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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
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Episode.57 退職社畜の瞬刈

【ログイン中】


「よろしくお願いしますっ!」

「ん、ああ、うん。まあ、よろよろ」


 律儀に礼する少年。バトル始まってんのに、礼儀的な一面には感心せざるをえない。一応、俺も挨拶はしておくが。

 名前を確認。……エミル君かぁ。なんか、弱そうだねえ。失礼だけど。

 まあ、これは俺のスキル確認も兼ねている。直ぐに終わるだろうな。


「行きますッ!」

「来るなら黙ってきなさい」


 スタンダードなショートソードを構えて突撃してくるエミル君。

 最近は格上や強敵が多かったからな。一つここは年上としての威厳を見せつけなくてはな。


「ふっ!」


 お決まり(テンプレ)、上段からの斬り下ろし。

 ゆっくりと抜刀して、刃を添えるようにして力の方向を逸らす。

 耳障りな金属音を残して、地面へと向かう剣。


「まっ、だっ!」

「おおっ、凄いねぇ」


 キンッ!剣をそのまま一本背負い。切り上げの攻撃にする。

 これをバックステップにより回避。蹴ろうとするが前転で回避される。

 ………ふむ、これは。

 技の予測を出来る頭と、汚れることを問わない行動力。

 地力もあるようだし、応用もできそう。

 教えんのが上手い奴が鍛え上げれば、相当なものになりそうだ。


「ほ~ら、いくよー」


 突き攻撃。

 立ち上がろうとしている彼の頭部を狙った攻撃。


「くっ!」


 咄嗟に反応して振り返りと同時に刀の腹を叩く、エミル君。

 やっぱり、基礎が違うかなぁ。ステータス差ってのもあるだろうけど、やはり経験の差かな。地力はありそうだけどなぁ、しかし何もかもが足りてない。例えば、余裕。


「ほれほれ、どうした。さっきまでの威勢はどこにいった」


 少し速度を遅くした突きを連続で放つ。が、焦って回避したせいか、体勢が悪い。必死になって剣戟を防いでいる。

 こういう場合は一旦距離を取るか、大きく弾いた方がいい。もしくは踏み込むとかだな。


「スラッシュ!」

「パリィっと」


 アクティブスキルでの攻撃を刀で弾く。

 いや、これ。普通は折れるからね?俺が特殊なだけ。

 なんていうかなー、こう……振り下ろしてくるじゃん。それを、刃の形に添って上にかち上げるんだよね。


「エアスラッシュ!!」


 遠距離攻撃を近距離で発動。自分自身でも攻撃しての二連撃。

 考え方自体はいい。レベル差がある中、少しでも手傷を負わせようとする冷静さが垣間見える。うん、応用性も効くし、十分に強いね。

 まあ、それも一緒に撃ち落とせば終わりだけどね。


「おいっしょっと」


 斬撃と剣撃を同じ攻撃のライン状に捕えて、刀を振り下ろす。

 攻撃力に大差があるからだろうな。斬撃がへし折れて、剣も押し返す。

 鍔迫り合いだー。どっちが勝つかって?そりゃあ、ねえ?


「ガンバレ、ガンバレ!」

「ぐっ、うううううううううぅぅぅぅうぅ!??」


 あ、凄い頑張ってる。めっちゃ頑張ってる。凄い踏ん張ってる。

 顔が真っ赤だわ。苦しそうだねえ。

 てかさ、この体勢ってある種のマウントポジションなんだよね。その内耐えきれずに斬られるし、回避しようとしても速度的に斬られる。


 ―――うっわ、イジメじゃん

 ―――トッププレイヤー、最強伝説

 ―――高レベルがルーキー虐めてんよ


「はァ……」


 なんか、冷めるなぁ……。

 ゲームで強くなるとこんなこともあんのか。ダリィなぁ。やる気失せるし。

 両者、承諾して試合やってんのにさ、こう言われると色々なくすよね。

 もう、終わりにすっかな。原因作ったの彼だし、サクッと死んでもらおう。


「アークスラッシュ!!」


 かつて俺も使ったことのある必殺技。

 格上だし、ゲージ補正でも掛かってたんだろうな。俺の奴は十パーも溜まってないし。

 俺が使った時よりも数倍威力が強めの威力。PVPとはいえ、俺も結構なダメージ食らうだろうな。俺、紙装甲だし。

 速度は上々だが、威力はそれなり。学習して横薙ぎに払ってんのもいい。

 だが不機嫌なことに変わりないし、スキルの試し打ちの予定だった。当初通りにやっていこう。

 発動系のスキルでも何でもないけど……必殺シリーズ!ただ、


「……………抜刀……」

『フィニッシュ!』


 アナウンスが試合の終了を告げた。ほぼ同時に落ちるエミル君の首。

 ああ、試合は終了だ。


「……え?」


 誰かが声を出した。呆然とした声だ。


「あ、あえ……な、なにが……」


 復活したエミル君は何が起きたか分かっていない様子。

 俺から言えることはただ一つだけなんだがな。

 抜刀しかしていない、と。

 そもそも俺の抜刀速度と威力は公式チート気味な所があった。それを、今や速度二十倍のダメージ最低三百倍だ。抜刀速度を俊敏力に比例している今では、音速ぐらいはいってんじゃないのかな?


「それじゃ、失礼するよ。エミル君。また、会う時までにはもう少し強くなっていてくれ」


 座り込む彼の肩をポンポンと叩き、その傍を歩いていく。

 呆然としたエミル君に駆け寄って行ったのは仲間か友人か。

 モンスターでも狩りに行こうかな。

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