーい」
私は着替えるために更衣室に向かおうとしていた。
が、その時呼び止められたのだった。
「み、見つけた……。お、王子様……」
「ふぇ?」
もう私は王子じゃないですよ?




