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雪色エトランゼ  作者:
第2部
95/115

Act:95

 遺跡の中心部から広がった羽が、ゆっくりと羽ばたく。

 巻き上げられた風が突風となり、大破したリコット号上の俺たちまで吹き付けてきた。

「お嬢!」

 シュバルツが操舵室によじ登って来る。

 俺は、はっと我に帰った。

「シュバルツ!2人を運びます!手伝って下さい。ラウル君、リコット、大丈夫ですか、立てますか?」

「カ、カナデ、さま」

 シュバルツがどたどたと駆け寄って来ると、ラウル君を背負った。

「全く、むちゃくちゃだな、ガキどもが」

 言葉とは裏腹に、シュバルツは優しげな顔でラウル君を見る。

 リコットだってラウル君だって、優人たちと長い間行動を共にしたパーティーの一員なのだ。その仲間を守りたいという強い気持ちが、彼らを突き動かしたのだと思う。

 その思いは、ドラゴン型すら打倒し得るのだ。

 俺は未だ意識のはっきりしないリコットに微笑みかける。

 リコットとラウル君が意識を取り戻したら、まず無茶を叱る。でも、頑張ったねと誉めてあげよう。そして、みんなを助けてくれてありがとうと、お礼を言おう。

 俺はリコットに肩を貸して立たせると、足元に注意しながらリコット号の残骸を降り始めた。

 その途中、崩れかかった石柱の隙間から、遺跡の内部がちらりと見えた。

 巨大な穴が開いている。

 そこから、あの羽が突き出しているようだった。

 不思議な事に、砕けた瓦礫や地盤が、下から吹き飛ばされた状態そのままに、その場に滞空していた。

 空間が歪んでいる?

 嫌な連想が脳裏をよぎる。

 次元や空間を操る力は、あの禍の祠で遭遇した……。

 その時、その浮き石を足場にして跳ねる人影が見えた。

 あれは!

