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雪色エトランゼ  作者:
第2部
112/115

Act:112

 非常灯が灯ったネオリコット号の後部貨物室に息をひそめる騎士たち。

 時折船体が激しく揺れる。

 その揺れに歯を食いしばって耐えながら、みんな、必死にその時を待っていた。

 俺も、手すりに掴まり体を固定しながら、ぎゅっと目を瞑っていた。隣のシリスが手を差し出して、俺を支えてくれている。

『塔接近!』

『なんと、これほど巨大とは!』

『上昇に入るわ。総員、注意してって、あー、もう!しつこい!』

 伝声管から伝わる操縦室のリコットたちの声には、焦燥と苛立ちが籠もっていた。

 また船体が激しく揺さぶられる。

 きゃっと唯が悲鳴をあげ、それをシズナさんが気遣う声が聞こえた。

 続いて、床が後方に傾斜し始めた。

 ネオリコット号が上昇しているのだ。

 俺たちは身を低くして、ぐっと耐える。

 ゴゴゴと唸る船体。

 金属製の壁の向こうを通過していく熱線の衝撃波が、ありありとわかってしまう。

『塔頂部接近!』

『み、みなさん。上陸に備えて下さい!』

 緊張したラウル君の声が響く。

 また、ビリビリと船体が軋んだ。

『リコット!左右から同時に来た!挟まれたよ!』

『っくうっ!』

 激しい振動。

 俺たちは息を殺してじっと耐えるしかない。

 そして。

 今までとは違う不規則な衝撃が、船体を駆け抜けた。続いてメキメキという破壊音が不吉に響き渡る。

 誰かが息を呑む。

 不安げに室内を見回す騎士もいた。

『被弾、被弾!』

『わっ、第1尾翼が!』

『っ!うっさいわよ、ラウル!』

 窓のない貨物室からでは、外の状況はわからない。

 俺は深く深く深呼吸する。

 早鐘のように打つ胸が張り裂けそうだった。

 リコットなら大丈夫。

 リコットは、禍ツ魔獣まで送り届けると言ってくれたんだ。

 きっと大丈夫だから……!

 船体が軋む。

 室内に響いていたエンジン音が、不規則になり始めた。

『リコット!』

『くっ。聞こえてる、ユウト、お嬢さま!塔につけるわ!天辺じゃないけど……。直ぐにハッチ開けるから、後はお願い!』

 その言葉と同時に、機関音の響きが変わった。

 ガタガタと軋む船体を、エンジンが強引に引っ張り上げている。そして、何かが船体にぶつかる乾いた音が、大きく響いた。

『着陸!』

『衝撃に……』

 聞こえたのは、そこまで。

 鼓膜の裂けるような甲高い衝撃音が、爆裂する。

 続いて激しい衝撃。

 数度、突き上げてくるような振動が繰り返し、俺たちは上下に激しく揺さぶられる。

「う、うううっ!」

 必死に耐える。

 シリスが上から覆い被さり、はね飛ばされそうになる俺の体をぎゅっと押さえてくれた。

 苦悶の呻きが聞こえる。

 衝撃で、負傷者が出てしまったのかもしれない……。

 ぎぎぎっと金属が擦れる音が響く。

 続く振動。

 接地した船体が滑っているんだ。

 そして、どんっという大きな衝撃を最後に、貨物室の中に静寂が戻った。

 シリスが顔を上げる。

 俺も顔を上げ、辺りを見回した。

 微かに機械が動く音が響き、後部貨物室の扉がゆっくりと開き始めた。

 光が射す。

 ネオリコット号の金属の床の向こうには、無機物とも有機物とも見分けのつかない材質の地面が広がっていた。複雑な紋様が刻まれた黒い地面。その紋様の中を、時折赤い光が走り抜けていく。

 これが、禍ツ魔獣の塔……!

「みんな!出ます!」

 俺は勢い良く立ち上がり、声を上げた。

 リコットは、見事に俺たちを運んでくれたのだ。

 次は、俺たちが戦う番だ!

