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裸なゴブリン退治

『マイナー神』を読んでいただき、ありがとうございます。

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励みになります!更新、がんばりますねー

「ギ、ギ、ギルドマスター!あいつら、おかしいですよ!腹刺されても、腕ちぎれても、血もでねえんすよおお!!」

「うんうん、そうだな、ジョブズ君。最近、働きすぎてるよ、君。少し休暇を取りたまえ。今回の試験官の依頼料、少し色をつけておくからな?」

「俺は疲れてるわけでも、幻覚見たわけでもねえ!おかしいのは、あいつらだ!靴下は凶器になるんだああ!!」

「スリープ」

「ぐう」



その場に崩れ落ちたジョブズの後ろに、副マスのヨミナが立っている。

「助かった、ヨミナ」

そう言って背もたれに背中を預け、深く息を吐いたギルマスのナックは、机の上の書類を手に取り眺め始めた。

「なんだか、ジョブズさん、ずいぶん錯乱してましたねえ。混乱系の魔法でもかけられてたんですか?」

ヨミナは魔法で自分の身体能力を高めると、ジョブズの体を抱えてソファに寝かせた。


ナックは眺めていた書類を、机の上に投げるようにぞんざいに置く。

「例の新人爺の件だ。昨日ジョブズが試験官として奴らを森に連れていき、奴らに抱えられて戻ってきた。そして今日、錯乱して駆け込んできた」

ヨミナはナックの放り投げた書類を手に取り、眺め始めた。

「ええと、結果は……。二人とも角ウサギを狩ってきてるじゃないですか。……ん?一匹爆発していて、肉としては使えなかった?何これ、ウサギ爆発?」


ナックは眉間に皺を寄せてヨミナを見た。

「何かがあったんだろう。が、よくわからん。とにかく、角ウサギを狩るくらいは出来るようだ。ゴブリン狩りで様子を見よう」

「了解です。試験官はどうします?」

ナックとヨミナは顔を見合わせた。


「お前、行ってこい」

「ナック、行ってみません?」


二人の言葉は同時だった。

二人とも、クリソックスとドロンズが気になるのだろう。

ただ、ジョブズの様子を見ると、どことなく薄気味悪さを感じ、相手に彼らの相手を押し付けようとしたのが見てとれる。


少しの沈黙の後、ヨミナが気まずそうに提案した。

「二人で試験官してみません?」

ナックが顔をしかめる。

「何をバカな!ギルドの責任者が二人ともここを離れてどうする!」

「まあ、一日くらいは大丈夫でしょ?ゴブリン退治ですし、連絡だって取れる。今度ナレノ村ギルドの副マスとして派遣されるアントンに任せるのも手ですよ。彼はギルマス志望ですからね。いい経験になる」