 俺は船の残骸を下りる足を早める。

 あんな人外じみた動きができるのは……。

「カナデさま!」

 俺は、駆け寄ってきたレティシアにリコットを預ける。

「2人をシロクマ号に運んで下さい」

 レティシアにそうお願いすると、俺は遺跡中心部に向かって駆け出した。

「カナデさま、どちらに!?」

「状況確認に行って来ます。シュバルツは周辺警戒を。バックアップをお願いします」

「おう!」

「レティシア以下は、グラスと合流して下さい」

 鼓動が早まる。

 苦しい程に。

 気が焦る。

 瓦礫の間を縫うように進まなければいけないのがもどかしい。

 あの穴の中から飛び出して来た人影。

 もつれ合っているようだった。

 まるで、戦っているかのように。



 巨大な建造物の名残が、一部の壁面や柱に残るその遺跡内部に入る。石造りの遺構に囲まれた目の前の空間には、巨大な穴が黒々と口を開けていた。

 低く何かが響いている。

 風が巻いているのだろうか。

 その不気味な重低音と浮遊する岩石群が、異様な空間を作り上げていた。

 そしてその中心で蠢く巨大な羽だ。

 近付くと、その巨大さが一層良くわかる。

 しかし今はその羽よりも、浮き石の上を縦横無尽に駆け回る人影に、俺は目を奪われていた。

「優人!陸!」

 俺は思わず声を上げる。

 優人と陸。

 俺にとって幼なじみである2人のブレイバーが、激しく剣を交えていた。

 大きな浮き石の上で、優人が大剣状に形成したエシュリンの楔を構える。その上から、2刀に形成された陸のエシュリンの楔が、激しく攻め立てていた。

 2つの光の剣がぶつかる度に、遺跡の中に激しいスパークが瞬いた。

「はっ、優人も手に入れたんだな、そのレア装備!」

「陸っ……!」

「光の剣だぜ。まさに主人公装備だよなっ」

 優人の態勢が崩される。

 防御の上から2刀を叩き込まれ、大きく後方に弾き飛ばされた。

 そのまま遺跡の壁面に激突するかのように思われたが、優人は器用に体を返し壁面に足をつくと、壁を蹴る反動を利用して陸に突撃を仕掛ける。

「陸っ、邪魔するな!」

 優人が光の大剣を振り被る。

 浮き石の一つに着地した陸は、瞬時に2つの剣を1つに合わせ、光の盾を作り上げた。

 2つのエシュリンの楔が激突する。

 ビリビリと空気が振動し、眩い閃光が迸る。

 その光の中、優人の剣が弾かれてしまった。

「優人ぉ、スキルレベルが足りてないんじゃないか?」

 陸が嘲笑いながら、盾を剣に戻したその瞬間。

 弾かれると同時に即座に再突撃を仕掛けていた優人が、剣を突き出した。

「甘いぜ」

 陸が片方の剣で優人の剣の軌道を逸らし、もう片方を振り上げた。

 その陸の懐へ、2刀の間合いの中へ、加速した優人が踏み込む。そして、空いた拳で陸の腹を殴り付けた。

「ぐほっ!」

 奇妙な呻きと共に、陸の体が浮かび上がる。

 集中が途切れたのか、陸の楔が掻き消える。

 そこへ、こちらも楔を消した優人が、銀色の光が立ち上る拳を叩き付けた。

「がはっ!」

 呼吸が漏れ出す音と共に、錐もみしながら陸が吹き飛ぶ。

 優人はそれを見送らず、浮き石を辿って素早く地の底へと下り始めた。

 唐突に地面が激しく揺れ始める。

「ああ……っ!」

その衝撃に、俺は膝をついた。激しい振動の中、辛うじて顔だけを上げた。

 優人が、光の大剣の切っ先を下に向け、浮き石から飛び降りる瞬間。

 落ちる!

「優人!」

 俺は思わず声を上げた。

 しかし。

 穴の奥底からぬっと伸びた巨大な腕が、容易く優人をその体ごと弾き飛ばした。

 優人は浮き石の一つに激しく叩きつけられた。衝撃でその浮き石が真っ二つに割れ、土煙が上がった。

 優人を叩き落とした腕が、穴の淵に手をかけ、地の底より這い出して来る。

 恐ろしい鉤爪が生えた手は、指だけで俺の体より大きい。腕はもはや人間何人分だろうか。

 俺は唖然としながら、その光景を見上げていた。

 2本の巨大な腕が、のそりと本体を持ち上げる。その巨影が徐々に姿を現すにつれ、振動が収まり始めた。

 地の底に、不吉な赤の輝きが見えた。

 胸が苦しくなる程の不安が込み上げて来る。

 巨大な頭部にズラリと並んだ牙。長く伸びた頭部に走る2本のラインが、脈打つように赤く明滅している。体中から立ち昇る湯気のような黒い霧。発行する赤色。ただその翼だけが、白く輝いていた。

 まさに魔獣と言えるその姿……。

「……これは、いったい」

 俺は思わず後ずさった。

 これが女王型魔獣なのだろうか?

