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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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新たな霊具

 休憩後、エリカとイズミは作業を再開した。そこでユキトは作業そのものをイズミに任せ、別の部屋を訪れる。

 そこは魔法に関する研究室のような部屋であり、中にツカサがいて作業をしていた。


「ん、ユキトか。イズミ達はいいのか?」

「ああ、魔力の知覚はできて今は霊具の検証をしている」

「ずいぶんとペースが早いな」

「そうだな。とりあえずイズミが探り探りやりながら後はエリカ次第じゃないかな」

「彼女の方は大丈夫なのか?」

「体調面については考慮しつつ、イズミも慎重にやっているよ。何かあればすぐに中断すると思う」

「初めて知覚するものだからな、どういう影響が出るかわからない。色々と注意はすべきだろうな」


 ツカサの言葉にユキトは頷きつつ、


「それでツカサは何をしているんだ?」

「霊具の検証だ。霊脈の魔力を利用できるようになっているため、霊具の作成などについても色々とできるようになった」


 そう述べるとツカサは近くのテーブルに目を向けた。そこにはいくつもの霊具と思しき物が置かれていた。


「現状、政府組織の建物で作成していた霊具を改良、あるいは新規に作成する方向で作業を進めている」

「新たな霊具か……」

「魔力が潤沢な分、以前よりも強力な霊具を作成できる。もし凶悪な魔物が出現しても対応できるくらいには」


 その言葉にユキトとしてはありがたいと思う。だが同時に、


「凶悪な魔物か……」

「カイや邪竜の手によって生み出された魔物であれば、凶悪な……それこそ、俺達が迷宮で戦ったような魔物が出現してもおかしくはない」


 指摘にユキトは頷く。


「そうだな……あらゆる可能性を想定して準備はしておくべきか。ただ、今以上に強力な霊具を運用するとなったら、政府側がどう思うか」

「ならこの場所に強力な霊具は温存し、いざという時のために使うという形にするか」

「そういうやり方もあるか……だけど、その場合は運用する霊具が二つになるし、大変じゃないか?」


 ユキトの疑問にツカサは「なんとかなるだろう」と応じる。


「俺達であれば霊具はすぐに使いこなせる。ただより強力なものは扱い方に注意が必要であるため、そちらの方を優先して訓練を施すような形にする必要はありそうだな」


 ツカサの頭の中では新たな霊具作成の方針を次々と考えている様子。この様子では自分の声は聞こえないだろう、とユキトは思い「頑張ってくれ」と声を掛けて部屋を出た。

 途端、暇になってしまった。ユキトとしてはツカサの作業で何か手伝えるものがあればと思っていたのだが、目論見は外れてしまった。


「さて、どうするか……家に帰ってもいいけど」


 ただ、エリカを残してというのはとも考え、とりあえず食堂でゆっくりとするかと決断。そのまま廊下を進む。

 食堂では幾人もの仲間がいて、談笑をする姿もあった。ここに入ることができる人数は一クラス分ほどの人数であるため、広い食堂に全員が集まったとしても余裕で入る。


「これが埋まる日があったらそれはそれで面倒だけどな……」


 もしもの場合に備えて構築した建物だが、これが実際にフル活用される日があるとすれば――それは魔物が出現し、なおかつ危機的な状況に陥ったということを意味している。


「カイ……そして邪竜……」


 ユキトはこの建物を作成するという段階となって以降、仲間達の様子なども逐一伺っていた。新たな拠点ということで皆がそちらに注力したことで、カイが裏切ったというショックから抜け出せた者もいる。

 拠点作成は、精神面でリフレッシュする効果もあった――が、もしカイと相対した時、仲間達はどうするのか。


「どれだけ魔物を倒すことができても、カイを倒すことができなかったら……カイの能力ならば、俺達を覆すことだって可能だろう」


 それに、邪竜という存在が不確定要素を増している――ユキト達は確かに邪竜を倒した。間違いなくその時と比べて力は弱まっているはず。

 だが、果たして邪竜は行動を開始してどれだけの時間が経過しているのか――協力者もいることを踏まえれば、魔力樹もあるため現在進行形で邪竜はさらに力を高めていると考えて間違いない。


「……その姿を捉えることができればいいんだけど」


 この作業中もカイや邪竜の居所については調べている。だが、尻尾をつかむことすらできていない。

 魔力樹の発生により、索敵が難しくなっているという点も要因ではある。とはいえ、邪竜が力を高めているのであれば、さすがにユキト達も把握はできるはず。


「現状、まだまだ邪竜は力を得られていない……とは思うけど、最悪の可能性を考慮して最大限準備をしていく……ひとまず、拠点を作成したことで対応策だって以前よりも構築できる」


 そして魔物の発生について、残り時間は少ない――おそらく遠くない内に戦いが始まるだろう。ユキトは改めてそうした予感を抱き、僅かな不安が胸の中に満ちた――


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