「優人!陸!先行してドラゴン型の迎撃を!」

「わかった!」

 頷いた優人が、開ききらない扉をくぐり抜け、疾風の如く駆け出して行く。その後を、俺にぐいっと親指を立てた仮面の陸が続いた。

 ネオリコット号はドラゴン型に追われていたのだ。擱座し、動けなくなってしまっては、狙い撃ちにされてしまう。

「騎士のみんな!まずは、リコット号の周囲の安全を確保します!2個小隊で互いをカバーしながら、全包囲警戒!近づく魔獣は全て殲滅してください!」

 俺はぐるりと騎士たちを見回した。

「ここですべての決着が着きます。あなたの、私たちの大切な人々のために。大切な人たちが生きていく世界のために!戦って下さい!その剣で!勝利を切り開いて!」

「「応!!」」

 力強い騎士たちの声。

「行くぞ!」

「「了解!」」

 シリスが叫ぶ。騎士たちが応える。

 短く叫び、前を見据えたシリスの目が、銀に光った気がした。

 俺は、すっと息を吐いた。

 そして、剣の柄を握り締め、集中する。

「行け、行け!止まるな!」

 グラスが怒鳴る。

 騎士たちが鎧を鳴らし、気合の声と共に、黒い地に突撃して行く。

 そして俺も、リコット号を飛び出した。



 飛び出した先。吹き付けてくる風は、冷たかった。

 リコット号が着陸したのは、塔の頂上部から少し下。広場のようになった場所だった。黒い床面にリコット号が擦過した傷が残っていた。そして、中破した航空船。天駆ける美しい船体が煤け、歪んでいた。

 その向こう。見上げると、一段高くなった塔の頂上部に、輝く光の柱が立ち上っていた。

 その光の中に見える純白の翼。

 間違いない。

 あそこにいる。

 禍ツ魔獣……!

 振動。

 塔が震える。

 俺たちの前に、ドラゴン型に殴打された陸がざざっと滑って来た。

「陸、大丈夫ですか?」

「くそっ。さすがにウザい!」

 陸は吐き捨てると、2刀の光の剣を振り、再びドラゴン型に突撃する。

 俺たちの目の前では、3体のドラゴン型と優人、陸が、まるでもつれるように格闘戦を展開していた。

 ドラゴン型の巨体が跳ねる。優人の一撃で打ち倒される。しかし、その隙に迫ったもう1体の体当たりが、優人を吹き飛ばし、壁面に激突させた。

 その度に地響きが起こる。

「優人たちを援護します!」

「「了解!」」

 騎士たちの気合いの声に引きつけられるように、1体のドラゴン型が首を捻り、俺たちに向けて口を開く。そして咆哮した。

 空気がびりびりと震える。

 俺はその音圧に顔をしかめながら、とっさに退避方向を考えていた。

 熱線が来る!

 ドラゴン型はぐるぐる唸り、頭部の赤のラインを明滅させる。

 ……来ないのか?

 そうか!

 今俺たちが立っているのは、禍ツ魔獣の本拠地。

 その塔に損害を出す可能性のある高威力の熱線は、撃てないのだ。

 やはり、禍ツ魔獣は魔獣群を統制している……!

「5人来い!手前の1体を仕留める」

 シリスも、熱線が来ない事に気がついた様だ。

 国王陛下から借り受けたブレイブギアを抜き放ち、ドラゴン型に突撃する。

 シリスの手から伝わった銀気が、剣身を眩く輝かせた。

 迸る銀色の光が煌めく。

 その光がシリスの顔も照らし出す。

 聖なる剣。

 そんな形容が自然と浮かんだ。

 ぼうっとシリスを見つめていた私は、はっと我に帰る。

 パタパタと髪を跳ね上げて、頭を振った。

「グラス!反対側から回り込んで。レティシア、1個小隊でネオリコット号へ。上甲板のバリスタで援護射撃を!」

「了解です!」

 騎士たちが頷き、散会していく。

「カナデさん、私たちもユウトの援護に!」

「お願いします」

 シズナさんが抜剣し、低い姿勢でドラゴン型に向かっていく。

「よーし、行っちゃうよ!」

 俺の隣で片膝立ちになり、弓を構えた夏奈が、ギリギリと矢を引き絞った。

 ビシッと空気を震わし、放たれる銀閃。

 シリスたちに向かって長大な尾を振り下そうとしていたドラゴン型を、夏奈の矢が貫いた。

 天に向かって苦悶の咆哮を上げるドラゴン型。

 その隙を突いて、シリスの剣が翻る。

 ドラゴン型の尾が斬り飛ばされた。

 ……シリス、強い!

