表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】禁忌の赤目と嫌われた悪役王女様は奇妙な復讐をはじめました。  作者: あまNatu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/157

寵愛を得て

 イスカリから出された命令のおかげか、ほかの妃に会いに行けというランカのお小言は減った。

 そのかわり……。


「いいですか? アビゲイル様は陛下のお妃様です。陛下との間にお子を成すのが、人生をかけたお仕事だとお思いください。一にも二にもまずは陛下です」


「残念ながら興味ないわ。きっと陛下もね」


「そのようなことございません!」


 どうやらイスカリがアビゲイルに会いにきたということが、ランカの中で大きかったようだ。

 彼女はアビゲイルを主人と認め、今までのような態度は改めたらしい。

 だがその代わりにアビゲイルにイスカリの寵愛を得るようにと、口酸っぱく言ってくるのだ。


「陛下があのように急に妃様をお尋ねになることなど、今までほとんどございませんでした! ですからアビゲイル様は陛下がご寵愛を授けるにふさわしいかたなのです」


「あの人はただ面白いおもちゃが手に入ったから、それを見にきただけよ」


「そこをアビゲイル様の魅力で魅了し、ご寵愛を得なくては……!」


「無理よ」


「無理ではありません!」


 先ほどからこのやりとりの繰り返しだ。

 アビゲイルはイスカリの寵愛など微塵も興味がないというのに、侍女頭という立場だからかランカのお小言は止まらない。

 とにかく主人に力をつけてほしいと、あれこれ言ってくる。


「普通あのような態度をとれば、陛下は間違いなく剣を向けてこられます。だというのにアビゲイル様にはあのように寛大で……。これはすごいことなのですよ!?」


「寛大、ねぇ……」


 アビゲイルがあのような態度をとっても許されているのは、ただ特別な力があるからだけだ。

 イスカリがアビゲイルを見る瞳に宿るのは好奇心のみで、そこに艶めいたものは一切ない。

 だというのに妃の勤めを果たせなんて……。


「とにかく、寵愛なんて私には無理よ。ほかの妃のほうがすごいんでしょう?」


 イスカリの寵愛はそっちに向いているのではないのか。

 アビゲイルからの問いに、ランカはむぐっと口をつぐんだ。


「……確かに第一妃ウェンディ様は陛下と共にする回数も多いですが……残念ながらまだお子がいらっしゃいません。ほかの妃様もそうです」


「……そう」


「だからこそ! アビゲイル様がお子を成せば、国母となれるんですよ!?」


 国母だなんだに興味はないのに。

 周りだけが盛り上がるというのは、正直めんどくさいものだ。

 はぁ、と大きめなため息をついたアビゲイルに、ランカはギラリとした瞳を向けた。


「アビゲイル様がそのような態度だったとしても、陛下と距離をとるなど不可能です」


「できるわ。こうやって部屋にこもっていれば……」


「それができないと言ってるんです」


 ランカは首を振ってアビゲイルの考えを否定する。


「明後日、アビゲイル様の歓迎会が開かれます。そこには参加しなければなりません」


「歓迎会? ……はっ、馬鹿馬鹿しい。出ないわよ、そんなもの」


「不可能です」


 ランカは人差し指を立てると、力説してくる。


「そのようなこと陛下がお許しになるはずがありません。あの陛下ですよ? 衛兵にでも命じて、無理矢理にでも連れていかれるに決まっています」


「……そこまでする?」


「します。アビゲイル様は主役なんですよ? その主役がこないなんて、あの陛下が許されるわけがありません」


 確かに言われてみればそうだ。

 アビゲイルが主役のパーティーで、そのアビゲイルが顔を見せないなんてあのイスカリが許すわけがない。

 ありとあらゆる手を使い、アビゲイルを会場に連れて行く姿が容易に想像できた。


「……つまり行かなきゃだめ、と?」


「もちろんです。たとえ着飾っていない姿であろうとも、簀巻きにして連れていかれるに決まっています」


「…………」


 その姿も簡単に想像できてしまったため、結局は行かなくてはダメなのだと察した。

 せっかくほかの妃と顔を合わせなくてすむと思っていたのに。


「……もしかしてそこもわかってて、わざとパーティーなんて開くのかしら……?」


 可能性はある。

 あのイスカリのことだから、嫌がるアビゲイルを見てニヤけるつもりなのかもしれない。


「…………それは癪ね」


 アビゲイルはふむ、と腕を組む。

 どうせ妃たちの前に出ざるをおえないのなら、下にみられるような行動は避けたい。

 下手に絡まれるのが一番面倒だからだ。


「――ランカ」


「はい?」


 ならやることはひとつだ。

 アビゲイルは立ち上がると、衣装などが置かれている部屋のほうへと足を進める。


「パーティーの準備をするわよ」


「――アビゲイル様! ついにご寵愛を得ようと……!」


「それは興味ないわ」


 エレンディーレから持ってきた数多のドレスを見ながら、アビゲイルは不敵に笑う。


「興味があるのは妃たちよ。……どうせやるなら徹底的にしたほうが、今後下手に絡まれることもないでしょう」


「…………かしこまりました。陛下を魅了するほど、美しくいたします!」


「話聞いてた? 私は……」


「陛下を魅了できるほど美しければ、ほかの妃様たちに文句を言われることはありません!」


「…………好きにして」


 結局ランカとは話が合わないらしい。

 まあやる気を出してくれたからいいかと、アビゲイルはドレスを眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