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さよならゴブリン

大変遅くなりました!一週お休みしての再開です。

あと、ちょっと短いです

ハイパーシャーマンゴブリン達の進化の宴は、夜通し行われた。


その宴の中で、クリソックスは求められるままに、人間の女が進んで苗床になってもらうための神託を授けた。

クリソックスがこれまで読んだ恋愛もの小説や少女漫画、はてはオシャレ女性誌に載っていた恋愛特集コラムなどを網羅した恋愛テクニックである。


ハイパーシャーマンゴブリン達は、それぞれ、『壁ドン』や『アゴくい』、『筋肉のさりげない見せ方』、はては『ふと見せる寂しげな表情』まで、各自で練習を始めている。

とある者は、パンをくわえて走ってくる女子村人と、曲がり角で出会い頭にぶつかり、倒れそうになる女子をさらりと抱き止め爽やかな笑顔を見せるロールプレイングまで始めてしまった。



そんな熱心なハイパーシャーマンゴブリン達に感心するクリソックス。

少し離れた場所で、ドロンズは一人、いじいじと泥団子を作っていた。


「なんで、わしには誰も苗床化テクニックを聞かぬのじゃ!」


完全にすねている。


「ねえ、ドロンズーー、彼らイケメンイケボになったけど、頭だけは毛がなくて、それがネックでもてそうにないんだよねー。どうしたらいいと思う?」

「わしが知るかーーっっ!!!」


イケメンハイパーシャーマンゴブリン達の集落に、ドロンズの叫びが響く。

(充分な毛髪を)持てる者であるクリソックスは、(毛髪を)持たざる者ドロンズの心を無邪気に抉ったのであった。




夜が明けて、ドロンズとクリソックスは集落の外れで、ハイパーシャーマンゴブリン達の見送りを受けていた。


「ギギッ(イケボ)」

「ギイッギギッ(イケボ)」

「ギイギイ(イケボ)」


イケボで口々に別れの挨拶をしてくるハイパーシャーマンゴブリン達。

ドロンズとクリソックスは、彼らに別れを済ませ、すっかり高校生くらいの緑がかった美少年となったスタニスラスに声をかける。


「じゃあ、スタニスラス。私達、ちょっと魔王と邪神を倒してくるから、それまでここで待っているんだよ。討伐に気をつけて、命大事にね!」

「そうじゃ。わしらの用事が済んで、いざお主をサラに会わせようと思っても、お主がこの世におらぬではどうしようもないならのう」


「ギイッ」

スタニスラスは、神妙に頷いた。


「もし、どうしようもなくなったら、このクリスマスソックスに祈りなさい。この神器は私に直通だから。お供え物を入れてもいいよっ。私に届きます」

「お主の神器は、ええのう。お供え物転送機能は正直ずるいわい」


ドロンズは、クリソックスの神器【クリスマスソックス】を羨ましげに見つめる。

ドロンズの神器【泥団子】だと、お供え物転送機能をつけても泥団子で包む必要があるため、土まみれになってしまうのがオチである。


「まあまあ。ドロンズ宛のお供え物も、この中に入れてもらえばいいじゃない」

「うう……クリソックスありが……いや!わしは昨日の屈辱を忘れておらんぞ!!」

「ちょっとドロンズ、まだ怒ってるのー?」

「神器といい、顔といい、髪といい、お主はズルい!」

「そんな、指を指されてもー」


「ギイギイ、ギギギッギ」

まあまあ、落ち着いて、と言わんばかりにハイパーシャーマンゴブリンの一人が仲裁に入る。

信者を不安にさせることは、信仰にも影響する可能性がある。

ドロンズとクリソックスは、口論を一旦取り止めて、ハイパーシャーマンゴブリン達に別れを告げると、【神は偏在する】でシャリアータ近郊の平原まで戻ってきたのである。




「さて、わしらは、これから魔王を倒しにいくのよな」

「そうだね、ドロンズ」

「魔王は、どこにおるのだったかのう」

「ええと、確かルイドートがこんなことを言ってたな……」


クリソックスは、ルイドート・ハビット公王の言葉を思い出した。


『魔王の住む大陸は、ノースリーブ帝国を北に進み、さらに海を超えた最果ての地にあると伝わっております。どうぞ、お気をつけを。ノースリーブ帝国のあるロングカーデ大陸への船は、ナームの港に用意してあります……』


クリソックスは、もっと思い出した。


『ぼ、ぼく、悪い王太子じゃないよ!』


クリソックスは、深く思い出した。


『ギンッ』



クリソックスは、ドロンズに説明した。


「ノースリーブの女の子はロングカーデを合わせがちで、その女の子に会いに行くにはナームの港に行かなくちゃいけないけど、悪い王太子がギンッとしてしまうから、王太子を懲らしめなくちゃならないんじゃなかったっけ?」                        

「なんの話なんじゃ。魔王はどこへ行った?」

「あれ……なんか、色々混ざっちゃったな。ちょっと待って。思い出したことを原文ママで君に伝えるよ」


クリソックスは、思い出したルイドートの言葉を、そのままドロンズに伝える。

ドロンズは、腕組みして聞いていた。


「なるほどのう。つまりは、わしらはナームの港に向えばよいのじゃな」

「そうだね!ナームに行こう♪」


二柱の次なる目的地は決まったようだ。

とうとう、新たな大陸へと旅立つのだ。

ドロンズとクリソックスは、新たな冒険に向け、北へと足を向けたのである。

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