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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第六章 旅館楽事【従魔契約】
55/64

Episode.53 退職社畜のドン引き案件(病み注意!)

【ログイン中】


「はい、やって参りました。旅館です」

「おおー、これは凄ェな」

「だろ?ここ、評価良かったんでしてみたんだが、正解だったみたいで良かった」

「でもここ、かなり高かった気がするのですが?」


 ふっふっふー、それがねー。


「俺には大量の金があるからな」

「ああー、イベントの件での報酬ですか。納得です」


 ふと、そこで視界に異質なものが入る。

 なんというか、それは赤い武者鎧で、さっきまでずっと一緒にいて、何不自然なく、一緒に旅館に入ってきた。…。


「なんで、お前いんの?」

「それ言うの、今更だが」

「さっきから居ましたよね」

「居ましたけど」


 なんで?WHAT?


「だって、ここレイランの拠点で有名な場所ですよ?」


 そういえば、ルナレナさっき、値段のこと知ってたな。

 失敗したかな。このアホと一緒にいるとロクなことにならない気がするのだが。


「てか、怖いんだよ。その顔。ちゃっちゃと、ほか行ってくれ。俺たちは、温泉楽しむために来てるんだ」

「酷くないですか?先輩」

「「は!?」」


 ライダーとルナレナが声を揃えて声を出す。

 驚くとかの類いの声だった。

 そんなに、驚くことあったか?


「「レイランが、敬語!?」」

「先輩、私もしかして、馬鹿にされてます?」

「もしかしなくても、馬鹿にされてるだろ」


 人だれしも、敬語くらい使うだろ。

 まあ、確かに初期のレイランが、敬語を使ってるとしたら、凄いことなのかもしれないが。…っていうか、驚かれているということは、昔からコイツ、あんなだったのか。馬鹿だ。アホだ。マヌケだ。誰が、管理してるのやら。ああ、忍者の人か?


「いえ、ラムネさんは今はいないですよ」

「それは…また…クラマス、帰りましょうか」

「いやしかしだな…だが、あの人がいないとなると…」

「酷くないですか?ねえ」


 んあ、そんなにレイランは要注意人物なのか?

 やり易そうではあるのだが。


「いやはや、あの事件を忘れたとは言わせませんよ?」

「ぐっ…!?ですが…今の私なら―――」

「昔に、勝手な妄想で、プレイヤー百人斬りしたの覚えてるからな」

「お前、そんなことしてたの!?」


 ヤバい。ヤバい。

 こいつ、ヤバいとは、思ってたけど、ここまでとは。

 後ろに下がる。一緒にいて良い、存在なのか、疑問を覚え始めたわ。


「そうです。この阿保様は、PKからの偽情報に踊らされて、無関係のプレイヤー総勢、百五名を撫で斬りにしました。被害は甚大。NPCにも被害が行き、私達のクランに()()依頼がきたぐらいです」

「討伐!?お前、モンスター扱いじゃん」

「いや、あれは酷かった。廃墟と化していたからな。オレ様も呆然としてた記憶が未だにある」

「あ、あれは―――な、なんか、すみません…」


 土下座するレイラン。

 最近は、土下座DAYだね?レイラン君よ。

 てかさ、


「室内でも、兜被ってんのか?安全(セーフティー)エリアなのに」


 宿などの一部のエリアは戦闘行為が制限されるのだ。

 そのエリア内でも装備をつけているということは、カッコつけか何かなのだろう。


「あ、はい。そうですね。じゃ、失礼して…」


 レイランは、兜と面を外し……は?


「え…お前…女だったん?」


 なんと、兜と面の下から現れたのは、中々に整った女顔だった。

 僅かに幼さが残る顔。年齢は、十代後半かそこら。


「え?知らなかったんですか?」


 俺と似たような反応を返すレイラン。兜面で反響していた声も、淀み一つない綺麗な声になっていた。低かった声が、ビフォーアフターだ。驚きすぎて、声が出ない。

 きょとん、としている顔がアホらしさを表現している。あ、うん。レイランだー。


「デジャヴュを感じました。クラマスと属性というか…設定、被ってませんか?」

「い、いや、レイラン、ネカマじゃないし!私と違うし!」


 レイランは、徐々に顔色を歪めて、大声を出した。

 煩い。騒がしい。


「あー!もしかして先輩、私のこと、男だと思ってたんですか!!?うわー!うわー!」


 言葉遣いが既にアホだ。考えていることがアホなんだろうなー。

 それにしても、驚いた。


「本当に驚いてますか?」

「なっ…!こいつ、心を読めるのかっ!?」

「いや、普通に声に出してましたよ…」

「あっそう。…うん……うん、まあ、驚いた、よ?」

「何故に疑問形…」


 そう言われましても…。


「口調が女っぽいなーとは思ってたし、中性的な行動を取ってるし。何より、見覚えが…」


 主に妹だが…。


「見覚え…?」

「いや、それは気にすんなや。で、だ!何でいつも、兜なんて被ってたんだ。兜は兎も角、面までつけることないだろ」

「いやー、それがですねー」


 レイランは、ニカっと笑んで、頬を掻いた。

 俺は嫌な予感を覚えた。既視感があるんだよなー。


「恨み持った人に、後ろからブスリと刺されまして」

「えっ。頭を?」

「はい。頭を。設定イジってる人によると、脳漿ぶちまけていたらしいです。ははー、エグイですね。で、それ以来兜を付けてるんですよ。お面は、セット装備で仕方なくです。一時期、頭は外していたんですが、人が集り過ぎて、困っちゃうんですよね」


 まあ、その顔だったら、注目は集めるだろうな。

 装備をつけるにしろ、つけないにしろ。な。

 でも、後頭部ぶっ刺されることって何したんだろうな?勘違いによる、虐殺。


「あの『件』か~。あれは酷かったな~」

「また、何か事件を…?」

「恐る恐るって感じなのが、否めませんね」

「言うんですか?…やめてくださいよぉ…」


 泣き言を吐く、レイラン。

 こいつの初期イメージは崩壊済みだな。

 カッコイイと思ってた頃のアイツはどこに行ったのやら…。世界旅行中?宇宙旅行中かな?


