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退職社畜の抜刀記  作者: 陸神
第三章 【トライアングル・ガード】
28/64

Episode.27 退職社畜の別視点/弐

別タイトル=退職社畜の恐怖鬼ごっこ

PL(プレイヤー).ベルタ】



「はっ…はっ…はっ…」


 逃げろ逃げろ。一緒に来た仲間たちともスグにはぐれてしまった。


 ―――よーっつ

「ヒッ!?」


 マズい!不味いまずい拙い。

 ヤバイ。なんでこんなことになった!?

 俺達は攻めていたはず!

 なのにっ。どうして俺達が()()()()()?()

 ことの顛末を思い出す。


 …


【西洋城】に配属されて、まず俺は自分のパーティーを探した。

 このゲームを始めた頃からずっとパーティーを組んでいた奴等だ。初めに探すのは当たり前の思考だった。

 五人中、一人だけ見つかった。

 残りは、他の城に持ってかれたようだ。

 城の中ではだれが城主をやるか、口論をしている。俺が俺がとずっとやってる。埒が明かなさそうだ。

 どいつもこいつも気位が高いっつーか、自己中すぎだろ。

 普通に投票とかで決めればいいのに。

 俺と仲間は傍観を決め込んで、決まるのを待っていた。

 決まるのを待たずに出てった奴も何人かいたけど。

 そんで決まったのが、数分後。

 プロチーム見習いの人がやることになった。

 実力は伴ってるし、判断力は欠けるが、副指揮官にクラン経営の経験持ちの女性が付いた。

 で城主は、攻撃職と支援職に分けるように指示した。

 曲りなりにもリーダーが決まったもんだから、嫌々指示に従う者も居たが、周りに合わせていたようで良かった。

 最終的に、攻撃側と支援側で簡易パーティーを作って、攻撃側と防衛側に就く。

 攻める城はデカデカと山の上で目立っている【山城砦】。

 理由としては、特に目立った外壁や地形ではないのではないか、と言う【速弓師】の提言。遠見スキルで見たらしい。

 地形は分からんが、罠の類はありそうだし、山道なんて登ったことないし。整備されてない山道を登ったことなんてあろうはずも無い。

 だが、追い詰めたら弱そうだなとは思う。

 射撃や魔法の類による包囲攻撃で門などを打ち壊して侵入すれば速攻で勝負が着きそうだなとは思った。

 下山で撤退戦など、過去を見てもロクな結果を残していない気がするから。

 そうと決まってからは早く、急ぎ足で遠くに見える【山城砦】へ向かった。

 途中で【和城】の連中と遭遇して、一人仲間を失ったが、全員打倒。

 距離は有るが、ステータスが高い奴等を中心のパーティーで先行して、あっという間に着く。

 斥候系の職業、【探検者】に就いている俺が先導した。

 攻め方としては、パーティーが各方面から突入。

 薄くながらも、包囲網を確立させようと話し合いで決まった。

 そして山に突入。

 俺を先頭に、俺の仲間、即席のパーティーのメンバー。

 案の定。

 罠が仕掛けられていた。

 落とし穴で上手く隠されていて、その下に石釘。サイドには麻縄のトラップ。引っかかったら杭が飛んで来る。

 どんだけ殺意高いんだよって思った。

 異変が起きたと悟ったのはそれから間もなくのこと。

 遠くから悲鳴が聞こえたんだ。

 確か、女だけで構成された五人パーティーのはず。

 そういえば、男女四人のパーティーとも連絡が取れていない。

 嫌な予感がして、近くの奴と合流するように連絡する。

 二分後には合流したが、その頃にはほとんどの先遣部隊に連絡が着かない状態だった。

 実際に異変が起きたのは数分後。

 集まって警戒しても意味が無いから仕方無く、登山する。


「見つけた」


 声が聞こえた。男性の声だ。


「なんか言ったか?」

「……なに…も…」


 振り返った先で、首が落ちていく光景を目にした。

 見栄を張って、倫理設定を切っていたのがマズかった。

 立っていた体の首の断面から見える、赤い、紅い、朱い、ソレが見えていた。

 赤が宙を舞って、俺の頬に掛かる。

 生ぬるい。

 しかし俺もそれなりにやって来た、なんとか持ち直したが内心めっちゃ逃げたかった。


「おっ、おい!どうすん―――」


 判断を仰いだ剣士男の首が体ごと前に倒れた。

 また、アレが見えて、遂に混乱した。

 “あの”声が聞こえて来たんだ。


 ―――ひとーつ…ふたーつ…残りは?


 暗い森の中で、反響する謎の声と共に首が落ちる。

 朱色のソレが巻き散らかされる。


「逃げろーーーーーッ!!」


 全員が同時に逃げ出した。

 高レベルのプレイヤーとして良識は残っていたのか全員が違う方向に逃げて行った。

 俺はその時、聞き逃さなかった。

 謎の声が、『面倒な』と言っていたのを。

 逃げて逃げて逃げまくった。

 けど、アノ声が耳から離れなくてっ!!

 ずっとっ!こびりついていてっ!

 未だに聞こえる。


 ―――よっつ

「ヒッ!?」


 ヤツが来た!逃げなければ!

 仲間に知らせない―――。


 ―――いつーつ


 ずりゅ、っと頭から何かが引き抜かれる感触を最後に記録して、俺はデスペナルティを受けた。

 イベントを三人称で観れるエリアに転移させられた。負けた奴が何人も居た。

 俺が倒した奴も居た。

 ゲーム開始時からパーティーを組んでいた仲間も居て、顔は真っ青になっている。見つけたと思ったらいきなり仲間が組み付いて来て、「怖い」とずっと連呼する。

 仲間が落ち着いてから二言、三言話して。


「それ以来、俺と仲間はゲームを止めた」






 ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦ ♢ ♦






【ログイン中】


「やーっつ」


 これで終わり。

 山に入って来たプレイヤーは今倒した奴で最後のはず。

 俺が数パーティーを壊滅させたの後、八人見つけたんだが、二人目を倒した時点で散開してしまってな。

 見つけんのも、追いかけんのも大変だった。

 一応、山には静寂が戻ったと思われる。

 殺そうとした一人が、殺す前に俺に気づいて、命乞いを始めたんだよ。

 ゲームだから死なないのに、言い出したんだよ。

 俺は情報吐けっつったらすぐ吐いてくれたし。

 あ、もちろん()ったよ。

 あの人、戦犯だな。

 ひとまず落ち着いたし、後から来る部隊のことをライダーに伝えないとな。

 俺は木の上に上って、本陣のある【山城砦】へ帰還を始めた。

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