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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
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Episode.61 退職社畜のレベリング1日目

【ログイン中】


 そんなこんなで【廃坑道】の攻略を始めてどれくらい経っただろう?



「うい」



 一息に振り抜く。

 狙ったのは、腰部の胴体との繋ぎ目。



「Gigiiiiiiiii……―――」




 胴体と下半身が別たれた石製のゴーレム、ストーンゴーレムは沈黙した。

 残るのは馬鹿みたいにデカい石の塊。


 ぶっちゃけ、この石の塊にどれだけの価値があるのかが分からん。


 んー、まあ、このゲームって【石工】とか【彫刻士】みたいなジョブもあるし、それ関係なんだろうなとは思う。

 あとは単純に彫像とか作るのに使うんだろ。


 よくよく考えれば、なんの加工もしていないのにブロック形にされた鉱石が手に入るんだよ?お得じゃない?

 これが鉄とか銅とかになってた―――まあ、量は減るけど、加工する必要がないから転炉とか使わなくて良いし、コークスとか石炭とか使わなくて良いから省エネだ。

 NPCからするとプレイヤーは……コスパの良いなんでも屋、かな?


 ああー、社畜時代にこういう人材がいたら良かったのになー。




()っつ……」



 やっぱり、石をぶった切ってる所為なのか、めっちゃ手が痛い。


『『……?』』


 痛がってる俺を見上げる二匹。


 うーむ。失敗だったかな?

 ここのゴーレムの耐久値がマジで石のそれだから、動物のこの二匹には荷が重い。


 まず、爪や牙が立たないし、装備も刺突や斬撃系なのでダメージ量が渋い。


 ん?俺も斬撃だろうって?

 知らないのか?抜刀は斬撃じゃなくて、抜刀っていうジャンルだぞ?


 てか、ゴーレム系は首の位置が分かりづらいから落としづらい。

 さっきも仕方なく胴を薙いだけど、結構繰り返したから出来たわけで……。


 そもそも論だけど、ゴーレムは割と大型だ。

 多分、自重を支えるギリギリのサイズにしたんだろうけど……バカでかい。つまりところ、単純に首に届かないことが多々ある。




「おっ、銀ゴーレムじゃーん」



 と、愚痴が多いのはご愛敬。


 エンカウントしたのはシルバーゴーレム。ピッカピカの銀色というよりは酸化銀……とまではいかないが、鈍色の混ざった銀色の人型。


 ゴーレム系は体を構成している鉱石のグレードに応じて体力が多くなるという特徴があるが、シルバーゴーレムはそうでもない。代わりに魔力(MP)を使う攻撃に対して大幅な耐性を持つ。

 大きさは大体三メートル弱のサイズ。まあまあデカい。普通にデカい。



「Gigiiiiiigii……!!」



 奴さんは石を削るかのような声を上げて突貫してくる。


 ぬ………思ってたより速い。銀自体が割かし軽いからかもしれない。石とか土、砂のゴーレムは脆かったがデカかったし、銅のゴーレムは電気とか水系の攻撃に耐性を持ってたし、銀よりも速かった。




「センリ、ヤタグロ、行っておいで。倒さなくても良い、止めはやるから」

『ニャ』『グワッ』




 雰囲気的には「了解」って感じ。


 二匹ともやる気があるようで何より。しかし、ゴーレム系は混乱とか火系属性が無効だから面倒くさい。


 パワーレベリングしてる俺が言うのもなんだが、あの二匹は身体能力が凄い高い。

 それに加え、野生の勘か何かがあるのか、センスも抜群。連戦のお陰か連携能力も身についてきているようにも見える。

 うむ、良きかな良きかな。中良きことは美徳也。


『ニャニャ(さっきの石っころよりかは速いな)』

『カァ(私たちよりかは遅いけどね)』


 センリはシルバーゴーレムの身体や壁を利用した跳躍で攻撃。地道にダメージを稼いでいる。

 一方でヤタグロは空中機動で敵愾心(ヘイト)を買いつつ回避。回避盾の役割をこなしつつ、眼球などのクリティカルダメージだけを狙って大ダメージを狙っている。



「ん………もうそろそろ良いぞー、下がれ」



 このままだと埒が明かん。

 仕方がないので一割ぐらいHPを削った所で交代。


 適当な所で戻ってきた二匹を下がらせて俺が前衛に出る。

 さっきは斬り方が悪かったから手が痛くなった。今度は上手く斬ろう。やっぱ、狙うは首だ。


 一撃必殺。


 それが俺の座右の銘。




「Giigigiigigigggggy!!!」




 上段からの振り下ろされた拳をバックステップで回避。入れ替わる形でクルリと身内に入る。



「危ね」



 で、シルバーゴーレムは抱きしめて押し潰そうとして来たので、どデカい胸板を駆け上がってバク転。回避する。


 着地と同時にロケットスタート。

 厳つい鈍銀色の膝に足を掛けて跳躍。その勢いのまま壁に蹴りを入れて二段ジャンプ。要領的には三角跳び。


 乗る先はシルバーゴーレムの肩。



「よう、割と肩幅広じゃないの?」



 ――――――抜刀。



 中腰膝立ちの体勢での居合。

 横一文字に振り抜かれた狂狼刀は、豆腐に包丁を入れるかのような感触を以て通り抜ける。

 多少の違和感はあるが、石ころ(こいつ)の大まかな斬り方は理解した。



「よっこらせ」



 倒れる巨体から飛び跳ねて降りる。



「んんっ、九十点かな」

 《レベルが1上がりました!ステータスポイントを10振り分けてください》



 という訳で売却分の鉱石は十分に手に入ったし、ダンジョン攻略も切り上げるか。


 さてさて、残る二日間はレベリングは続けるとして、今日はもう寝よう。


 俺は【廃坑道】を出た後、街へ帰還。

 センリとヤタグロの二匹に餌を与えた後にログアウトした。


 出来ればレアモンスターのゴールデンゴーレムとかに会いたかったなー。

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