閑話 ニーニャとエターナルホープ★
ニーニャは自室にある自家製のインゴットを用いて、工房でブロードソードの錬成に勤しんでいた。
鉄の塊であるインゴットをレンガで出来た釜の中に放り込むと、目を瞑り声を発した。
「錬成!」
釜の中で炎が発生し、インゴッドがみるみるうちに変形し、刃の形を成す。
彼女はそれを見届けると、水に浸し舐め回すように刀身を確認する。
「全然違う……。もっとレイスのは……なんていうか猛々しく力強い印象を受けたわ。見たの一回だけだけど……。ムキーッ! もう最悪! なんであの剣売れちゃうのよ! 狙ってたのに! 信じられない! ハァ……」
彼女はその場に散らばっているレンガに狙いをさだめると、出来たばかりの刀身を勢い良く突き立てる。
突き立てた瞬間、刀身は衝撃に耐えかねてポキリと折れてしまった。
「レイスみたいに凄い鍛冶師になりたいなぁ。美人で優しくて鍛冶師として超一流、おまけにおっぱいもでかいとか反則よねぇ。頼もうにもあの人の前に出ると恥ずかしくなって素直になれないのよねぇ」
『だい……ぶ……きっ……るよ』
「ッ!? 誰!? 誰かいるの!? 気のせい?」
『違うよ。気のせいぢゃないよ』
「ひ!? 何!? 誰!? どこから!?」
『ネックレスだよ! あたちだよ! あたち~!!』
「キィエアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! ネネネネ、ネックレスがシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?!」
誰もいない工房にニーニャの叫び声が木霊する。
『うわ~、うるちゃい~。せっかく励ましてあげようと思ったのに~』
「あんた何者!?」
『あたちはね? ガネーシャって言うんだ。よろちくね~』
「ガネーシャ!? っていうか夢じゃない!? 現実!? キエアアアアアアアアアアアア!!!」
『あ~、もう、ちずかにちて~。ほら温かい温かい』
ネックレスの赤い宝石が光ると、ニーニャはすぐに静かになった。
「なにこれ? 凄いなんか穏やかな気持ち」
『うんうん。そっちの方が良いよ~』
「で、結局あなたは何者なのよ!」
『うん? あたちはガネーシャだって言ってるじゃん』
「そうじゃない! なんでネックレスから声がするの!?」
『だって、あたちこのネックレスに宿ってるもん。レイスがこれ作った時に、あたち生まれたの』
「なによそれ!? どういう事!?」
『知らな~い。あたち一昨日生まれたばっかりだもん。あ! でも、あたちの能力はわかるよ! あたちを付けてると温かくなってね! そいでね、ちあわせになれるよ!』
「もう何なのよー! 意味わかんないー! 誰か通訳呼んでー!」
『うるちゃい~』
ニーニャのヒステリックな声が工房中に響き渡るのだった。