 しかし、報告に聞いていた形状とはあまりにも違う。

 サイズは少し小さいが、この姿はまるで、禍の祠の最奥部で遭遇したあの巨大な屍ではないか……。

 頭部から首へ、徐々にせり上がって来るその巨大な魔獣を呆然と見上げる俺の前に、ガシャンと膝をついて優人が着地した。

「カナデ。危ないから、下がってろ」

「優人、あれは……優人、大丈夫ですか!」

 質問を口にしようとして、はっとする。

 優人の口元から血が流れていた。

 優人は血をごしごし拭うと、俺に背を向け、胸まで上昇して来たその怪物に向き直った。

「ちっ、出て来やがったか」

「優人、あれは……?」

「女王型だ。黒騎士が、あの骨魔獣の心臓を女王型に植え付けやがった」

 俺は息を呑んだ。

 黒騎士があの洞窟から屍の心臓を持ち出したのは、やはりあの封印されていた禍の復活が目的だったのだ。

 つまり……。

「朽ちた体など不要だからな。新しい器を頂いた所だ」

 不意に、低く無感情な冷たい声が響き渡った。

 俺たちは慌てて辺りを見回した。

「黒騎士……!」

 優人が吐き捨てるように呟く。

「ヴァン……」

 俺もそう口にしていた。

 地の底から現れた魔獣の肩に、漆黒の全身鎧が立っていた。そこだけ穴が開いてしまったかのような漆黒のシルエットに、赤い目だけが爛々と輝いていた。

 あの祠の地下に眠っていた禍は、既にその肉体が朽ちていた。

 黒騎士はその心臓部を抜き取り、女王型に埋め込むことで、禍を甦らせた。

 禍ツ魔獣

 目の前にいる巨大なものは、そういう存在なのだ。

「ふむ。アネフェア。君も旅立ちに立ち会ってくれるんだね。くくくっ」

 漆黒の鎧の妖しげに赤く光る目が、俺を捉え、またその知らない名で呼んだ。

 旅立ち……?

「黒騎士の動きは防ぐつもりだったが、突然現れた陸に邪魔された。悪い、カナデ」

 優人が背中を向けたまま低い声で言う。

 俺は首を振った。

「優人、無理はしないで」

 優人が膝をたわませ、跳躍の態勢を取った。

 そこへ、こちらもガシャンと鎧を鳴らし、陸が降り立った。

「ったく、せっかく剣があるんだぜ。剣のバトルしようぜ」

 陸は不敵に笑うと、ぺっと血反吐を吐いた。

「陸。もう邪魔するな!黒騎士とあれは、ここで倒すんだ!」

 優人が激しく陸を睨み据える。



 陸は、はんっと鼻で笑った。

「だからさ、何でそんなに熱くなるんだよ。所詮ここは、俺たちの世界じゃないんだぜ?誰が死のうが、何が起ころうが、知ったことじゃないね」

 陸はひょいと肩を竦める。

 俺は、かっと全身が熱くなった。

「本気で言ってるんですか……!」

 怒りに呑まれてはダメだ。出来る限り込み上げて来るものを抑える。

「何だよ。また馴れ馴れしい女かよ」

 陸が俺を見た。

 無感情な、まるで物を見るような目だった。

「いくら可愛くたって、NPCに興味は無いね。黙ってろ」

「陸!」

 俺は思わず一歩踏み出した。

 NPCだの何だの、俺の事は何と言われても構わない。

 しかし、今も外で戦っている騎士たちを、命を賭して仲間を救おうとしたリコットたちを、俺を家族に迎えてくれたお父さまを、そして、シリスを軽んじることは、私が許さない!

 決して、許さない!

