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おいでませ☆ゴブリン村

なんか、なかなか話が降りてこず。やっと一話分いけた!


ところで、広島は雨で警報出てます。うちの地区だけ出てないけど。(笑)そしてもう降ってないけど。

皆様もお気をつけください。

シャリアータの城門をくぐり外に出た神様ズは、てくてくと平原を歩いていた。

異世界の見知らぬ草花が、ドロンズとクリソックスの足をくすぐる。

傍目にはズボンと靴を履いているように見えるが、所詮は全てイメージ。

実は全裸と変わりない。


全裸でうろつく爺二人。

通報ものである。



「さてと、どうする、ドロンズ?まだ『世界を救うためにはじまりの町を旅立つ勇者』気分を味わうかい?」

「ううむ。馬車か、乗用の黄色いダチョウがおれば完璧なんだがのう」

「ダメだよ、ドロンズ。勇者が乗り物を手に入れるには、そこそこの難易度のクエストをこなさなきゃ。でもはじまりの町を旅立ったばかりの勇者は、レベル1だよ?急にそんなクエスト、死んじゃうよ」

「いや、死なんだろ、わしら」


ドロンズが冷静に突っ込む。

そこへ、草むらの陰から青くてぷるぷるした魔物が飛びかかってきた。

そのぷるぷるの魔物はドロンズに体当たりしたが、ドロンズは全く堪えない。

魔物ははね返されて、草むらに着地した。


「おお、青くてぷるぷるしておるのう」

「うん。青くてぷるぷるで透き通っていて、ここまでは完全にアレなんだけど……なんだけど!!」


「「なんで四角いんだ……!」」


青くてぷるぷるの透き通った体をした立方体の魔物、ブルーゼリーである。

ルーキー冒険者が狩りがちな魔物で、このゼリー状の体が熱冷ましに効くため、安価で買い取ってもらえるお手軽な魔物なのだ。

ブルーゼリーはドロンズ達に敵わぬと悟るや、素早く逃げ出した。

逃げ足はわりと速いのである。


「ちょっと形は違うけど、テンプレ展開だったね、ドロンズ」

「うむ。やはり勇者ならば、一番最初に襲われるのは、青くてぷるぷるの魔物でないとな」


ドロンズはこれまで葬ってきた様々な魔物の存在をなかったことにした。

「テンプレといえば」とクリソックスが話を始める。


「やっぱりゴブリンだよね。もう『レベル1の勇者』ごっこは止めて、早いとこサラが恋してるゴブリンを探しに行こうよ」

「うーむ。そうじゃの。曲がりなりにもサラはこの世界でのファースト信者。なかなかセンスの良い泥団子を作る泥団子巫女。例のゴブリンが討伐されておったら悲しもうて」

「クリスマスソックスも、ゴブリンサンタなんていう斬新な柄を開発して、クリスマスソックス界に新風を巻き起こそうとする独自路線の靴下巫女だしね」

「それは褒めておるのか?」


微妙な表情を浮かべたドロンズに、クリスマスは肩をすくめて見せた。


「クリスマスソックスの普及のためには新しい感覚が必要だと、私は前から思っていたんだよ、ドロンズ。そういう意味では彼女は得難いよ」

「クリスマスの夜に枕元に忍んでくるゴブリンなぞ、ろくな展開にならぬと思うがの」


まったくである。

クリソックスはドロンズの呟きなど意に介さず、何やら周囲を見回した。


「ええと、あっちの方角だったよね、私達が顕現したのは」


ドロンズもクリソックスの言う方角を向いた。


「いや、あちらよりもう少し南東の、こちらじゃな」

「ああ、なるほど。視えた」


ドロンズとクリソックスは神である。

神特有の能力に、【神は偏在する】というものがある。

それは、『神が一度降り立った場所なら、どこにいてもその地を視ることができ、一瞬でそこへ降り立つことができる』というものだ。


クリソックスは【偏在】を使って、最初の地を視たのだ。


「なるほど、わしも把握した。特に人の姿はないな」

「じゃあ、行こう。【神は偏在する】」

「【神は偏在する】」


二柱は、最初の地、『名も無き森』へと【偏在】したのである。





広がる平原から鬱蒼とした森へと視界が変わった。

静かな森の中、遠くから何か獣の鳴き声が耳に届く。

二柱は、キョロキョロと辺りを見回した。


「なんだか懐かしいね。あの時は、ここが異世界だなんて思いもよらなかった」

「まこと、何故わしらがここに来たのか未だによくわからんが、信者の増え方を考えると、来てよかったのう」

「本職以外のよくわからない属性がついているけどね!」


そんなことを話しながら、二柱は己れに供給される信仰元を精査するべくアンテナを広げた。


「あのゴブリン達からも信仰が届いているから、この近くの信仰を選り分ければ、ゴブリン達の居場所もわかるはず……」


どうやら神には、自分に届く信仰元のサーチ機能がついているようだ。

この近くに信仰反応は四ヶ所。

王国内のため、二柱を信仰する者は少ないが、反応した信仰元は、王国外からやって来た人間なのだろう。

その四ヶ所のうち、人数が多く最も大きな塊として感じられる信仰元を視る。


「お、当たりじゃな。ゴブリンが大勢視える」

「あ、社があるじゃない!やった!訪れたことない場所だし、けっこう歩かないといけないかと思ったけど、社ならすぐに【偏在】できるよ」

「ありがたいのう。では行くか!」


「「【神は偏在する】」」





粗末な小屋が点在する小さな集落に、比較的新しい小屋がある。

その周囲には、泥団子を作って遊ぶ緑色の子ゴブリンと成体ゴブリンがおり、何匹か中にもいるようで、時折呟くような鳴き声が聞こえる。

今も二匹ほど中に入っていった。


そのうち、中にいた一匹のゴブリンが、慌てて小屋から走り出て、集落の中でも大きなボロ小屋に向かっていった。

新しい小屋の中は騒然としているようだ。

ゲギャゲギャと複数の声がしている。


すると、小屋の入り口から、人間の爺がふたり出てきた。


いや、人間ではない。

爺神二柱だ。

そう。本当は裸の神様、ドロンズとクリソックスであった。


「おお、ここがゴブリンの集落か。この小屋がわしらの社のようじゃ」

「中にクリスマスソックスと泥団子が祀られていたね。あ、あそこに転がってるの、作りかけの泥団子じゃない?」

「なんと!泥団子作りが浸透しておるとは……」


そこへ、比較的大きな小屋から出てきたゴブリン達が、走ってこちらに来るのが見えた。

多くのゴブリンは、粗末な布を二つ折りにし、真ん中に穴を開けた貫頭衣ファッションだ。

両サイドは縫えていないので、脇から下がパカパカであるが、以前見かけたゴブリンは腰巻き一丁であったから、ずいぶん文化的に進化したゴブリンであるといえるだろう。


ただし、丸出しだが。


貫頭衣の丈が短すぎるのである。

みんな、みーんな、放り出している。



爺神様ふたりは、変態ゴブリン村に到着したようだった。

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