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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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いつかは通る道

 ユキト、ツカサ、そしてイズミの三人はそれぞれ意見を提示した。そこで次に発言したのはユキト。


「……イズミは、今後のことを踏まえてもここで素人……というか一般の人が霊具を扱えるようにするため、ノウハウを蓄積する必要があると考えたか」

「うん、魔物が出てくる以上は、霊具を今後扱うことは避けられない……政府関係者、治安を維持する人達にそれを指導する必要があるわけだけど、それよりも先に事情を知っている人が戦いたいと言い出した……検証、という点においてはまたとない機会じゃないかな」

「エリカを検証に使うという点はちょっと引っ掛かるけど……彼女にそういった旨を伝え、ちゃんと了承してもらうのならば……だな」


 ユキトの言葉にイズミとツカサの二人は頷く。


「それじゃあ、エリカにはそういう風に伝えるよ……ただ、組織の建物に連れてくるにしても、万全の態勢をとった状態じゃないといけないか」

「検証するなら、魔力の流れなんかをきちんと精査できる環境を整えないといけないね」


 イズミが言う。ユキトは彼女へ目を向け、


「魔力の流れそのものをちゃんと解析できる状態じゃないと。今後のことを考えると、色々なデータは持っておきたい」

「この組織の建物では難しいのか?」

「分析できる器具とかは霊具として作成はできるよ。魔力樹を活用すれば、設備は整えられる。元々、霊具作成を優先にしていて色々と後回しにしている部分もあったから。エリカさんが戦うというのなら、ちゃんと一から調べた方がいいよ」


 そこまで言うと、イズミは部屋を見回す――その仕草は、部屋というよりは組織の建物のことを考えたのかもしれない。


「それと、この建物内でやるのは……」

「難しい、か?」

「分析するのに霊具を用いることになるけど、それなりに大がかりなものになる……私が想定する規模を用意するとなったら……部屋とかに霊具を仕込んだりしないといけないんだけど……ここでそれをやるのは――」

「リスクもあると……そもそもここは町中だし」

「そうだね」

「なら、本格的な分析をするにはどうするんだ?」

「……ソラナが率先してやっている、新たな拠点とか」


(そこに行き着くか)


 エリアスは胸中で呟きつつ、イズミの言葉に頷いた。


「わかった……なら、エリカが戦う術を手に入れるためには、まず拠点作成を優先すべき、ということだな」

「思った以上に時間は必要なさそうだし、とりあえずそれでいこうか……ツカサはどう思う?」

「それで構わない」


 イズミとツカサの返答を聞き、ユキトはまとめるように告げる。


「わかった、エリカには戦う手段を得るにしても時間が掛かると伝えておく……夏休みくらいまでには完成すると言っていたが、問題はないか?」

「うん、そのスケジュールで問題ないよ」

「なら、そこまで待ってくれと話しておく。予定が変更次第、すぐに連絡をくれ――」






 ユキトは話し合いの後、エリカに電話で連絡をとり、事情を話して待ってもらうことにした。彼女としてはすぐにでも活動したかったようだが、さすがに「仕方がないね」と引き下がることとなった。


『あのさ、ユキト……カイはその間に動くのかな?』


 彼女は懸念を尋ねた。事情を把握しているのであれば、不安に思うのは当然だった。


「正直、断定したことは一つも言えないけど……敵は表立って動いているわけじゃない。当面の間は比較的安全だと思っているよ。けれど、次にカイが動き出した時は――何か、大きな出来事が待っている」

『大きな出来事……それは魔物の存在がバレたりとか?』

「ああ、そして多くの人々にとってその時こそ、戦いが始まることを意味する……まだまだ準備が足りないため、俺達は可能な限り準備を進めている。エリカもそこは認識しておいてくれ……場合によっては、霊具の訓練をする暇がなくなるかも」

『うん、わかった……そういう場合、私も戦いに参加するの?』

「いや、残念ながら……最大の障害は戦闘経験をどう積むかだが、その点についても対策そのものは今からやろうとしている」

『……私のことでずいぶんと負担を掛けているね』

「いつかは通る道だったんだ。それが早いか遅いかの違いくらい……むしろ、事情を把握しているエリカに相手なら、俺達としてもやりやすい」

『そっか』

「……エリカ、覚悟は決まっていると思うけど、一つだけ言わせて欲しい」

『うん』

「カイは異世界で間違いなく英雄だった……その彼が邪竜と手を組んだ以上、何が起こるかわからない……エリカにとってもショックな出来事だってあるかもしれない」


 この言葉にエリカは頷いた。覚悟を持っている――力強い表情に対し、これ以上言葉はいらないとユキトは思った。


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