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男神二柱、異世界転移、チート、何も起きないはずはない!

かさり……

靴の裏を生草がくすぐる感触を覚え、二柱の神は同時に下を見た。


「え?トイレは?」

「床が草になっておるのう。どういう事じゃ?」


戸惑いながら辺りを見回すと、そこは森の中だった。

『泥団子』神が呟いた。

「どこじゃ?」

「神域に戻ろうとしたのを間違って、違う場所に出たとか?」

キョロキョロしながら、『クリスマスプレゼントの靴下』神が推測する。

そして、何か思い付いたようだ。


「そうだ、『泥団子』神!再起動だ!」

「再起動?パソコンの?」

『泥団子』神が訝しげに#友神__ゆうじん__#を見た。

『クリスマスプレゼントの靴下』神は手を広げながらオーバーアクション気味に「泥団子」神に訴えた。

流石、外見は外国人だけある。

「そうさ!再起動するように、やり直そう。一旦神域に戻ればいい」

「それもそうじゃの」


二柱は頷くと、早速神域への帰還を試みた。




「……帰れない」

「嘘じゃろ……」


二柱はしゃがみ込んでいた。

生まれ出でてこのかた、二柱はこれほどの無力感を味わった事がなかった。

いくらマイナー神であろうと、曲がりなりにも神である。

ニッチなジャンル内ではあるが、神として気まぐれに信者に希望や試練を与えながら、望むままに生きてきたのだ。

二柱は、無力な人間の気持ちを真に理解しつつあった。



ガサリ


繁みの中から物音がした。

「動物かの?」

『泥団子』神が顔を上げた。

その瞬間、繁みから飛び出した大きな影が『泥団子』神を襲った。

「ど、『泥団子』おおおおお!!」

『クリスマスプレゼントの靴下』神は叫んだ。


『泥団子』神は、巨大な蛇に上半身を呑まれていた。

蛇が首を上に振り、さらに深く呑み込む。

『泥団子』神の体はほぼ蛇に呑まれて、既にふくらはぎから下しか見えない。


「お、おーい!大丈夫かー?」

『クリスマスプレゼントの靴下』神が、膨れた蛇の腹に声をかけた。

「大丈夫じゃー!それより、ここはどこじゃ?暗くて狭くて見えん」

腹の中から呑気な声がした。

『クリスマスプレゼントの靴下』神も呑気に答える。

「『泥団子』神、今蛇に呑まれ中。助けようかー?」

「いや、いい」

『泥団子』神がそう言うや否や、巨蛇は細切れになった。

蛇の中から出てきた『泥団子』神の体から、土色に光る鋭利な刃がいくつも生え、生きているかのように揺れている。

「か、かっけえええ!!泥団子ブレード?!」

興奮した『クリスマスプレゼントの靴下』神は、『泥団子』神に駆け寄った。

『泥団子』神は、得意気に語った。

「泥とてやりようによっては鋼の如く硬くなる。これは、わしが無茶苦茶圧縮した特別製じゃ」

そう言うと、刃を体の中にしまった。




「それにしても、こんな巨大蛇、日本にいたかな?」

『クリスマスプレゼントの靴下』神は蛇の細切れを見下ろしながら呟いた。

「おお、この蛇、目が三つあるのう」

「尾の方は、いかついトゲがついてるよ」

「新種かの?」

「おおお!大発見!?」


ギィャァァ……


新種の発見に色めき立つ二柱の遥か頭上から、不可思議な鳴き声が聞こえ、上を見上げたマイナー神達は、言葉を失った。



翼を授けられた最強のトカゲ。

見るからに、ドラゴンで御座い!というような生物が、空を舞っていたのである。


「ジュ、ジュラ○ックな公園に迷いこんだのであろうの!」

「落ち着いて、『泥団子』神。そんな公園は、映画の中しか無いよ!」

「じゃあ、あれは何じゃ?!!どう考えても恐竜じゃろうが!!」

空を指差して喚く『泥団子』神に、『クリスマスプレゼントの靴下』神は神妙な顔で見解を述べ始めた。


「なあ、『泥団子』神。ここはどう考えても日本じゃない。多分地球でもない。ここは多分、違う世界。異世界だよっっ!!」

「異世界?お主が以前わしに貸してくれた小説に、そういうのがあったな……」

「そうそう!それだよ!異世界転移っ!絶対私達、異世界に来たんだよ!」

「そんな、馬鹿な……。あれこそ、小説の中の話……」『泥団子』神は狼狽えながらも、空を飛ぶナニカを見て、「まさか……」と呟いた。

「異世界転移。ああいうのは人間のニートか高校生が巻き込まれるものだと思ってたけど、私達もいけたんだねえ。やっぱり、あれかな?昨今の異世界ものは、おっさん主人公が主流になりつつあるから、爺神の私達に白羽の矢が……」

「お主、何を言っておるんじゃ……?」

捲し立てる友神ゆうじんをちょっと引いた目で見つめた『泥団子』神は、ため息を吐いて「これからどうしたもんかのう」と一人ごちた。

『クリスマスプレゼントの靴下』神は、その言葉が耳に入ったのだろう。『泥団子』神に告げた。

「友よ、安心するがよい。テンプレだと、何処かから悲鳴が聞こえて、人間の女子が盗賊かゴブリンに襲われているんだ。それを助けた私達は、感謝されて近くの町に連れていってもらえるはずだ」

『泥団子』神は呆れた。

「そんな小説みたいな事が、起こるわけが……」



キャアーー!誰かぁーー!



「「起こったな……」」

驚愕する『泥団子』神の手を引いて、『クリスマスプレゼントの靴下』神は走り出した。

「早く行こう!人間は脆弱だから、早くしないとすぐ死んじゃう!」

「お、おう……」




そして、異常な速さで森の中を駆け抜けた先に、爺神二柱が見たものは……



盗賊に襲われている馬車。

馬車の持ち主の商人らしき一行と盗賊がバトル中に、ゴブリン団が乱入。

三つ巴で乱戦している所を、先ほどのドラゴンが漁夫の利を狙って参戦。



まさにテンプレてんこ盛りのカオスな状況であった。

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