ナックは唸った。

ヨミナは、

「気になるんでしょ?あの二人の事。僕もですよ。それに、二人で行けば、何かあっても怖くないですよ」

ナックとヨミナは、ソファでいびきをかくジョブズを見た。


「……行くか」

「はい。じゃあ、調整しときまーす」

そう言って、ヨミナはさっさと行ってしまった。

しばらくして、ギルド職員が二人部屋を訪れ、寝ているジョブズを抱えて部屋を出ていった。


ナックは久々の現場仕事に備えて、武器の手入れを始めた。




ゴブリン退治試験の日の朝。

前回と同じようにクリソックス達は門の外で試験官と待ち合わせていた。

「いい天気だねえ。風も気持ちいいし、かわいいちょうちょも飛んで……このちょうちょ、飛んでるんじゃない、跳んでる!ノミみたい!」

「泥団子を作るのに、良い日じゃのう」

二柱がのどかな風景に癒されていると、目の前に馬車が止まった。

「おい、ゴブリン退治に行くぞ。乗れ!」

ナックである。

クリソックス達はいそいそと馬車に乗り込んだ。


「今日の試験官はナックさんなんですねえ」

馬車が走り出し、揺れる車内でクリソックスがナックに話しかけた。

「そうだ。お前達がどんな戦いをするのか興味があってな」

「僕もいるよー」

御者席からヨミナの声が聞こえた。


馬車がガタゴトと動き出す。

ナックは腕組みして、鋭く二柱を観察する。

どう考えても、ぺらっぺらの普段着だ。

ゴブリン退治に行く格好ではない。

「お前達、その格好は……」

ナックの言わんとする事を察したクリソックスは、説明する事にした。

クリソックス達神は、生身の肉体というわけではない。この姿は触る事のできるイメージでしかないのだ。

着ているように見える服も然りである。


「ジョブズさんにも言われたんですけどね、私達に服は必要ないのですよ。な、ドロンズ」

「そうじゃのう。わしらは服を着ないのじゃ」

ナックは衝撃を受けた。

「なっ!お前達、家の中では服を着ない派なのか?!誰かが急に訪ねてくるかもしれないだろう!」

「いやいや、家の中だけじゃなくて、いつでもどこでも、着てないよ」

「そ、外でもか!?」

「当然じゃ」


「へ、変態だあーーーっ!!!」


突然叫び出したナックに、二柱が目を丸くし、ヨミナは馬車を急停止させ、何事かと中を覗いた。

「どうしたの、ナック?」

「こいつら、変態だ!裸をこよなく愛する変態なんだ!」

「え……?そんな風には見えないけど」

「人は見かけによらないって言うだろ!!」

「いや、私達は人じゃないから」

「変態は黙ってろ!!」

「えぇ……」


興奮するナックを宥めようと、ヨミナが馬車内に入ってくる。

「よくわからないけど、君達、裸を愛する変態なのかい?」

二柱が否定する。

「変態じゃないよー」

「そうじゃ、変態じゃないぞ?裸を愛しているわけでもないしな」

「ほら、ナック。二人は否定しているよ」

「だが、確かにこいつら……」

ドロンズは、ヨミナとナックに告げた。


「わしらが服を着ないのは、それが普通だからじゃし!」


ドロンズとクリソックスは、ヨミナにこの後めちゃめちゃ説教された。



ヨミナに説教を任せて御者台に座ったナックは、馬車をひたすら走らせた。

目指すは北の森である。

角ウサギが生息するシャリアータ近郊の森と違い、北の森は深く広い。

ここには様々な魔物が生息しており、ゴブリンもその一種である。


ヨミナの説教が終わる頃に、やっと北の森の入り口までやって来た。

ナックは馬車を泊め、魔物避けの香料を馬車につけた。


「おい、行くぞ。時が惜しい」

「わかりましたー。ほら、二人とも行きますよ」

ナックの呼びかけにヨミナが答え、若干うんざり顔のクリソックスとドロンズを伴って外に出てくる。

二人と二柱は、てくてくと森の中に入っていった。


森の中を歩くナックとヨミナは、流石にギルドの責任者になるだけの事はある。

さりげなく周囲を警戒しながら、さくさくと歩いていく。

二柱はといえば、のほほんと歩いていた。


しばらく森を散策する。

ゴブリンはいない。

静かなものだ。

「静か過ぎる」

ナックが呟いた。

「ゴブリンがこんなにみつからないなんて、おかしいですね。何か嫌な予感がします」

ヨミナが警戒を滲ませながら、ナックに話しかけた。

「ドロンズ、あれじゃない?よくある展開!」

「?わしはお主ほどラノベを読み込んでおらんから、よくわからん。よくある展開とはなんじゃ?」

「ほら、森に生き物がいなくておかしいと思ってたら、実はめちゃ強い魔物がやって来ていて、弱い生き物や魔物を殺してたっていう」

「おお、そういうの、見たことあるのう」


バリバリバリッ!!


少し離れた所で凄まじい音が聞こえた。

ガサガサガサッ!

茂みから、刺をまとったでかい猪が飛び出す。

「ニードルボアだ!」

猪の魔物らしい。

クリソックス達は、間一髪避けた。

ニードルボアは、そのまま走り去っていった。


「なんだったんだ?」

ナックがニードルボアの去った方角を眺めながら呟く。

「ナック!あれ!」

ヨミナがニードルボアの来た方を指差した。


木々の隙間から、赤黒くて大きな何かが見えた。

バリバリバリッ!!

目の前の木がへし折れる。


次の瞬間、クリソックス達の前に、三メートルほどの人型の赤黒い怪物が現れた。

頭には捻れた角が二本ついている。

「オーガ……」

ナックが声を漏らした。

クリソックスはヨミナに聞いた。


「ねえ、あの人、裸で外歩いてるんだけど、いいの?」



確かにオーガは、全裸だった。


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