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【完結】禁忌の赤目と嫌われた悪役王女様は奇妙な復讐をはじめました。  作者: あまNatu


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それからの日々

 そして迎えた結婚式。

 アビゲイルは美しい純白のドレスを身に纏っていた。

 正直な話、ドレスのデザインなどどういったものがいいのかわからず頭を抱えていたのだ、そんな時ふと頭をよぎったものがあったのだ。


「――綺麗だ、アビゲイル。……もしかしてそのドレスは」


「ええ。新生の神が身に纏っていたドレスをモチーフにしてみたの。……似合うかしら?」


「……とても。きっと喜んでいるだろうな」


 美しいあの女神には到底敵わないだろうけれど、グレイアムの言うとおり喜んでくれたのならこちらも嬉しい。


「さあ、行こう」


「…………ええ」


 グレイアムの手をとり歩み出す。

 たくさんの人に祝福されながら迎えた結婚式は、とても幸せなできごとだった。

 本当に愛する人と添い遂げるという誓いも、自分はこの人のものとなり、この人は自分のものになったのだという安心感も、全てがただ嬉しくて涙が止まらなかった。


「――アビゲイル・エレンディーレを生涯愛し抜くことを誓いますか?」


「――誓います」


「――グレイアム・ブラックローズを生涯愛し抜くことを誓いますか?」


「…………誓います」


 胸が痛い。

 幸せすぎて頭がどうにかなってしまいそうだ。

 何度も何度も涙を流しながらも無事終わった結婚式は、アビゲイルにとって忘れられないものとなった――。





 結婚式を終えてから、アビゲイルたちは学院に復学しそれぞれ勉学に励んだ。

 もちろんアビゲイルは学科を歴史に変えた。

 予想通りギーヴは小躍りして喜び、その姿に笑ってしまったほどだ。

 学院生活は順調で、アビゲイルは着実に知識をつけていった。

 やはり歴史の勉強は面白い。

 気づいたら何時間もギーヴと話し合っており、グレイアムが不機嫌になる程だった。

 学院といえばと、思い出したのはアリシアのことだ。

 どうやら彼女は逆ハーレムルートを諦め、ジョージと付き合うことにしたらしい。

 あれからもアリシアは己の力をフル活用し、聖女としての地位も確立しているらしく、なんだかんだ幸せそうだ。


「こうなったら自分自身の魅力で愛されまくってやるわ!」


 ある意味開き直ったアリシアは強く、たくさんの人々を救う姿はまさに聖女であった。

 そんな聖女を抱える国のトップとして、ヒューバートも成長した姿を見せてくれた。


「アビゲイル。その力、他言することを禁ずる。むやみに使うこともだ。……お前を守るためだ。我慢してくれ」


 まさかあのヒューバートからそんなことを言われるなんて思わなくて、たいそう驚いたものだ。

 だが元よりこの力を見せびらかすつもりなどなかったため、その提案にはすぐに頷いた。

 頼りないと思っていた兄は、今では立派な国王となっている。

 とはいえまだまだ若輩者で、時折母、カミラの力も借りているらしい。

 カミラとはなんともいえない距離感を保ってゆっくりとだが、関係値を築いている。

 ちなみにレオンとも同じように、微妙な距離感を保っているようだ。

 あそこも仲良くなれればいいのだが、こればかりは時間が必要だろう。

 だが時折アビゲイルやレオンに贈り物をしてくれている。

 それもあのカミラが自ら刺繍を施したものを。

 これにはさすがに驚いたし、少しだけ嬉しかった。

 嬉しかったといえば、まさかのことが起きた。

 あのフェンツェル国王オルフェウスが結婚したのだ。

 それも相手は――グレイアムの妹、ダイアナである。

 最初に話を聞いた時は頭の上に大量のハテナを浮かべたものだ。

 なぜなんの接点もない二人が結婚なんて話になるのかと驚いたが、どうやらアビゲイルの知らないところで出会っていたらしい。

 グレイアムが倒れたあの後、公爵家にオルフェウスが見舞いとして足を運んだらしく、その時にダイアナが一目惚れをしたようだ。

 オルフェウスとしても、エレンディーレと婚姻という形で絆を結べるのはありがたいと承諾したらしく、まさかまさかの親戚となることが決まった。


「本当はお兄様と離れるなんて嫌よ? ……でもあなたの話を新聞で読んで……私もできることをしないとって思ったのよ」


「わたしとしては、あなた方と家族になれるというのはとても心強いです。どうぞ末長くよろしくお願いしますね?」


 ね? になにやら力がこもっていた気もするが、気づかなかったことにしたい。

 まあとりあえず二人が幸せならいいかと、婚姻の準備を進めているのだが、その最中にオルフェウスから言われた言葉があった。


「イスカリ陛下は愛を貫いたようですね。……あなたをどうするべきか、本気で悩んでいたようでしたので、少し助言をしたんです。愛する人とともにいて、けれどその瞳に写らない人生を送るか。愛する人を手放して、少しでもその心に残る人生にするか。……あの人は後者を選んだんですね。ずいぶん人間らしくなったものです」


 イスカリとはあれから一度も会っていない。

 どうやらピストルの件でかなり世話になったらしく、ヒューバートが苦い顔をしていた。

 無事伯父は捕まり、正しい罰を受けたようだ。

 そしてそんなイスカリに、風のうわさで男児が生まれたと聞いた。

 母はメリアである、とも。


「願わくば、みんなが幸せでありますように――」


 復讐を目指していた女は、もうここにはいない。

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