第5話
「孟獲どこに行くの?」
翌日俺と華陀は兄である孟節に会いに出発しようと朝早く城を出ようとしたところ俺に会いに来た祝融にばったり会った。
華陀はしまったといった表情をしている。
今日出かけるのはあくまでも病気であった俺が少し外の空気を吸うための気分転換で一部の重臣にしか話をしていない。
護衛もいないお忍びである。
さすがに次期南蛮王を兄である孟節にお願いするのであるから俺と華陀だけで行くのが良いと判断したからである。
なのにいきなり俺たちが孟節に会いにいくのを知らない祝融に出会ってしまった。
華陀は笑顔で祝融に
「これは、祝融様おはようございます。これから孟獲様と少し散歩に行くのですよ」
「散歩ですって?」
「はい、先日お話をさせていただいたと思いますが、今の孟獲様は記憶喪失と言う病気なのです。ですので記憶が戻るようにいろいろな場所に行ったり、いろいろな人と話すことで記憶が戻るやも知れないので……」
祝融は俺と華佗を交互に見て何か納得するように頷き
「でわ、あたしも行くわ」
「え!?」
この言葉を聞いた俺は華佗を見てどうするんだと小声で聞く
「わかりました。祝融様もご一緒しましよう」
いいのか一緒に行って。
俺が複雑そうな顔をしていると祝融が
「孟獲……あたしと一緒だと嫌なの?」
「いえ……そんなことはありません。ただ今の俺は記憶がないので祝融様に迷惑がかかると思いまして」
「祝融て呼び捨てにして、あと敬語もやめて」
俺の言葉に祝融は悲しそうな表情で訴える。
女の子を呼び捨てなんて俺の今までの人生の中でしたことがない。
それに会ってまだ2回のそれも今まであったことのない美しい女性に対して普通に話をするなんて俺には絶対無理なんですが。
そんなことを考えていると華陀が助け舟をしてくれた。
「祝融様。孟獲様も徐々に言葉遣いなの変わってくると思いますので今はご了承ください。変に強制させると病気が悪化するかもしれませんので」
「……わかったわ。でも孟獲お願いだから様だけはやめてほしいの。だって妻になる私に様は……」
先日華陀にいろいろと聞いたんだが祝融は俺の妻ではなく婚約者なのだ。
小さな頃から祝融は俺を慕っていたみたいで彼女が自分の親に頼みこんで俺と結婚したいと言っていたみたいだ。
彼女の親も俺との縁組にはかなり乗り気で俺の父孟駿にこの話をすると孟駿も賛成した。
彼女の父親はこの国の重臣であり孟駿も政治的にも良い縁組と判断したみたいだ。
そして俺は8歳にして婚約者ができた。
祝融はこの時6歳だ。
6歳の女の子の言葉に親たちがこの話に乗り気になるってどうなんだろうとこの話を聞いた現代っ子の俺は少し呆れてた。
現在俺が16歳で祝融は14歳で彼女が15歳の誕生日に結婚式をあげる予定のようだ。
「わかりました、様付はやめるように努力します。あと敬語も使わないようにしま……使わないようにするよ」
「じゃあ、名前を呼んで」
「……し、祝融」
俺は気合を入れて彼女の名前を言ったら彼女は満足そうに頷き俺に抱きついてきた。
「孟獲……」
ち、ちょっと、なななんで抱きつくんですか。
おおお、か、彼女のむ、む、胸が、オッパイの感触が……
「え~ 孟獲様、祝融様。お時間がもったいないのでそろそろ出発したいのですが」
祝融は華陀の存在に気づき頬を赤らめながら俺から離れた。
ニヤニヤしながら華陀は小声で
「あんな美人に好かれるなんて羨ましいよ」
「え、いや、その……」
華陀はどうやら俺をからかって楽しんでいるみたいだ。
「と、とにかく出発しよう」
こうして祝融を含めた俺たち3人は兄孟節が住む村に出発した。
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