 たまらず横倒しになるドラゴン型。

「今だ!」

 グラスたち騎士が、ドラゴン型に殺到する。

 いずれも強い銀気の持ち主たちばかりだ。

 その一撃一撃が、ドラゴン型を削り取る。

「うおおおっ!」

 聖剣を振り被ったシリスが、ドラゴン型の頭部に飛び上がり、銀色の刃を振り下ろした。

 断末魔が上がる。

 同時に3つ。

 視線を転じると、空中で身をひるがえした優人が全身を乗せて光の剣を振り下ろした。

 ドラゴン型が、縦に両断されて行く。

 もう1体。

 夏奈の弓が足を貫き、シズナと禿頭さんが気を引く中、陸が2刀でドラゴン型の胸を十字に引き裂いていた。

 地響きが起こる。

 ドラゴン型の巨体が倒れた。

 俺は全身を固くしていた緊張を緩めて、ほっと息をついた。

「カナデさま!」

 それも一瞬。

 騎士の警告に振り返る。

「背後から小型魔獣群がっ!」

 塔の下部から、わらわらと小型魔獣が湧き出して来る。先行して来るのは、上下に機動力のある蜘蛛型だ。

 くっ!

 優人やシリスのところには、行かせない!

 俺は周りに待機していた騎士たちを見回し、剣を抜きはなった。

「あれは私たちで止めます!総員突撃!駆逐せよ!」

「「応!」」

 俺は剣を構え、走り出す。



「はっ、はっ、はっ」

 肩で息をする。

 そっと脇腹に手を当てた。

 ……痛い。

 唯に看てもらっているとはいえ、王都防衛戦で負った傷がまだ完治していないのだ。

「はっ、はっ、はっ……リロイ、損害は?」

「はっ。負傷者4。いずれも軽傷です」

「……わかりました」

 俺は頷き、剣を振ると、鞘に納めた。

 敵の第1波はなんとか防いだ。

 しかしここは敵陣中央。どれほどの魔獣が襲い掛かって来るかわからない。

 素早く移動し、禍ツ魔獣に向かわなければ……。

「陣形を整えて。直ぐに、敵陣中央に突撃します」

「はっ」

 駆けて行く騎士の背中を見送ってから、俺はシリスに合流した。

「グラス、進撃する。予定通り楔型陣形で、ブレイバーたちを守るぞ。禍ツ魔獣まで、少年たちにはこれ以上無駄な戦闘はさせない」

 シリスに対して、グラスがニヤリと笑った。

「了解です。少年少女に、少しぐらいは大人らしいところを見せなくては、ですね」

「その通りだ」

 シリスも不敵に笑い、俺を見た。

「カナデ。大丈夫か?」

「はい」

 俺の頭に伸びてくるシリスの手を、ばしっと叩いた。そして、レティシアに向き直る。

「レティシア。リコットたちの事、よろしくお願いします」

「……はい」

 沈痛な顔でレティシアが頷いた。

 彼女以下2個小隊はこの場に残り、ネオリコット号の護衛に当たる事になっている。

 船は、俺たちの大事な脱出手段だ。

 この作戦は、片道限りの特攻ではない。無事帰還できて、初めて作戦成功なんだ。

「大丈夫。みんなで帰還できますから」

「……はい。カナデさま。どうか、お気をつけ下さい」

 それでも俺の心配をしてくれるレティシアに、俺は少し照れたように微笑んだ。

「出発!」

 シリスの声が響いた。

 もう一度レティシアに頷く。そして、ちらりとネオリコット号を見た。

 少しだけ目を細める。

 ガラス張りの操縦室が見える。その向こうに、こちらを見つめる人影。

 ハインド主任とリコット、ラウル君が、こちらを見つめていた。

 ラウル君が大きく手を振っていた。

 俺も手を振り返す。

 ありがとう、みんな。

 どうか、気をつけて……。

 そして踵を返し前を向くと、既に進み始めている隊に追い付くべく俺は走った。

 優人たちの脇を抜けて、前方に向かう。

