クラスの出し物
私は居間で王子の服を着ていた。
「似合うよ! ホントにかっこいいよ」
と、月乃が笑いながら褒めてくる。
本当だろうなと睨みつつ、なぜこうなっているかを振り返ろうと思う。まぁ理由は文化祭以外ないのだけれど。劇をやるといったが、それは二日目の話だ。文化祭は二日間盛大に行われる。一日目はクラス学級で出し物をする……のだが、基本的に飲食店が多いのでうちらもそれに便乗。
で、普通にやるのもつまらないしメイド喫茶なんてありきたりだと思ったけど、他にいい案がなかったので女子は女装、男子は男装……じゃない。男子は女装、女子は男装して給仕することになった。
だがしかし、メイド服を着るわけじゃない。普通のひらひらとしたスカートだって履いていいのだ。
で、月乃が勝手に私を王子に仕立て上げていた。髪を金髪に染められてしまったしな。いくら髪を染めていい学校とはいえ……。先生も少し呆れていたけど、面白くなるならオッケーと教頭が親指を立てた。ねえ教頭先生。髪染め禁止にしませんか?
「髪も切られたし私だけガチすぎるだろ」
「いいじゃん。髪なんてあまり気にしないしょ」
「まあそうだけど……」
肩まであった髪がもうばっさり。優男みたいな感じになっている。メイクもして、男っぽくなっていた。鏡で見るとイケメンだなって自分で思ったよ……。
「で、今度はメインの女装男子! やっぱイケメンたちは女装も似合うよ! 出てきて!」
と言われ、斎賀君と武宮君がでてきた。
武宮君はお姫様みたいなドレスを着ている。少しひょろいのか体型も女子っぽいし、メイクの力か女子っぽく見える。
一方の斎賀君はセーラー服だった。セーラー服を脱がさないで。
「美少女(男)と美男子(女)。すっごいお似合いだよ!」
「恥ずかしい……」
「ほら武宮君! いったいった!」
と女子が武宮くんを押す。慣れないハイヒールなのか盛大にスっ転んでしまった武宮君。いたたと鼻をさすっていた。見てられないな。
私は手を差し伸べる。が、なんか期待されるような目で見てくるので、しょうがないから演技をしてやることにした。
「お手をどうぞ、マドモアゼル」
「……ふぁい」
武宮君は私が出した手をとった。
顔を赤く染めている。おいおい、今現在男になっている私を見て顔を赤く染めるってなんだよ。
「きゃああああああ!!」と女子の黄色い悲鳴も沸いた。
「カチ子……なんかやだな。こうか? 『私のプリンセス。どうか私と一曲踊ってはくれないだろうか』とか」
「はい」
「パン子あんた踊れないでしょ」
「ばれてーら」
「運動神経皆無だろう」
そう。音感はあれどダンスはできない女の子です。なのでダンスは無理ですね。さすが付き合い長いだけあって月乃さんよくわかってるぅ。
私はため息をついた。
「踊れなくて済まない」
手の甲を持ち上げ、キスをするふりをしようとした。が、誤って口を手の甲につけてしまったのだった。
「ご、ごめん! ばっちいよね」
「い、いいんだよきにするな」
と、武宮君は笑って許してくれた。
「あれで好きじゃないとかおかしいだろ……」




