文化祭前の事件簿 ②
さてさて。
私は今とある男子生徒を尋問しています。
「で、なんでこんなことしたの?」
「な、何のことだよ」
すっとぼける男子生徒。
だが残念。最後に使ったのはあんただ。一番の容疑者はあんただしな。推理するまでもなく犯人は簡単だった。
うちの学校は鍵を借りるのに名簿書いてから先生にはいと渡される。先生もそれは例外じゃない。
だからこそ特定が簡単だった。
「あくまですっとぼけるんだ」
「あ、ああ。俺はやってねえし。お前らが壊したんじゃねえの?」
「そう言い張る? じゃ、この写真見てよ」
と、クラスメイトの女子からスマホを借りて写真を見せる。
うちの美術準備室は窓から中を覗けるようになっている。これは昨日インスタに『ほとんど準備おわり~』と終わり際に撮っていたもの。
「これが私たち帰る直前に撮った写真だよ。何も壊れてないよね?」
「そ、それがどうした」
「私たちが鍵を返したのは五時半。これは五時三十五分に撮られたもの。意味わかるでしょ?」
「…………」
「私たちですら中に入れないのにどうやって壊せたというの? 説明してほしいなあ。六時に鍵を借りた安藤君?」
安藤君はすっかり黙ってしまった。
「まあやられっぱなしってのも癪だし私も同じこと君たちのクラスにしてあげようかなー。私たちだって被害者なんだし同じ事されても文句は言えないよね?」
「や、やめろ!」
「これ、なーんだ」
私たちが取り出したのは一つの看板だった。
全部破壊するのはさすがに不可能だったから、一番時間がかかってそうなものを選んだ。その結果このデカい看板というわけだ。
廊下に置いておいたんだよ。
「で、これなーんだ」
「やめろ!」
「自分は物を壊しておいて自分たちのはやめろって都合いいよね。じゃ、えい」
私は思いきり刷毛で文字を塗りつぶした。
えいえいとどんどん塗っていく。男の顔は絶望に染まっていた。やる覚悟があるんならやられる覚悟があるということだ。
私は指に少しペンキをつけて、ちょっとごめんよと言って顔に少しつけてあげた。
「なんてことしやがる!お前マジでふざけんなよ!」
ともうどうでもよくなったのか私に殴りかかってきたので。
「やっぱりこういう手に頼るしかないよねー。白露」
「かしこまり」
白露が出てきてそいつを投げ飛ばした。
そして、安藤君の近くにペンキをおいておいて。
「さて、私たちは退散しましょ。あとなるようにしかならない」
「パン子ちゃんうちのクラスでよかったよ……。顔にペンキつけたのも罪を擦り付けるためでしょ……」
「バレた?」
ペンキがどこかしらについていたらその人を疑うしかないからな。
「やりすぎな気もしなくはないけどあっちだって私たちの劇を台無しにしようとしてたから……仕方ないのか?」
「もやもやするな」
「まぁ、多分もうあいつにクラスでの居場所ないから不登校になるんじゃない?」
「……不登校とか転校に追い込ませるの得意だよなパン子……」
「いじめっ子より悪質だ……」
やりすぎなきゃ仕返しにならないのが私のモットーです。
倍返しは基本