 優人が気遣わしげな目でこちらを見ていた。

「優人、大丈夫ですか!」

 俺は努めて明るく声を上げる。そして、ニコッと笑った。

 優人が少し驚いたように目を丸くして、疲れた様に大げさな溜め息をついた。

「カナデ、自分の心配しろ!」

「気を付けてね、カナデちゃん!」

 優人や唯やみんなに手を振り、俺は騎士たちに合流した。

 優人たちパーティの前面に、2個小隊が矢印型を作り、展開する。シリスが中央、グラスが右翼、そして俺が左翼につく。初めはこの陣形に異を唱えていた優人だが、俺がなんとか説得して納得してもらった。

 優人たちは切り札。

 禍ツ魔獣までは、なるべく消耗させる訳にはいかない。

 俺は鞘にかけた手に力を込めた。

 俺たちは走る。

 頂上の禍ツ魔獣を目指して。

 黒い塔は、ゴツゴツしていて走りにくかった。かと思えば、まるで磨き上げられた王城の床のようにツルツルしている箇所もあった。

 その全てに、複雑な紋様が刻まれている。時々その一部が赤く明滅していた。

 まるで、巨大な魔獣の体の上を進んでいるようで、気持ちのいいものではない。この風景をずっと見ていると、気が滅入りそうだ。

 風が吹き抜ける。

 冷たい風。

 ゴウっと巻いた風は、まるで近くで魔獣が咆哮を上げているようで、どきりとしてしまう。

 空を見上げる。

 天頂部には、透き通った夜闇が広がっていた。まばらに、星々が瞬いていた。

 開けた視界の向こうには、見渡す限り黒が蠢く大地と、遠く霞む山々の遠景。

 その山の上に、太陽の残光が照らす鮮やかな青が少しだけ残っていた。

 いつの間にか、日が沈んでいる……。

「魔獣!右からです!小型多数!」

 騎士が叫んだ。

 くっ、やはり来たか!

「ここは我らが!殿下、先へお進み下さい!」

 塔の下からわらわらと飛び上がって来る蜘蛛型に、右翼の騎士たちが剣を抜き放ち、突撃する。しかし俺たちは、進む足を止めない。

「任せたぞ、お前ら。終わったら、追いついて来い!」

「「了解!」」

 グラスが立ちふさがる蜘蛛型を斬り払い、吠えた。

 くっ。

 やり場のない怒りと、先を急がなければという焦燥に、胸が締め付けられる。

 彼らの脇をすり抜ける。

 立ち止まれないんだ。

 俺たちは、立ち止まっていられない……!

「殿下!後ろからも、魔獣が来たわ!」

 殿のシズナさんが叫んだ。

「走れ!進め!」

 シリスが叫ぶ。

「あああああっ!」

 俺は、目の前に向かって来た狼型を両断した。

「行かせない!」

 優人たちには!

「前方、グロウラー型多数、来ます!」

 騎士の悲鳴のような報告。

 地響きを上げて、複数のグロウラー型が進路前方から飛び出してきた。

「俺が行く!」

「みんな、援護を!」

 シリスが駆け、俺が続く。

 まだまだ先は見えない。



 俺たちは、螺旋階段のように続く足場を駆け上がっていた。下方からは、魔獣の唸りと騎士たちの咆哮が響いていた。激しい戦いが繰り広げられている。

 振り返りたくなる衝動を必死に抑え、俺は走り続けた。

「殿下、行ってください。カナデさま、あなたは、どうか殿下の側に」

 そう言って笑ったグラス。

 そして優しく頷いてくれた騎士たちが、今もグロウラー型を含む魔獣の大群を押し止めている。

 優人たちに先行するのは、ついに俺とシリスだけになってしまった。

 くっ……。

 みんなっ。

 今も戦っているみんな。

 この塔で。

 ネオリコット号の側で。

 王都で。

 世界中の街や村で。

 涙が滲む。

 でも、それを乱暴に拭い去る。 

 負けられない。

 絶対に!

