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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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贈り物

「――人類の敵と語ったが、場合によって私は人類の救世主となるだろう」


 本来ならニュースが報道されているスタジオで、邪神はカメラを前にしてそう語る――カメラの向こう側では、多数の人間が困惑しているに違いなかった。


「人類の敵、と言ったが私は従う者達に対しては相応の報酬を与える。今日、ここに来たのは人類に選択をつきつけるためだ……新たな秩序を形成するために私と手を組むか、それとも今の秩序を守るために戦うのか。先に言っておくが対話の可能性はない。私は人とは違う、言わば魔物に近しい存在だ。話し合いが通じるのは人間同士だけ。私には刃向かうか従うかの二択しかないことは、憶えておけ」


 そう告げると、邪神は両手を左右に広げた。その手が一瞬にして光ると、閃光がスタジオを満たした。

 数秒も経たない時間で光が消えると、邪神の両端には小さな黒い竜と、光り輝く樹木が形成されていた。


「これを手品だとかCGだと解釈して無視するのもまた選択だ……私は人間の意見を否定はしない。だが、これを現実と認めることができなければ、今後は生き残れないとだけ警告しておこう」


 そう述べた瞬間、竜が動き出した。カメラには映っていないが、この場に残っていた者達が悲鳴を上げる声が聞こえてくる。

 だが邪神はそんな様子に構うことなく、話を続ける。


「私の出自くらいは話せる時間はあるか……そうだな、この世界の小説などには異世界転生というジャンルが存在するだろう? 私は言わば、この世界に転生してきた存在、と言うべきか」


 ――その言葉に、映像を見ている人間は何を思ったか。邪神自身見ることはできないが、嘲笑されてもおかしくない話だとは感じていた。


「しかし転生したのは人間ではなく、邪神というわけだ……私はこの世界で覇権を得るべく今まで暗躍していた。そして、この私の力で蹂躙できる手はずを整え、実行に移した。それが光り輝く樹木……魔導樹と呼称するものを生み出した」


 邪神の目が怪しく輝く。


「詳しい説明は省くが、魔導樹を用いることによって、私はこの世界において圧倒できる力を得ることができる……魔物は銃火器すらもロクに通用しないだろう? これからこの世界は生まれ変わる。私の力による新しい秩序によって、全てが変わる」


 そう言った邪神だが、ここで笑みを収めた。


「力を得たいのであれば、私に従え。従順な姿勢を見せれば、望む物を与えよう。だがもしそれが虚偽と分かれば、容赦はしない。この世界では倫理的に許されない手法を用いてでも、報復をしてやろう」


 と、ここで邪神は再び笑みを見せた。


「脅すのはこのくらいにしておくか……さて、もう残る時間は少ないだろう。次で最後のメッセージだ……今まで私は語ってきたが、君達は人間にもう残された手段はないのか? いや、これは私にとって不本意だが、この世界には私に対抗できる存在がいる。今現在もこの映像を見て、対策を練っていることだろう」


 そう語る邪神の視線は――明確な殺気を帯びる。


「魔導樹による恩恵もそうした存在は受けているはずで、私と同様の力で対抗する……およそ三十名ほどの人間だ。彼らは私がいた世界に招かれ、私と戦い世界を救った者達だ。まさしく、この世界に存在する異世界転移ものの物語、そのものだな」


 そう語り再び口の端を歪ませるが――目は笑っていなかった。


「彼らは世界を救い、この世界に戻ってきた……では、彼らが私を招き寄せたか、あるいは何か縁を辿ってきたのか? これについては否、と答えておこう。経緯は語らないが、彼らに過失は一切ない……これは彼らも知らない事実だが、この世界には元々、私のような存在を招こうとした人間がいた。それによって、招かれたという話だ」


 邪神は再び笑みを消した。次いでじっとカメラに視線を合わせ、


「人間達よ、私か彼らか……どちらにつくか選べ。もし彼らにつくというのなら、死を持って私は応えることになるだろう。だが彼らが勝利したのであれば、古い世界に新たな秩序が切り開かれる。これ以上にない博打だが、せめて楽しく自分の命を賭けてみろ」


 そして邪神は――眼光をさらに鋭くし、


「――この映像を見ているな? 黒白の勇者。そちらは隠れながら私達の居場所を探しているだろうが、そろそろ私と共に表舞台に出てきてもらおう」


 気配が――スタジオ内の空気が変わる。もし魔力を見通すことができる人間ならば、映像越しでもその殺気に恐れ慄いたかもしれない。


「今、この場で名を告げることはできるがそれでは面白くない。君とその仲間にはしかるべき場で、名を告げるべきだ。故に、私は舞台を用意した。これはある種、私からの贈り物だ……是非、受け取ってくれ」


 そう告げた邪神は、最後に再び笑みを見せた。


「そろそろ時間のようだ……では人間達、ここから始まる戦いを一片たりとも見逃すな」


 その瞬間、邪神は通信遮断されたのを察し――あまりに一方的な演説は、幕を下ろしたのだった。


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