Episode.38 退職社畜の茶屋堪能
えー…次の話からザルな推理回が流れます。間違っていても、文句を感想に送らないでください。
はっきり言って、心が折れます。触れないでください。触らないでください。ひっそりと、感想に間違った点を送ってください。こっそり直します。
あと、レイランのアホの子化が進みます。あと、今日の11時にもう一度投稿します。
お楽しみに!
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赤風呂敷の敷かれた、店外の長椅子。
そよ風が吹きよる通りにて、手元の串に注目を寄せる。
赤白緑の三色団子の一番上。赤色の団子を頬張る。
噛み潰し、咀嚼…。餡の深い甘みと餅の仄かな甘み。こし餡の滑らかな食感と弾力のある餅。どちらも対象的だが、マッチしていて、老舗の味とも言うべきか。
「いやー、美味しいですね、このお団子」
「それは嬉しいこと言ってくれるねぇ」
お店のお婆ちゃんに言うと、微笑み返してくれる。
バツです。お店に来ました。お団子を食べています。美味しいです。
これがー…お袋の味…。俺の母親、団子なんて作れないけど。てか、基本的に料理作れないけど。
「あー、綺麗だなー」
爆音と共に空に打ちあがって行く岩人形。
限界点に到達すると、爆散して赤い花火が花開く。美しい。
やっているのはもちろん、レイラン。
持ち前の馬鹿力でぶん殴って、打ち上げて、爆散させてる…らしい。
襲ってきた岩人形を倒していたレイランが気づいたことなのだが、このゲーム、一定以上の高度に達すると、爆散する。なんでも。
試しに、レイランに小石投げさせた。そしたら、握った瞬間砕けた。から、モンスターの骨素材を投げさせたら、遥か上空で爆散して落ちてきた。現代のゲームでは骨が雨となって降って来る。
そこまでなら、なんとも無かったが、レイランが爆散させた岩人形のドロップに宝石が含まれていたのだ。岩人形は普通、石しかドロップしないらしく、どうやら新情報の様。プレイヤー間でこのレアドロップの存在が浸透する前に乱獲するか。となって、今の状況に。
「平和ですね」
「平和だねぇ」
俺はこうして、元の目的の茶菓子屋で団子食って、茶啜って、お婆さんと歓談してるわけ。
「お婆さんはここ始めて、長いんですか?」
「そうだねえ…かれこれ、四十はやってるかね」
「それは凄い。歴史あるんですね」
「嬉しいこと言ってくれるねえ。でも、こんな老いぼれが営む店なんていずれ消えていくものよ」
自虐ネタで、ふふふと笑うお婆さん。何かNPCも強く生きてんだなあ。
「ここら辺って何かあったりするんですかね」
来たばかりのプレイヤーより、地元のNPCの方が地理に詳しそう。
「ここら辺ねぇ…何も無い辺鄙な場所だしねえ。あるといったら剣聖様の伝説の森ぐらいかえ」
「伝説の森?なんですかソレ」
ワクワクする響きの名前だ。
「ルーシェに伝わる御伽噺さね。剣聖様が足に呪いを受けて歳若くして息を引き取ったとされる森のことさ」
「その森ってどこに在るか分かります?」
「いやぁ、御伽噺のことでここらに伝わってるだけ。在るかどうかは誰にも分らないんだよ」
老獪に笑うお婆さん。
でも、剣聖が息を引き取った伝説の森かぁ。ココロオドル。行ってみたい。
御伽話として存在してるなら、設定とか世界観的に本当にありそうだけど。隠しエリアなのか?それとも一定条件下ではないと出現しない特別エリア、とか。
道楽ついでに探してみるのも一興か。
レイランを呼び戻すとしよう。
「レイラーン!戻ってこーい!」
………。
「む?聞こえなかったか?」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「うっお!?」
砂煙を撒き散らし、こちらに猛進してくる人影。もちろんレイラン。
俊敏力は低くめだが、馬力があるから起きる現象。
「呼びましたか?先輩」
「呼んだ。呼んだが、もうちょっとゆっくり来なさい。砂埃が舞う。迷惑でしょう」
「あっ、すみません。お婆さん」
「別に大丈夫だよ。元気があってよろしい」
面倒が掛かる子だ。
お婆さんに頭を下げて、向き直るレイラン。
俺もお礼を言って、頭を下げる。
モンスターが湧かないエリアを抜けて、植物…森がありそうな場所を探そうとして、ふと思う―――
「俺は目的が決まって、行く場所が出来たが、お前が付いて来る義理も無い。どうする?」
観光名所を案内させるつもりでレイランを連れて来たが、行く場所が出来た。レイランが伝説の森を知ってるかどうかも分からないし、知っていたしても自分で行ってみたい。だが、絶対に来るなとも思わん。
来るかどうかは本人に確認するに限る。
「行きます」
「迷い無いな」
キッパリと正面切って言う。仮面で顔は伺えないが、迷い無いことだけは理解できた。
「旅は道連れって言いますし、ね」
「そうか…じゃあいい。行くぞ」
「はい!」
やけに元気な鬼武者を連れて、行き先不透明な旅?が始まった…のか?
エピローグにありそうな文体を自分で言って真正面からメンチ切ってく。脳内でやってんだからヤバめだよね。
ともあれ、強力な護衛が出来たとでも考えよう。
「お前は剣聖にまつわる話って知ってるか?」
「う…?んあ、はい。若くして亡くなった剣聖様のお話ですよね。ルーシェ一帯に伝わる御伽噺」
「知っていたのか」
「そりゃあ、ルーシェを拠点にしているプレイヤーならNPCからちょくちょく聞きますから」
ルーシェ全域のNPCが知っている可能性が高い。
隠しシナリオとかではなさそう。
運営としては、クリアして欲しいクエスト…いや、難易度を高めているからクリア願望は無い。むしろ
挑戦状的な意味合いが強い。でもルーシェ在住のNPCほぼ全員に伝えている。公式シナリオかつ、高レベルクエスト。それが妥当。
「伝説の森って言われてますが、ルーシェの森エリアには何も無かったんですよ。ヒントすらも」
「ヒントすらも、か?」
「です。伝説の森なんてワードがあるものですから、プレイヤーも血眼になって探しました。ですが、剣聖に繋がるワードが一つもなかったんです」
今、不自然な言い回しがあったな。
「剣聖に繋がるワードということは以外のワードならあったのか」
「はい。森の奥地にいる、ボスを百回倒すと行けるようになる特別エリア、『剣聖の襤褸小屋』って名前のエリアがあるんですよ」
「なんだ、あるじゃないか。剣聖のワードがあるエリアなら、何かあったんじゃないのか」
「いいえ。何も。あったのは名前通りのボロ小屋でした。屋根裏とか、水路、水車、等々。多種のギミックがありましたが、ヒントや剣聖の遺品、遺体は何一つ…」
「ほう…」
そそる話。解読のし甲斐がある。
「では、その場所に行ってみるとしようか」
「行くんですか!?ボスを百回も倒すんですよ?!」
「お前が倒してあるなら俺も行けるだろ」
「あ」
「行くぞ」
「はい」




