表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/398

迷宮の魔物

「いけるのであれば……進むべきだな」


 その雪斗の言葉で、降りることに決定。雪斗達は警戒しながら歩みを進め、階段を下りきった。


「ひとまず、周囲に魔物はいないが……」


 呟きながら雪斗達は進む。既にマッピングはされているので、変化がないかなどを確認していく。


「リュシール、問題はないか?」

「ひとまず構造は変わっていないわね。なおかつ罠の類いもなさそう」

「油断はするなよ……しかし、今回の迷宮はずいぶんとおとなしいな」


 雪斗は周囲を見回す。邪竜との戦いに際し、迷宮に関する歴史についても調べた。基本的にどの迷宮の主も一層目から魔物を待機させ、侵入者を阻むのが常だった。

 しかし、今回は違う。


「これは迷宮の主が穏当なのか、それとも眠っているのか」

「個人的には後者だと思うわ」


 と、リュシールは呟いた。


「魔物が生まれているのは事実みたいだけど、それが自然と発生したものっぽいし」

「自然発生ってしたっけ?」


 首を傾げ問い掛けたのはナディ。リュシールはそれに「もちろん」と答え、


「地上でも魔物は発生するでしょう? 迷宮に『魔紅玉』があればこの迷宮内でも発生する」

「もし眠っていたら、下手すると勝手に出現した魔物に襲われるんじゃない?」

「その可能性も否定はしないけれど……『魔紅玉』の影響によって魔物が出現しているから、たぶん攻撃できないみたいな制約があるのではないかしら」

「生態系については不明だったかしら」

「さすがにそこまで調べる余裕はないわね」


 リュシールが声を上げた直後、雪斗は立ち止まる。視線の先には三層目へ続く階段が。


「リュシール……これは……」

「ええ、そうね」


 他の仲間達も厳しい視線を投げる。全員わかっていた。どうやら魔物がいないのはここまでらしい。


「……先に進んで調べて見る?」

「それをやるにしても、結界を構築してからだな」


 ナディの疑問に雪斗は答え、


「リュシール、準備を始めてくれ。今日は調査だし、ここで結界を張ったら戻るとしよう。焦る必要はない」

「そうね。けど今回は調子がよさそうよね。二層目までフリーパスだし」

「どうだろうな。魔物で埋め尽くされているのなら殺意むき出しでわかりやすいが、目の前の状況は何を考えているのかわからなくて気味が悪いくらいだ」

「同感だな」


 雪斗の言葉に続いたのはディーン卿。


「邪竜との戦いはそれこそ物量的な戦いだった。圧倒的な戦力差によりこちらは窮地に立たされたわけだが……戦い方そのものは、そう複雑ではなかった」

「迷宮内に罠とかはあったけどね……で、今回はこれまでとは異なる状況だ。迷宮のことを調べてほぼ魔物で埋めるやり方が基本的な戦術はずだが、今回はそれがない――」


 雪斗がそこまで述べた直後、階段の下から魔物の唸り声が聞こえてきた。結界の準備を進めるリュシールやイーフィスを除き戦闘態勢に入る。


「魔力を感じて相手側も警戒し始めたか」

「私達の魔力を感知したのでしょうね」


 リュシールはそう告げると、雪斗へ首を向ける。


「結界構築には時間が必要よ」

「なら俺達が時間を稼ぐ……とはいえさすがに階段の上では戦いにくい。一時的に下へ行かないと」


 仲間達へ視線を送る。全員がついていく意思を示している。


「なら、行くとしようか。たださすがにリュシール達の護衛がゼロというわけにはいかない。誰が残る?」

「私が残るわ」


 と、ナディが手を上げた。


「階段の上でも戦えるようにはしてあるし、心配しないで」

「……なぜそんな訓練をしたんだ?」

「いや、必要かなーと思って」

「どんな訓練だったか少し気になるけど……まあいい。それなら他の面々で下へ赴き迎撃する。いいな?」


 問い掛けに全員が了承し、雪斗達は下へと向かう。唸り声が近くなり、さらに周囲の魔力も徐々に濃くなっていく。

 そして三層目に突入し――真正面に一頭の狼が見えた。


 ただし、その大きさは通常の狼と比べ二回り以上は大きい。加え、その周囲にはスケルトンらしき魔物が複数体。地上にいる個体ならば強さはそれほどでもないはずだが、この迷宮内にいればその限りではない。


「魔力の質はまあまあか……全員、行くぞ!」


 雪斗が声を張り上げた直後、魔物達が一斉に向かってくる。それに最初迎え撃ったのは、シェリスだった。

 霊具を起動させた瞬間、真正面にリュシールが構築するような結界が生まれる。階段周辺を覆うような形状であり、スケルトン達はそれを見て急ブレーキを掛けたが、狼は突っ走る。


 直後、両者が激突。結界は軋んだ音を上げたが――無傷。


「シェリス、いけそうだな」

「ええ。それじゃあディーン卿」

「うむ」


 声に応じたディーン卿は刃を拡散する。それはシェリスの結界を透過し、突撃した狼を直撃。切り刻んでいく。

 そこへスケルトンがやってくる。結界に一閃したのだが、やはりシェリスの結界は傷つかない。ただし、


「威力はかなり高いようね」

「さすがに迷宮の魔物だ。そう甘くはないか」


 雪斗が応じた直後、ディーン卿に続きゼルが刃を放つ。それはスケルトンへとヒットし、大いにたじろがせた。


「ダイン、まだ出るなよ……さすがにこれだけじゃないはずだ」

「真打ち登場はまだ先か?」


 軽口を叩くダインに雪斗は「そうだな」と律儀に帰した後、


「周囲からも気配を感じるな……リュシールが結界を構築するまでの時間稼ぎだ。ナディが護衛についているが、ここで押し留めよう」

「この面子でも、そのくらいはできないとね」


 シェリスの指摘に雪斗は「まったくだ」と応じ、


「シェリスはひとまず結界を維持してくれ。しばらくはディーン卿達の攻撃で魔物を迎撃したいが――」


 刹那、後方からグオオオ、という野太い声が聞こえた。


「どうやら本命が来たらしい……シェリス、大丈夫か?」

「私は防衛でいいの?」

「階段周辺は固めないとまずいだろ。ディーン卿達はシェリスの援護を。で、ダインが俺の援護で」

「本命を戦う際の露払いをしてくれと……一応訊いておくが、このままシェリスの結界に閉じこもって戦う方法は?」

「結界越しに感じる気配からわかるだろ? 迷宮の敵の中で厄介な能力……結界の破壊能力を持っている雰囲気だ」


 ――リュシールが時間を掛けて構築するものならば問題ないが、どれだけ強固な結界を張っても対応できないような能力を持つ敵も存在する。だからこそ、邪竜との戦いでも大きな被害が出た。


「俺とダインはそれを阻む……というわけで、動くぞ」

「了解」


 軽快な言葉と共に雪斗達は動き出す――迷宮内の戦いが、本格的に始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