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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
58/64

Episode.56 退職社畜の一戦申し込み

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 次の日。


「ええー、そんじゃ解散」

「「解散」」


 寝ぼけたレイランを放置して解散。

 リアル事情?合わせているに決まってんだろ。

 三日後までに準備をよろ、ってことで現時点で解散。

 各自で準備するので、ライダーとルナレナは一緒に自分とこのクランへ帰還。既に準備は進めていたんだという。俺が行った時も準備中で、物資の準備書類を纏めていたらしい。予算とか物量とか諸々。


「さて、はて。何をしよっかなぁー」


 建物出たんだけど、やることないんだよね。

 準備、準備……準備……あっ、そうだ。あそこ行ってみるか。

 俺は【和国】ルーシェの外門まで行く。ルーシェで色んなとこ行ってモンスターとかも狩りたいけど、「約束」してたしな。

 防具も武器も大丈夫。あとは、回復アイテム。前に狩りへ出た時に粗方、使い切っちゃったからね。

 って訳でGO!






 ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦






 えー、戻って参りました、始まりの街【バマル】。

 ファストトラベル機能で、サクッと戻ってきました。

 そして~、それから大通りを通りまして、人が賑わっている場所へと。すると、【第一商店街】へと着くんですわ。

 で、ですね。見覚えのある看板を見つけまする。そんで、赤ずきんに赤エプロンの可憐な少女が集客をしている。


「やっほー」

「……?あっ!お兄さん!!」


 可愛い少女が近寄って来る。あら、可愛い。

 決して、ロリなコンじゃない笑みで頭を撫でる。

 この子の名前はアリス。前に、母親共々、悪質プレイヤーに絡まれていたのを助けたことがある。


「約束通り来たよ」

「うんっ!」

「ま、お買い物だけどね。案内してくれるかな」

「わかった!」


 ルンルン♪と、上機嫌に鼻歌を歌いながら先導するアリスちゃん。

 木製の丸い雰囲気の家宅商店。

 中に入ると、茶髪トングの女性が。こちらが、アリスちゃんの母親のリンダさん。ちなみにめっちゃ美人。


「お久しぶりです、リンダさん」

「あっ…!お久しぶりです、バツさん」


 大人的な礼儀として一礼。


「今回は大規模な遠征がありまして、その為に回復をアイテムを、って感じです。ちなみにクリスタル系が良いです。状態異常も一式あると助かります。あと、値段はあんまり気にしないので」

「そうですか……なら、ちょうどいいのがあります。少々お待ち下さい」


 そう言って、店内の奥へと消えていく。

 うむ、暇だ。椅子を出してくれたが座っていても何をするか分からん。

 暇だし、仲間になりたそうにこちらを見つめているアリスちゃんに構ってやるか。


「何か遊ぶ?」

「お話聞きたい!」

「お話?……うん、まあ、そうだなー………冒険譚でも聴く?」

「うん!」


 それから俺は色々な話をした。

 アリスちゃんと出会ってから【残酷峠】に行ったことや、グレイ一行と戦ったこと、ライダーとの世間話、エマキナにあったライダーのマイホーム、イベントのこと、ルーシェでの出来事………等々。様々な多種多様な話をした。


 程無くして……。


「お待たせしました。こちらです」


 かくして、リンダさんが持ってきたのはクリスタル系の回復アイテムだった。

 クッションの上に載っているカラフルなクリスタルは、光を反射して輝いている。


「こちらは、即効性のあるクリスタルの回復アイテムです。各種、HP、MP、毒、麻痺、火傷、凍傷のクリスタルです。HPとMPが二万メニーで、そのほかは一五五〇〇メニーです」


 う~ん……これは悩みどころだ。

 取り敢えずー……。


「HPが四、MPが一、凍傷を三、下さい」

「はい、合計で一四万六五〇〇メニーになります」


 メニュー画面を開いて支払いを済ませるとアイテム欄にクリスタルが追加される。

 次いで、アイテムを出現させて着物系の装備用・袋型ポーチを装備。ステータス上昇もある、結構高額のアイテム。クッション性もあるから、破砕の危険性は少ない。これにクリスタルを入れておく。


「それじゃ失礼します」

「またのご来店をお待ちしております」

「またねー!」

「じゃあね」


 元気一杯に、手をブンブン振るアリスちゃんに背を向ける。

 人混みを掻き分ける。


「あれ、『首狩り』じゃね……?」「ヒーロー侍だ。ヒーロー侍」「クビチョンパマンだ」「妖怪、クビオイテケじゃん」「なんか、見たことねえなあの装備」「プレイヤーのハンドメイドか……?」


 ありゃ、なんか俺………噂されちゃってますぅ?俺も有名になったもんだぜ―――なんてこともなく、実際になってみると、ウザったいものだ。

 視線は大量に向くし、しかも悪意とか嫉妬が大多数。集まるから動きも阻害されるし、見世物になるのは最悪。何で、こうなったかなぁ。ま、心当たりがないわけでもない(滅茶苦茶ある)。


「あの、対戦いっすか?」


 突然声を掛けられた。見たことも無い少年だ。失礼だが、恐らく無名。

 周りのプレイヤー達からは感嘆の声が上がっている。そんなに俺怖い?傷つくわー。


「あのー……?」


 まあ、いいだろう。

 対人での新スキルと装備は初めて、つまり、初披露だ。

 実験させて貰おうかな。


「いいよ。ルールは?」

「あっ、はい、で、あのー……ドロップ無しの、デスペナルティ有でお願いします」

「おK。そんじゃ、周りの奴等、今すぐ退け。巻き込まれたくなかったら」


 ザァァァァァ。凄い勢いで波が割れた。

 申請されたウィンドウに了承を押す。

 早速カウントが始まり、透明なフィールドが展開される。商店街だからか思いの外、広い空間を取れた。俺には必要ないけど。

 カウントダウン。


 10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…


『バトルスタート』


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