Episode.41 退職社畜の進まない展開
バツとレイランのやり取りが面白い、と言われて、嬉しかったです。
でも、レイランは当初、カッコイイ枠で登場する予定だったんですよ…。
いつからこんなことに…。
【ログイン中】
「普通だな」
「普通ですね」
性格が非常に悪いと思われた剣聖の隠し部屋は、存外にも普通であった。
盲目なのに関わらず、灯篭が掛けられていて、俺たちが入ると勝手に点いたのだ。頭蓋灯篭とは一風変わった温かみのある、灯光。部屋に入ってから頭蓋は大人しくなっている。
内装は地上部と違って、スッキリとしており、机と椅子、墨と筆が置かれている。それ以外は何も無く、こじんまりな部屋。
「何かありますか?」
「まあ、あるだろうが、気をつけろよ~。ま~た何か仕掛けられてるかもしれんぞ」
「ありそうですね…」
机から、じわりと距離を取るレイラン。先の事があり、警戒しているのだ。
当たり前だよねー。地上部の隠し仕掛けで、トラップ仕掛けて、さらに解いたらトラップあるし。
盲目の人が、どうやって仕掛けたんでしょうね~?ねぇ!?
コレ作ったの剣聖だってさー。わー、すごーい。名前、罠聖とかに改名したら~?
「引き出しありますよ…」
「本当だな………お前開けろよ」
「遠慮します。ここは先輩にお譲りしましょう」
「ヤなんだけど」
「良い歳した大人がナニ言ってるですか。早く行ってくださいよ」
「ならば、年上を敬って、言うこと聞きなさいよ」
罠の話をしたせいで、警戒心が。
レイランも俺も、机の引き出しを前に、たじろいでいる。
話さなきゃよかった!そしたらレイランが一人でに行ったかもしれなかったのに!
「…ここは、公平にジャンケンでいきましょうか」
「いいだろう…」
向かい合って、構える。
取り合えず、よくわかんないけど、腕をクロスさせるやつやる。
これやると、勝てるって何処かで聞いた。
「「最初はー、グー…」」
何が出るかな、何が出るかな―――
「「ジャンケン…」」
「「ポンッ!」」
結果は―――
♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦
「負けたァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
「勝ったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
俺が、チョキで、レイランがグー。…負け申した。
「行ってらっしゃい」
「あいあい…」
仕方が無く、机に近づく。
忍び足になるのも、仕方ない。よね?
あー、もうやだ。凄いやだ。とてつもなくやだ。
「ふぅー…」
頬を叩いて、考えを纏める。
真に…真に遺憾だが、俺はレイランに負けた。
良く良く、考えれば、馬鹿と勝負馬鹿は、グーを出しやすいと聞いたことがる。パー出せばよかったな…。
うむ。悩んでいてもしょうがない。行くか。
引き出しに、手を掛け、握る。
思いっきり…引く!
「…大丈夫だった」
「どうっすか?何かありました?」
改めて覗く。
「無い…」
塵ぐらい、ですかねぇ。
マジマジと、穴が開くほど見つめる。
俺があれほど苦労したってのに何もなしか…よ…?
「おい、ちょっと待て」
「どうかしたんですか?」
「こりゃあ…あの糞野郎!」
引き出しの、底面に拳を突き立てる。
バコォ!と、音を立てて、破れる。二重底でしたぁ。
だけど~…な・に・も・ねえ?!なんでや!?普通はある流れやろ!定石ってモンを知らんのか!
「帰りましょうか…」
「そうだ…な…?」
「?」
可笑しな感じがして、引き出しの、向こう側に手を突き立てる。引き出しの奥の方から異音がしてプラス感触。何か掴む。引き出す。
謎の紙、ゲット~♪
「って、なるかァ!!」
―――パァシィィン!
「センパーイッ!?」
紙を地面に叩きつける。力いっぱい。
「きれそぉ…」
「落ち着きましょう!そうです落ち着きましょう!そうだ!お団子食べましょう!お婆さんに貰って来たんです!」
手にお団子の串を持たされる。貰ってきてたのか。
そんな気分ではないが、とりま、食う。
「美味しい」
「ですよね!美味しいですよね!だから落ちつ―――」
「―――じゃっなーいッッッ!!」
食い終わった、串をぶん投げる。
「ヒッ!?」
「HAHAHAHAHAHAHA」
テレフォンパンチ気味の大振り投げで投擲された串は、岩を削って造られた壁に突き刺さる。へ~、木の串でも刺さるんだな。
何だか、楽しくなってきた。笑え笑え笑え笑え笑え!
「はっはははっはははははっははっははははっはははっ―――ドグシャカハァッ!?」
唐突に、腹筋に衝撃を感じました。
わぁ~、すっごーい(裏声)人って岩にめり込めるんだー…(擦れ声)
「ダイジョブですか!先輩。壊れちゃったのかと思って…」
「い、いや、ありがとう…。正気に戻ったよ…」
落ち着きました。ひとまず、九割減ったHP回復ポーションを飲んで、壁から這い出して、紙を拾って広げる。
やっと、展開が進んだよ。




