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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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無念感

 幾度となく魔物生成に関する作業を繰り返し、いつの間にか時刻は昼を迎えた。そこで一度組織へ戻ることになり、コンビニで買ってきた昼食を会議室で食べながら、話をすることにした。


「ソラナ、午後も作業は続けるのか?」


 ユキトが問うとサンドイッチを頬張るソラナは頷いた。


「そうか、俺としては今回の作業、価値のあるものだと考えているし、望むところだけど無理に進めなくてもいいからな。あくまで作業は安全かつ慎重に頼む」


 そこまで語った時、ソラナはサンドイッチを飲み込み、ペットボトルの水を一口飲んでから応じる。


「うん、わかった……でもそれだと今日中にできるかは微妙だけど」

「それでも構わないさ。何も一日で全てをやり遂げる必要はない。もちろん、カイや邪竜の動きは気になるし、早くした方がいいけど、自分達がしでかしたことで魔物が出現しました、ではさすがにまずいし」


 ユキトの言葉にソラナは食事を進めながら静かに頷いた。そこで、


(……この三人は……)


 ふいにユキトはカイのことが頭に浮かんだ。それは――裏切った彼に対し何を思っているのか。

 カイが邪竜と手を組んだことで大きな混乱が生じた。結果、立て直しに多くの仲間は奔走していたが、カイが裏切ったことに対しどう考えているのか。そこについては尋ねる暇がなかったし、ユキト自身怖くて聞けなかった面もある。

 けれど、落ち着いた様子のソラナ達を見て、


「――あのさ」


 ユキトは少し躊躇いながらも切り出した。


「三人はカイが邪竜と手を組んだことについて、どう考えている?」


 人によっては「カイは邪竜に操られているのでは」などという推測だって誰かの口から出そうではあるが――最初に口を開いたのは、イズミ。


「正直、驚きはあったけど衝撃はそんなに大きくなかったかな」

「……どういうことだ?」

「予想していたわけではもちろんないよ。でも、かといって絶対にあり得ないことが起きた、なんて言うこともない」

「何か、兆候でもあったのか?」

「そういうわけじゃないけど……ただ、記憶を取り戻して以降、組織内で仕事を続ける間に幾度となく顔を合わせた結果、何か考えているなとは思っていた」


 彼女は思うところがあったらしい――と、次に発言したのはソラナだった。


「私は、あまりに唐突な出来事だったからビックリしたけど……でも、話を聞く限りカイの心の中には支配という感情が宿っていた……こうなることは必然だった、というのは少しして受け入れたよ」

「イズミやソラナはそこまでショックを受けてはいないみたいだな……スイハはどうだ?」

「私は同じ聖剣所持者として、カイが残した記憶に触れたこともある……もちろん野心とか支配とか、そういうものが宿っているわけじゃなかったし、何より人々のために戦うという気概は確かに存在していたから、ただただ驚いた。でも、一緒に戦ってきた仲間とは違うから、衝撃は少なかったよ」

「そっか……」

「ユキトはどう?」


 スイハが問い返すと、ユキトは少し間を置いてから話し始めた。


「正直、戦っている最中に語られて半信半疑だったこともあった。でも、それが真実だったことに気付いた時、愕然としながら同時に何も気付くことができなかったという事実は、少しばかり無念感は残るかな」

「自分が対処できていれば、ということ?」

「あるいは決戦の際に俺が勝てていれば……邪竜だけが残されている状態であれば、これほど騒動にはならなかった、というのを考えると……」

「一人で背負う必要はないと思う」


 ユキトの発言に対し、極めて冷静な声でスイハは応じる。


「私達は共に戦う仲間……頼りないところだってあるかもしれないけど、いざとい時は遠慮なく声を掛けてくれればいいし、ユキトばかりに責任を負わせることはない」

「……そうか」


 そう答えたユキトは、スイハ達へ改めて告げる。


「カイとの戦いは熾烈を極めるだろう。もしかすると邪竜と戦うよりも遙かに大変かもしれない……カイと邪竜が同時に出てくるだけでも、俺達にとっては厳しい戦いになる。でも、その厳しい戦いを乗り越えるために、俺は今以上に強くならなければいけない……今回の件、よろしく頼む」

「任せて」


 頼られていることで、ソラナは元気よく返事を行う。イズミやスイハは頷き、手を貸すという意思表示をした。

 やがて昼食を終え、ユキト達は再度山へ向かうことに。転移魔法陣を利用して最初に出現した魔力樹の近くまで戻ってくる。


「ソラナ、続きを頼む……昼食時にも言ったが、安全かつ慎重に頼むぞ」

「わかった。ここからは色々と趣向を変えて作業を進めることにする。どんな魔物が現れるかさらに調べて、ユキトが望むような魔物を生み出すための準備を進めようか」


 彼女の発言を受け、ユキトは「頼む」と短く告げ――作業が始まった。


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