 絶対に!

 俺はきっと前を睨みつけた。

 螺旋階段の先が開ける。

 星の世界の底が見えるような、青黒い空が覗いていた。

 俺たちは、勢い良くその空に向かって飛び出した。

 シリスが聖剣を構える。

 その背を守るように、俺も剣を構えた。

 眩しい……!

 目が眩む。

 地面から光が立ち上っているのか。

 凍てつくような冷たい風が吹き抜ける。

 髪が揺れる。

 光の中、眩しさに目を細めた俺の目の前に、はらりと1枚の羽が舞った。

 純白の羽。

 まるで雪のように、次から次へと降って来る。

 風に揺られ、はらはらと……。

 下からの光のせいで、その羽の影が、すっと上に向かって伸びていた。

 不思議な光景。

 幻想的で、思わずため息が出そうになる程美しかった。

 しかし、その奥。

 そこに、いた。

 俺たちの敵が。

 みんなの敵が!

 巨大な体躯は漆黒に染まり、鋭い牙が無数に並んだ咢が開かれる。頭部を走る幾つもの赤いラインが、眩い程の光を放っていた。太い腕。巨大な胴体。下半身は、太い管でまるで塔と繋がっているようだった。

 そして広がる一対の翼。

 本体とは対照的に、純白に輝いている。

 この舞い散る羽は、禍ツ魔獣のあの巨大な翼から散っているようだった。

 低く轟く唸り声。

 まるで塔全体が共鳴しているかのようだった。

 禍ツ魔獣が、ゆっくりと俺たちを睥睨する。

「カナデ」

 俺の隣に、優人が並んだ。

 陸が、夏奈が、唯が、そしてシズナさんが並ぶ。

「ここからは、俺たちの役目だな」

 優人が前を、禍ツ魔獣を睨みつけたまま、呟いた。

 俺はそっと頷く。

 でも……。

 どうか……みんな無事で……。

「行くぞ、みんな!」

 優人が走り出す。その手の中に光の剣が現れる。

「さあ、ラストバトルだぜ」

 陸が走り抜ける。

「援護するよ」

 夏奈が俺にウインクした。

 しかし、その前に。

 ガシャンと鎧を鳴らして、黒騎士が降りたった。

 優人たちが急停止した。

 膝をついた着地姿勢から、ゆっくりと身を起こす黒騎士。

 禍々しい鎧に、背筋に冷たいものが走り抜ける。

 面防の向こうで、赤い目がぎらりと輝いた。

「ヴァン!」

 俺は叫ぶ。

 シリスに目配せする。

 シリスが頷いてくれる。

 俺は剣を低く構え、シリスが聖剣を振り被り、突撃する。

 そのまま優人たちを追い越して、同時に黒騎士ヴァンに斬りかかった。

 ヴァンの手の中に現れた赤い剣が、シリスの銀色の剣身を受け止める。俺の一撃はヴァンの横腹に当たり、火花を飛ばす。しかしヴァンは、俺の方には、何の反応も示さない。

「行って、優人!ここは私たちがっ!」

 ヴァンが俺たちを振り払った。

 俺とシリスは間合いを取り、黒騎士を挟み込むように剣を構えた。

 優人たちが再び走り出す。

 すれ違う瞬間。

 俺は優人と頷き合う。


 後でな。


 また後で。


 黒騎士が優人たちに向き直る。そこにシリスが走り込み、再び斬撃を加えた。

 その背後から俺も斬りかかる。

「アネフェア……」

 黒騎士がぎろりとこちらを向いた。

「ヴァン」

 俺は微笑む。

「決着をつけましょう!」

 読んでいただき、ありがとうございました!

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[一言] めっちゃ突っ込んだのにネオリコット号まだ飛べるんだ!?
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