「とあるカップルがいてな」

「ふーん」

「その男の方が、偶々デート中にレイランを見たわけだ。素顔を」

「あっ」

「でな。一目惚れしちまったらしいだわ。レイランに」

「うわー…」

「彼女をフッて、その目の前でレイランに告ったんだわ」

「やっぱりかー」

「『俺と結婚を前提に付き合ってくれ』ってな」

「カワイソー」

「で、そこの鬼武者様は、こう言ったんだ」

「なんて」

「『顔が好みじゃないです』って」

「ヤバ」

「最終的に男は、ゲームを辞めて、女は…」

「…」

「ま、そういうわけだな」


 ライダーがやれやれと頭を振って、手をぶらぶらと揺らした。

 ルナレナは、隣で膝ついてるレイランの耳元に何か、囁いてる。

 レイランは、ピクピクと痙攣しており、薬物依存者にしか見えない。

 どれ、何々。何を言っているのかな―――、


「あのー、どういう気持ちです?実はね私、掲示板でアナタが、バツさんに論破されて、泣かされたっていうの知ってるんですよ?あのあの。その時、どういう気持ちだったんですか?んんー?あれー?何で喋らないんですかー?ふーん?今まで、好き勝手して迷惑を掛けてきたのにー?唯我独尊のアナタ様がー?今度は、だんまりですかー?だって、私が聞いていることは簡単ですよ?今まで自分の勘違いで、プレイヤー何千人に迷惑を掛けて来たアナタが、一プレイヤーに泣かされた時の気持ちを聞いているんですよ?どうなんですか?ええ。今度は、私を斬りますか?残念です。ここは、安全エリアなのでー。それでそれで、その時の気持ちを教えてください。完膚無きまでに!論破されて!思わず大衆の前で!土下座した!天下無双の!一騎当千の!『和国の守護者』様に!聞いているんですよー?簡単なことですよ?さあ、思い出して。頑張って。バツさんに論破されて、今までやってきた行動が間違っていると気づいて、自分が情けなくて、思わず土下座しちゃった時の気持ちですよ?さあ、早く思い出して。そーれ、ガンバレ☆ガンバレ☆んんー?あれー?おっかしいなー?もしかしてー。泣いてるんですか?あれま。お顔が真っ赤ですよー?仕方ないですねー。じゃあ、ほかの事を聞くから答えてくださいよ?いいですよね。今は、バツさんの舎弟…いや、舎妹なんですから。じゃあ、さっき自分の過去の悪行が、暴かれて、『先輩』とやらに暴露された時はどんな気持ちだったんですか?恥ずかしい?それとも、止めてくれー、だとか『何で言うの』とかですか?よく我慢できましたね。昔のアナタなら、速攻で斬ってましたよ?え?違う?はは、何も違いませんよ。アナタなら、斬ってますよ。だって、ナンパされただけで、人斬りしますもんねー。一時期、言われてた二つ名は、何でしたっけ?何だっけなー?あっ、思い出した。確か、『男斬り』の女武者でしたっけ?ひゅー、カッコいいですね?いいですねー。私にも分けてくださいよー。棒読み?気のせいですよ?それでそれで、今はどんな気持ちですか?私は、最高ですよー。最悪だったのは、何時か、だってー?そうですねー、私が最悪と感じたのは、今からずいぶん前にあった、事件ですよ?とある、鬼武者が暴れてるって報告を受けて、遠方のプレイヤーから報告を受けて、救援要請を受けたんですよ。被害?そうですねー…民家破壊に、公共物破壊に、プレイヤー大量虐殺、二次被害によるNPCの死傷、地形破壊、環境破壊、市場相場の暴落高騰ですかねー?え?え?大変そう?そんなことなかったですよ?有給を取って、二徹で報告書や指示書を作製して、資金繰りをして、NPCの領主や、他のクランマスターとの会議を行ったくらいですよ?いや、大変だったなー。鎮圧するの。被害修復するの?資金結構使いましたよ?はい。感謝?されましたよ?凄いね?でも、今、この町では、『守護者』とやらがー、いるらしいのですよー?よかったですねー。もう、鬼武者による被害は受けなさそうでー。ねー?レイランさーん。聞いてますー?アナタも、お・に・む・し・ゃ、が出たら、倒すの手伝ってくださいよ?もう一回、あの労働をするのは嫌ですからねー?」


 ………………。

 うわ(ドン引き)×2


「ひっ…ぐすっ……うっ…ごべ()なざい…ぜんぶ、ばだしのぜいでず…ひっ、ぐすっうっうっー………」

「レイランさんが謝る必要はありませんよ?だって!悪いのは!お☆に☆む☆し☆ゃ☆なんですから~!!??」


 ………これ、どうやって、収拾つけるんだ…?

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