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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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力の代償

 ユキト達が動き出したのと同時刻に、カイもまた邪竜ととあるホテルの一室で話をしていた。


「どうやら、ユキト達は魔物対策に乗り出し、ある程度成果を上げているようだ」


 カイは邪竜――リュオへ向けそう口を開いた。


「魔物が出現したポイントに魔法を利用し使い魔を配置。それと魔物とを戦わせているようだ」

「なるほど、賢いな」


 リュオは冷静にカイの言葉を受け止める。


「各地に魔物が出現した際、どう動くのか色々と予想していたが……どうやら最善手を用いたようだ」

「事前に色々と準備をしていたのも大きいだろうね。彼らが魔力樹を利用した拠点で何をしているのか不明だが、備えをしていたのは間違いない」

「……ひとまず、魔物により混乱する可能性は低くなったか」

「いずれ、日本以外にも影響が及ぶ。そうなったら、ユキト達も対応に迫られる」


 カイが言うとリュオは「かもしれん」と同意し、


「現状、国外に干渉する手段はないだろう。強引に事を起こせば国際問題に発展する以上、さすがに奴らも無茶はするまい」

「実際に被害が出ない限り動くことはないだろうね……さて、僕らにとれる選択は二つだ」


 そうカイは述べるとリュオへ視線と重ねる。


「このまま静観して、ユキト達が右往左往するのを待つ。もう一つは――」

「元々の計画を遂行する、だな」


 リュオの言葉にカイは頷いた。


「そうだね……どちらの選択をとる?」

「そちらは何か考えがあるのか?」

「僕はどちらでも良いとは思うけれどね……ユキト達の行動を待って動くのも今の状況だとアリだとは思う」

「時間が経てば魔物がさらに増える……奴らはさらなる対応に迫られる、というわけか」

「ああ、それを待って行動に移しても遅くはない……計画はいずれ遂行する。それが今なのか、さらなる混乱を待ってからなのか、という選択なわけだが――」

「時間が経てばこちらが有利になるかどうかは、賭けだな」


 カイの言葉を遮るようにリュオは発言した。


「我は奴らがどれだけの予想を覆してきたのかを理解している。故に、時間が我らの味方をしている、と決めつけるのはまずいだろう」

「つまり、僕らの予想……その範囲外の行動を起こす可能性があると」

「そのように心構えをしておくべきだろう」

「ならば、すぐに行動するべきだな。幸い僕らは既に準備を整えている」


 カイの言葉にリュオは一度頷いた――が、


「しかし、賽が投げられれば最早逃げ道はなくなる。可能な限り奴らの動きに備え準備はしてきたが、今真正面から戦えばどうなるか」

「僕自身、一度ユキトには勝てた。けれど、それがもう一度繰り返すことができるとは思わない方がいいだろうね」


 そこでカイ達は沈黙する――両者ともわかっている。どのタイミングで計画を始めたとして、リスクが存在すると。

 ただし、計画を実行に移す時期によってリスクを抑えることができる。問題はそれが今なのか、それとも後なのか。


「リュオ、確認だけれど政治的にユキト達の動きを妨害することはできないのかい?」

「……政財界に多少なりとも影響を与えることはできる。しかし、それはこちらの動きを明らかにしてしまう可能性が高い。というより、支援者を介して干渉する以上、その動きが怪しまれたらこちらの居所すらもつかむかもしれない」

「なるほど、ね……なら、当初の予定通りの行動をとるとしようか」

「支援者達はどうする?」

「まだ動くべきではないよ……少なくとも、ユキト達に対抗できる力を得るまでは」


 その言葉にリュオは押し黙る。そこでカイは、


「彼らに力を与えている……が、ユキト達に対抗できるほどの力を付与するというわけではなさそうだな」

「……魔神の力だ。与えすぎれば人の身を捨てることになる」

「以前ならば、そんなことを考慮することはなかったと思うけれど」

「この世界と元の世界とでは、違う……向こうには魔神という存在が認知され、力に魅せられ信奉者となるだけの理由を得ることができた。しかし、この世界に魔神という概念は元々がない。何も知らない、というだけで多量に力を与えれば、それこそ体自体が消滅しかねない」

「それ、支援者には伝えているのか?」

「伝えていない……さすがに無茶をすれば体が崩壊する、などと語れば味方など得られなかっただろう。とはいえ、支援者には力を用意する。魔力を発する樹木が生まれた今ならば、やりようはあるだろう」

「わかった……話を戻すけれど、どちらの選択をとる? すぐに動くか、様子を見るか」

「……そちらは、何かしら答えを持っているのか?」


 問い返したリュオに対しカイは、


「まあ、ね。もちろんリスクは承知の上だが」

「いいだろう、ならばそちらの意向に沿うとしよう。こちらも、それまでに可能な限り奴らの対抗手段を構築する」

「わかった……とはいえ、その時間はないかもしれないよ」


 カイの言葉にリュオは目を細め――やがて小さく頷いた。


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