月乃の誕生会
調教は上手くいった。相手は一生消えないトラウマを背負い、生きていくことになった。
そして現在の日にち、九月六日。
私は月乃に招待され、パーティに来ていた。月乃の誕生会と、会社創立記念日を一緒に祝うらしい。どうやら月乃が生まれた何年か前に会社が設立されたらしい。
社員の人は礼服出来ているが、あいにく学生の私は礼服なんて持ってないので普通の服で参加している。恥知らずってよく言われるよ。
「二人ともありがとね! 今日は16の誕生日よ!」
「おめでとう。月乃」
「ええ。ありがとう」
月乃は豪華なドレスを身にまとっている。すっごいなぁ、金かかってるなぁ。嬉しそうだなぁ。
「私こういう社交も兼ねたパーティって嫌いだけどあなたたちがいてくれて嬉しいのよ。あっちで話してましょうよ」
「料理食べてたいんだけど」
「むぅ……。わかったわ。ここで私も食べるから」
と、月乃は皿を手に持った。
「それにしても毎年立食パーティーとはさすがだな。今日は父も来てるんだ」
「叔父さんはまだ入社してないから来てないな」
「球磨川さんきてらっしゃるの。あとで挨拶に行くわ」
「父も喜ぶ」
白露はエビを口に運んだ。
「あら、白露結構食べるのね。あなたように鶏肉だけのとか用意したのに」
「せっかくのパーティだ。わがまま言わずに出されたものは食べるさ。その分運動するから問題ない」
「そう。律儀ね」
「それに、普段食生活を律しているとたまに暴飲暴食をしたくなる」
「わかるわー」
「わかる」
私も一回食事制限をしてみたんだけど、三日も立たずに辞めたね。あれは無理だわ。強靭な忍耐力がないとまず無理もうリスカしよって感じ?
「パン子相変わらず草食主義ねえ。パンダだから?」
「美味しいからなんだけど……」
「もしかして、ヴィーガン?」
「肉うまいよね」
「違うのね。知ってたけど」
わかってることを聞いてくるあたり相当浮かれてるな。
やっぱり誕生日って物は嬉しいんだろうか。
「来月は白露ね。その時もパーティ開こうかしら?」
「いい。こぢんまりと私の家に誘う」
「楽しみにしてるわ。パン子は早生まれだものねえ」
「そうなんだよな」
白露は10月14日。体育の日。
私は3月11日。と、来年なんだよ誕生日。出産予定日は4月1日だったらしいんだけど結構早まってこの日だったんだとか。私生き急ぎすぎだろ。
「あ、そうだ。誕生日プレゼント」
「何かしら」
「私は私が好んで使ってるタオルだ。水を含ませて振るとものすごく涼しくなるからおすすめだぞ」
「あら、ありがとう」
「あ、私からはこれ」
私は下に置いてあるカバンから一冊のパッケージを取り出す。
「映画の『愛と青春の旅立ち』面白いよ」
「あら、ありがとう。観てみるわ。映画鑑賞好きなのよね。こういうのあったらお勧めしてちょうだい?」
「わかったよ」
映画が好きだってことは知ってたし、毎年私の好きな映画を教えている。
今年はこれだっただけで、次何にしようかは悩むなぁ。
「じゃ、私も料理食べるわね。おなかすいたし」
「ドレス汚すなよ」
「作法っていうものを習っているから大丈夫よ。あなたたちみたいに汚い喰い方はしないわ」
「汚い喋り方はしてるくせに……」
「いいのよ。じゃ、いただきまーす」
月乃が料理に手を付けた。
月乃はとても幸せそうだった。
3月11日はパンダが発見された日