 それが例え、陸であってもだ。

 俺は剣に手をかけ、一歩進み出した。

 陸が俺を見下すように薄く笑った。

「わかった」

 しかし緊迫した俺たちの間に、冷ややかな優人の声が割って入る。

「陸。お前がどう考えているかなんて、それこそ、もう、どうでもいい。戦いたいなら、後で相手してやる。だから、今はじっとしてろ」

 怒りを堪えて平板になった優人の言葉に、陸はニヤリと唇を歪めた。

「おいおい、優人。あの魔獣を見ろよ。どう見てもラスボスだぜ?ライバル同士の決着の後に、ラスボスを倒すってのがお約束だ」

 陸は挑発するように、両手に光の剣を構えて見せる。

 しかし優人はその挑発に反応を示さず踵を返すと、禍ツ魔獣に向き直る。そして、剣を構えた。

「優人。言っとくが、俺は背中からでも攻撃するぞ。バックアタックの方が、クリティカル率が上がるしな」

 笑みを含んだ陸の言葉が、軽薄に響いた。

「陸、いい加減にしな!」

 その時、凛と夏奈の声が響いた。



 遺跡の外から勢い良く飛び込んで来た夏奈が、俺たちや陸から少し離れた場所で立ち止まった。その背後からは、シズナさんと禿頭さんが走って来る。

 優人みたいに、禍ツ魔獣が開けた穴から飛び上がれなかったのか、遺跡の入り口を回って来たのだろう。

「陸!もうやめて!」

「何だよ、夏奈。邪魔すんなよ」

 優人が禍ツ魔獣に向けて、跳躍の姿勢を取った。

 陸が光の双剣を構える。

 そして夏奈が弓を構え、矢をつがえた。

 狙いは陸……。

「夏奈。お前の弓矢なんかが、俺に効くと思ってんのか?」

「……うう、だって」

 弓を構える夏奈の声は震えている。

 弓も震えている。

 その顔が、苦悶に震えている。

「う、動いたら、撃つからね!」

 夏奈の動揺がありありとわかった。

 どんなにふざけていても、怒りを覚えていても、夏奈に取っては、陸は姉弟なのだ。この世界でたった1人の肉親なのだ。

 その家族に武器を向けなくてはいけない。

 それがどれほど辛いか。

 どれほど胸を締め付けるだろうか。

 どうしようもなく心が、痛くて痛くてたまらない。

 きっと……。

「はっ、撃つなら撃てよ」

 陸はしかし、そんな夏奈の顔など見向きもせず、腰を沈め、戦闘態勢を取った。

「行くぞ、優人!」

「陸っ!」

 夏奈の絶叫。

 絶叫と共に、夏奈の頬を一筋の涙が零れ落ちた。

 それを見た途端、俺の中の何かが弾け飛んだ。

 コートを膨らませ、全力で駆け出す。

 頭の中が真っ白になる。

 気が付いた時には、俺は陸と優人の間に割って入っていた。

 陸を打つべく、平手を上げる。

 しかしその手は、簡単に陸に掴まれてしまった。

「何だ、この女?」

 手を掴まれながらも、俺は至近距離からきっと陸を睨み上げた。


「陸!お姉ちゃんを泣かせるような事はしないで!」


 その瞬間、陸が大きく目を見開く。

 真っ直ぐに俺の顔を凝視して固まる。

「離しなさい、陸!」

 俺は身をよじるが、陸の手は万力のようにびくともしない。

 陸が顔を近づけて来る。

「そ、奏士、なのか」

 俺は憤りに頬を赤くしながら、こくりと頷いた。

「何で、お前、女の格好してんだ……?」

 俺の顔にまじまじと見入る陸。

 使い手の集中力が途切れ、エシュリンの楔がその手の中から消え去った。

 その瞬間。

 みんなが同時に動く。

 優人が禍ツ魔獣に飛び掛かる。

 鈍い音と共に、俺の前にいた陸が忽然と姿を消した。

 代わりに、右ストレートを振り抜いた形の夏奈が立っていた。

 陸は……。

 いた!

