難攻不落の魔王城 ③
大将がやられたことにより相手の士気が大きく下がった。
撤退命令が飛ぶが、逃がす私たちじゃない。ここで大きく戦力をそいでおかねばまた喧嘩を吹っ掛けられてしまうからな。
「総員追撃! 一人残らず国へ帰すなよ!」
「でもそれ厳しくないっすか王子」
「厳しいのは百も承知。だがやってくれ。出来た場合は俺が一つ好きな褒美をやろう!」
ニホンの軍隊が大きく士気をあげていた。
現金なやつらというかなんというか……。たかが褒美でここまで命を投げうてるとはバカというかなんというか。
ただ、撤退戦においてこちらが有利なわけだ。
「俺、この戦いが終わったら彼女に告白するんだ!」
「し、死亡フラグ立てたわねあいつ」
ワグマがそうつぶやいた。
レブルも聖剣を構えて追っていく。まだ戦う力があるとはすごいな。休んでもいいのにな。賢者と私たちは休んでいるのによ……。
レブルは私たちのほうを向く。
「まだ私は戦えます! これでも体力だけは多いので!」
「みたいだね……」
「魔王様方! そこでお待ちを! 私もニホンの兵に加担して追撃してきます!」
「……私たちも大概だと思っていたのだけれどあの子頭おかしいわね」
賢者の一人、エリザベスがそういうとみんな頷いていた。
「体力多くてもこの戦いは一気に体力削られますからね。体力自慢であるアガルギルドがばてるくらいですし」
「情けない……!」
レブルは軍勢に突撃していっていた。
勇者って頭おかしい子がなるんだろうか。
相手の軍勢は一人残らず死んで、死体が山のように積まれていった。
「ほら、ワグマ。戦いの後はなんか言わないと」
「私が言うの?」
「魔王があんただからだよ」
プチ戦争が終わって魔王から何もないとなるとしまらない。
ニホンの軍がワグマを見ているし、賢者たちも横で魔王の言葉を待っているようだった。アヴェールはマリアベルにもたれかかっている。
ワグマは、こほんと咳払いすると、大きな声を張り上げた。
「突然、ルフラン神聖王国が戦いを仕掛けてきた時は、ダメかと思っていた。だがしかし、オールランド王国、ニホンが援軍に来てくれたときは助かった。感謝を述べる。本当によく戦ってくれた。不意に何も知らずに戦いになってしまって私たちも大変困惑していたし、部下も突然のことに驚いただろう。これからもルフラン神聖王国はきっと我々に対して戦いを起こしてくる。だがしかし、それに負けないよう、我らも兵力を強化しようではないか!」
「…………」
ワグマが演説している傍ら、私はこの戦いについて考えていた。
私たちがあのプレイヤーに何かした記憶はない。そもそも、魔王を討ち取りたいのなら勇者と名乗ったほうがかっこいいだろうし……。わざわざ国を建てるほどではない。
なのになぜ戦いを……。相手が戦いたいだけの人だったり、魔王城を落とせるかチャレンジしたいだけだったのだろうか。だとしたら国を率いる資格はないだろうに。それぐらい相手もわかっていそうなものではある。無駄に自分たちの兵力を削ぐ行為。勝算がよほどでもない限り私はしない。やるとしても数人送りこんで確かめさせてからやる。
今回は不意打ちだからこそここまで私たちもピンチになった。
でも相手はニホンとオールランド王国と友好的に接しているということに気づいてなかったみたいだしな。国がいつできたかは知らないがそういうことを知っておかないと国としてはまずいんじゃないだろうか。
私ならあらかじめそういうのは調べておいてまず後ろ盾となるそっちから潰しにかかる。
「魔王に恨みを持つもの…が後ろにいるのか?」
そんなの思いつくわけがない。
いや、一人だけ心当たりはあるが。でも、プレイヤーの気まぐれっていう可能性もないわけじゃない。
「でも、作ったばかりの国で魔王に挑むなんて……。それこそ裏で何か手を引いている人がいるよな」
きっとこの死体はルフラン神聖王国の国民だろう。
何万と死んでしまった国民を見て、国への不信感が募るのは事実だ。それこそ、恨みすら湧く人もいるかもしれない。
きっとその時は魔王に殺されたんだとか言うだろうが、そもそも戦い仕掛けてこなければこちらからは何もするつもりはなかったんだよ。
そもそも作ったばかりの国だからこそ国民はあまりいないだろうに。国民を裏切るような真似して大丈夫だったのか?




