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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
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Episode.58 退職社畜と猫と鳥

ちょいちょい復帰でござる。

【ログイン中】


「うっ、せっと」


 気合い、裂帛。

 掛け声と同時に手元を操作。抜刀。


 気付けば目の前の敵は両断されていて、ポリゴンの破片になっている。

 で、また気付けば刀は鞘に収まっている。良いね。『抜刀神技』のお陰で狩りが捗ってしかたがない。

 抜刀と同時に二十倍の速度で居合抜き。


 強いのは良いけどさ、自分でも斬れてるかどうかぐらいしか判断が付かないってのはどうなんだろう。

 やはり練習を重ねるべきだな。人間、特訓あるのみ。

 何か、ちょうど良くPKでも転がってないかなー。PKならサクッと()っちゃっても問題ないってのに。


「おいこらテメェ!ちょっと待ちなあ!荷物を置いてくか、ここで死ぬ―――」

「あっ、居たわ」


 何かいきなりやってきたモヒカンのあんちゃんを両断する。

 最近のトレンドは首狩りではなく、頭から真っ二つなのです。


 え?さっきのエミル君はどうなんだって?知らないね。

 そもそもだけど、ここら辺って始まりの街なのよ。強い敵がいる訳ないじゃない。

 ふむふむ。では、強い敵がいるのはどこでしょう?知らね。


 一番の強敵だったのはプロの人………お団子ちゃんだけど、あれはモンスターじゃないしなあ。

 あっ、PKのドロップを忘れるところだった。うんうん、PKはモンスターだから、アイテム落とすよな。忘れちゃいけない。


「むー……」


 他にはレイランとかグレイ君だけど、あの人達は人間だけど何か違うっていうかなあ。


 精神的ダメージで言えば、特殊クエストの剣聖関連がきつかった。主にストレスでだけどな!


「どうしたもんかなあ」

「ニャー!」「カァー!」

「え?」


 何故か独り言に応え……いや応えてはないか。

 うむ。では言い直して。


 何故か独り言に割り込む声……鳴き声?が二種類。

 不思議に思ってそちらを向くと、何か黒い猫と黒いカラスが戯れていた。

 空飛んでるカラスに飛び掛かるけども届かない猫に、羽をばっさばっさとはためかせて牽制する鳥。


 う~ん。何この状況?

 なんかさっきから疑問形が多くなってしまっている。今日は不思議Dayだ。


「ニャー!ニャニャニャ、キシャー!」

「カァ!カァカカァー!クワッ、ガァ!」


 ※えー、ここからは日本語訳にてお楽しみ下さい。


 まあ、暇だしちょっと見てくかな。

 俺って猫派だし。鳥も嫌いじゃないし。


『ニャニャキニャーッ!(おい!待て!そこの鳥ィ!大人しく、アタシの餌にならんかい!)』

『グアッ、クワクワッ、ガァーッ!(誰がアンタなんかの餌になるかよ!この阿呆猫!)』

『ニャアーッ!?キシャ、キシャ、キニャーッ!(だーれが、阿呆だ!この鳥頭!)』

『カァ?カッカッカ!グワッ?(はあ?私は鳥ですけど~。何か?)』

『ニャニャニャ!?(なにこの鳥、腹立つ!?)』

『カァカァ?カーッカッカッカ!(アンタが言います?不吉なんだよ、いい加減あきらめろ!)』

『ニャニャ!?キニャキニャニャニャ!(それこそアンタが言うの!?お前の方が不吉やろ!)』

「……………」


 なんでだろう。途轍もなくしょうもないことで争っている気がする。

 この雰囲気を醸し出せるのは、俺の妹とお馬鹿のお団子ちゃんとポンコツのレイランぐらいだ。

 しかも、見てみいよ。黒猫とカラスですよ?不吉だねー。


『ニャ!キニャ、キシャー!(なんか、人間に馬鹿にされた気がする)』

『カァ!グワッ、ガァッガァッ!(なんか、人間に馬鹿にされた気がする)』

「えっ。あっ、ちょ、何でいきなり俺に攻撃すんだよ!ちょいちょい、タンマ!タンマ!腹減ってんのか?分かったって、飯上げるから!」



 ―――十分後。



 はい。というわけで、商店街で買って来た串焼きを持ってかれまし、た!

 とほほ……俺の食糧がぁ……。


 視線を猫と鳥に移すと、地面に置かれた豚肉の串焼きを美味しそうに(ついば)んでいる。

 仲悪そうに喧嘩してたのに、攻撃している時は息ピッタリで、今では美味そうに飯を一緒に食ってる。何なんだかな、こいつらは。


 俺は二匹の頭をガシガシ撫でて、そんなことを思う。

 こうして静かにしてりゃ、二匹とも可愛いのになあ。毛並みもモンスターとは思えないほどには手触りが良いし。


 《モンスターをテイムしました!名前を付けてください》


「ほえっ!?なんでぇ!」


 どうやら、俺はいきなりモンスターをしてしまったらしい。ええー、俺がテイムしたってどのモンスターをー?(棒)


 地面を見下ろすと、俺の方をジッと見つめている猫と鳥。

 もしかして俺、こいつらのことを手懐けた感じ?

 ええー……。俺さ、餌あげただけなんだけど。ふと、嫌な予感がしてステータスを覗いてみる。


 ♦調教術

 動物またはモンスターの調教に関する技術が向上する


「ああー………」

「ニャー」

「カァー」


 これの所為かー……。

 飯あげただけで俺の使い魔的な感じのになってしまった。どうしたもんか。


 溜息を吐いた俺は取り敢えず、視界に埋めているウィンドウ―――猫と鳥の名前決めのウィンドウに目をやる。

 そうだなー。名前かー。俺ってセンスありふれてるけど、流石に名前ともなると……。


「良いの浮かんだわ」


 俺は脳内で考えをまとめた後、猫のカラスに向かって聞いてみる。


「黒猫ウィズと焼き鳥ってのはどうだ?」

「キシャーッ!」

「ガァッーッ!」

「ぎゃあーっ!?」


 引っ掻かれて、つつかれました。何でだろう?

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