 数メートル先の地面をバウンドしている。

「陸の……」

 夏奈の声が震える。

「陸の……」

 夏奈の全身から銀気が立ち上る。

「陸の、バァカァァァッ!」

 絶叫と共に、夏奈が飛び掛かった。

 倒れた陸の上に猛烈な勢いで着地する。

 地面がミシッと陥没した。

 夏奈は陸に馬乗りになると、猛然と陸を殴り付け始めた。

「陸のアホォォォッ!バカァァァ!死ね!」

「がはっ、ぼほぉ、ぐへっ」

 夏奈の絶叫と共に、凶悪な打撃音が響き渡った。

 めちゃくちゃに振り下ろされる夏奈の拳は、陸だけでなく周りの地面も打ち据える。

 夏奈だってブレイバーだ。身体能力は、俺の何倍もある。現に、夏奈の拳が着弾した地面には、べっこりとクレーターが出来上がっていた。

「陸のっ、バカバカバカバガハカァ!」

「がぼっ、ぐほっ、ちょ、やめ、どほっ、ゲフっ、夏っ、がひ」

 ……。

 陸は生きているのだろうか……。

 うん……。

 夏奈に任せよう。

 俺はそっと視線を外した。

 そして、今も浮き石を足場に、禍ツ魔獣に挑み掛かる優人を見上げた。



「茶番は終わりかな?」

 腕を組んだヴァンは上機嫌な口振りで優人に問う。

 対して優人に余裕はない。

 浮き石の間を飛び回りながら、禍ツ魔獣の攻撃を躱す。その立体的な挙動に、俺の目はついて行けない。

 禍ツ魔獣の背から、無数の触手が飛び出す。

 優人はそれをくぐり抜け、切り払い、前へ進んで行く。

 漆黒の巨腕が優人を捉える。

 しかし空中で身を翻した優人は、軽々と回避した。瞬間的に足元に展開したエシュリンの楔を、足場にしたのだ。

 俺はその華麗な舞を、地上から見上げることしかできない。

 陸との戦いを経て、優人はエシュリンの楔を使いこなし始めていた。

 優人……。

 優人が踏み込む。

 無数の触手をかいくぐる。

 優人が禍ツ魔獣の本体に迫る。

 腕組みをし、泰然と構えていたヴァンが姿勢を正し、虚空から赤の剣を抜いた。

 余裕が消えた。

 優人が足裏に銀の輝きを煌めかせ、空中を疾走する。

 優人が身を踊らせる。

「おのれ、人間。調子に乗るなっ」

 ヴァンの怒気をはらんだ低い声が響き、漆黒の鎧が中空に踊り出す。

 赤い一閃。

 しかし優人はそこにはいない。

 魔獣よりも高く飛んだ優人が、その眼前に飛び込んだ。

「うおおおおおっ!」

 膨れ上がったエシュリンの楔が巨大な剣の形を成す。

 そして、禍ツ魔獣の右頭部を切り裂いた。



 遺跡に大咆哮が響き渡る。

 顔を半分焼かれた禍ツ魔獣の苦痛と怒りの叫びだ。

 空気がびりびり震える。その振動で、遺跡が崩壊してしまいそうだった。

 強烈な一太刀を浴びせた優人が、すたっと俺たちのところに帰って来た。

「くそっ、さすがにガス欠だっ……」

 優人は苦しげに喘ぎ、片膝をついた。激しく肩で息をしている。

「優人……」

 俺が優人に駆け寄ろうとした瞬間。

「全く愚かだな。人間」

 ヴァンの冷たい声が頭上から降って来た。

「そんなに早く滅びたいのか。いいだろう。お前たちが望むなら、この小さな世界。旅立ちのための糧にしてくれよう」

 再び魔獣が咆哮を上げる。

 そして、純白の翼を羽ばたかせた。

「わっ」

 その強烈な風圧に、俺は思わず倒れてしまう。

「カナデ!」

 優人が慌てて駆け寄って来てくれる。

「な、なんなの?」

 夏奈が陸をボコる手を止めて、徐々に上昇し始めた禍ツ魔獣を見上げた。

 その巨体が、遺跡を押しのけ、崩し始める。進路上の邪魔な石柱が粉砕され、俺たちの上に降り注いだ。

「ヴァンが、黒騎士が逃げます!優人!追撃を!」

「馬鹿言え!」

 俺の言葉を無視し、優人が俺を押し倒した。そして俺の上に覆い被さる。

 降り注ぐ瓦礫が優人の鎧の背に当たり、軽い音を立てていた。

 くっ。

 ダメ、なのか。

 俺はきつく唇を噛み締める。

 逃げる、逃げられるのか。

 瓦礫と共に、白い羽が舞い落ちる。

 その羽だけは、信じられないほど綺麗に見えた。

じっと俺を守る優人の背中越しに、星が輝く夜空に溶けるように消えていく禍ツ魔獣と黒騎士を、俺はじっと睨み続けていた。


 区切りのいいところまでと、少しお話が長くなりました。

 長らく続いた戦いも一区切り。

 お話は、もう少し続きます。


 読んでいただき、ありがとうございました!

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