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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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未知の問題

「しかし、今話した内容はあくまで三級霊具……つまり、等級としては低い物を扱うための訓練にすぎない。そこから先は、未知数だ」


 ツカサの言葉にユキトは頷きつつ、


「俺達が指導するのは、日々訓練を行っている人間だが……それでも、キツいか?」

「霊具の扱いについては体が丈夫な方がいいとは思うが、魔力の扱いは体を鍛えてもどうにもならないからな」

「そうか……となると、俺達以外に霊具を扱うことができるのは――」

「一応、手がないわけでもない。ただ、強引であるため危険なやり方だ」


 その発言を受け、ユキトは眉をひそめる。


「何かあるのか?」

「魔力を無理矢理付与して、体に馴染ませるという手法がある」


 それは――と、詳細をユキトが訊こうとする前に、ツカサは話し始める。


「この世界には魔力が満ちているが、多くの人は認識していない……それを魔法で無理矢理認識させることで、魔力を体に認識させる」

「危険そうではあるな」

「ああ、間違いない。無理矢理魔力を注ぐわけだから、体に負担も掛かるし……加えてその手法自体、俺達は試したことがない。あくまで、そういったやり方がある、と邪竜との戦いで書物を読んだに過ぎない」


 ツカサは厳しい表情で告げる。内容からして、実行に移すことが困難であることは理解できた。


「実際問題、体にどういった影響があるのかもわからないため、俺としてはやりたくない」

「となると、霊具を使うことができるようになるまでは、年単位掛かる可能性が高いと」

「現時点の情報では……ただし、邪竜側は話が別だ」


 と、ツカサはさらに語っていく。


「ユキト、以前邪竜の配下となった男性と遭遇したことがあるだろう」

「……ああ」

「あの力は間違いなく、魔力を注いだ結果だろう……まだ魔力樹なんてものが形成されていない状況下で、力を有していた。それを踏まえると、邪竜は配下に力を与えているのは確定だ」

「つまり、邪竜は魔力を注いで霊具を扱えるようにする手段を持っている……」

「その通りだ。そうして配下を増やすこともできることを考えると、相手は魔物だけでなく霊具使いを増やすことができる……これは敵にとってアドバンテージだ」

「深刻な話ではあるが……ただ、誰彼構わず力を与えているわけではないよな。それをすると当然、俺達にバレる」


 ユキトはそう推測すると、ツカサは「そうだ」と同意した。


「邪竜は力を付与している人間を厳選しているだろう。だからこそ、現時点まで俺達は見つけられていない。その一方で、力を示し勧誘することはできる。魔法を用いれば他者に話さないよう処置をすることはできるため、情報が漏れる可能性は低い」


 つまり、そうやって味方を増やし――しかも、邪竜の下にはカイがいることを踏まえると、


「カイは政府要人とも会っていた。味方に引き入れることができる人間も算段が付いているかもしれない」


 やはり状況は深刻――霊具を得て戦力的に強化はされている。間違いなく現状では、ユキト達の方が戦力的に上回っていることは間違いない。

 カイと邪竜の存在は気になるが、仮に決戦となればおそらく勝利できるほどの戦力差がある――だが、情報戦という観点では負けている。いずれ来る魔物の襲来に備えることはできているが、カイ達の動向を抑え込むことはできていない。


「……正直、邪竜側につく人間を止めることは難しい」


 ユキトは言う。ツカサに加えてオウキとスイハもそれには同意した様子。


「邪竜もいたずらに力を与える人間を増やすといったこともしないだろう……相手はとにかく尻尾をつかませないようにしている。ただ、相手はいくらでも味方に引き入れることができる……魔法を用いた情報戦については負けないだろうけど、少しずつその状況が覆されていくだろう」

「私達は、すぐにでも動かなければ不利になる」


 スイハが呟く。


「でも、魔物が出ることが確定している以上は……」

「正直、一クラス分の霊具使いでは手も足も足りないな。でも、現状ではこの戦力でやるしかない……あとは霊具を持たないながら、俺達の味方をしてくれる人を探すことも考えた方がいいか?」


 ユキトはそこで思い浮かべた人物がいる。自身の叔父だ。警察官の彼のことについては説明はしているし、こうした事態となってしまったため事情を知る人物として協力を仰ぐという考えもあったのだが――


「そこは政府側の見解を待つしかない」


 次に発言したのは、オウキ。


「ボクらが独自に動けば、政府の信用もなくすからね……ただ、果たして結論が出るのかという疑問はある」

「その点についても、後手に回ってしまう要因ではあるな」

「ボクとしては結論を先延ばしにしないようお願いしているのだけれど……あまりにも未知の問題であり、なおかつ前代未聞の話だ。邪竜が動き出すまで、具体的な結論が出る可能性は……」


 そこから先は言わなかった。部屋の中は重い空気に包まれたが――それを打ち破るように、声が響いた。


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