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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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混沌の世界

 ――テレビで流れるニュースは、ある時を境に突如出現した魔力樹の報道に切り替わった。遠くから見れば他の樹木を遙かに超える巨大な姿に、発光している。この世界では起こりうるはずのない不可思議な現象に、テレビ視聴者やインターネットは沸きに沸いた。


『大木は夜でも輝き続け、異様な光景を見せています』


 ヘリコプターによってカメラが魔力樹を空撮し、同乗するリポーターが説明を行う。今は何が起こったのか不明である以上、各局報道しているが実のある情報は皆無であった。

 緊急で呼ばれたであろう植物学者が番組上でコメントをする。突如姿を現した、という点でどういう植物なのかわからない、今後調査しなければならないという風に語り、インターネット上では様々な憶測が拡散され、何が正しい情報なのかもわからない有様だった。


 それに対する政府の動きは迅速だった。ユキト達、組織と協力しているが故に事態をすぐに把握し、どう対策をするかすぐさま動き始めた。しかし、どうやって説明すべきなのか対応に苦慮した。まさか魔法や魔力のことを話すわけにもいかない――というより、政府の公式発表であったとしても、信じてもらえるかどうかわからない。


 しかし、魔力樹が発した魔力によって、間違いなく魔物が出現する。よって政府は各報道局に樹木へ近づかないよう通達した。だが報道機関は反発し、結果としてヘリによる空撮が行われている。


 一方で、摩訶不思議な話ではあるが天災というわけではないため通常通りの番組構成でバラエティを流している放送局もある――これらの状況は、まさしく混沌だった。全てを知る人間からすれば災厄だと断言できるが、普通の人々はそう認識していない。ユキト達はどうすべきか考えたが、さすがに上空にいるヘリに干渉することは困難であり、ニュースは流れるままに放置するほかなかった。


 そうした中で、魔力樹は光り輝いている。夜にニュース番組をやっている報道局はいくつも出現した魔力樹を撮影し続け、リポートを続けていた。


『光は青白く、まるでLEDライトのようにも見えますが、木々に電線が巻き付いているわけでもなく、周辺に電源などがあるようには見受けられません、樹木自体が発光しているとして、どのようなメカニズムなのか――』


 ――ユキト達はこの時点で帰宅していた。夜の内に行動するというのは危険であり、なおかつカイが裏切ったことで動揺が広がり、一晩間を開けようということになったのだ。それに、魔力樹が調査に入るとしても翌日になる。となれば、動くにしてもそのタイミングでいいだろうというのが見解だった。

 魔物が出現するにしても、さすがに魔力樹が発生した直後はないだろうという楽観的な考えもあって、ユキトは自分がいた現場の上空でリポートするニュースを自室で眺めていた。


 カイは今、何をしているのか――ユキトはこれからどうなるのかという不安と共に、どのような戦略を用いるのか、思案する。


(カイを追うのが正解なのか? それとも、国と結びつきを強くして、対応力を確保するのが先なのか?)


 後者だとしても、具体的にどうやるのが正解なのか――そもそも組織に所属する国の人間と折衝していたのはカイだった。その彼がいなくなっている以上、国とのやりとりが円滑に進むとも限らない。

 現在時点で国からの連絡はない。というより、初動対応に忙しくユキト達の所まで話が回ってきていない。


「たぶん報道を止めるよう連絡していると思うんだけど……」


 と、ここで画面が切り替わった。それはどうやら魔力樹がある山近くの道路。街灯もロクにない山を抜ける国道に、幾人もの記者や撮影クルーがいる様子だった。


「……人よけの対策とかすべきだったか?」


 おそらく魔物はまだ現れていないはずだが、ここまで多くの人が動いているとなったら――しかし魔力樹は断続的に発生している。今、報道されているこの場所を抑え込んでも、別の場所で撮影をするだろう。

 もはやユキト達だけでは止めることができない――間違いなくこれから魔力、魔法という存在が知れ渡る。だがその前に間違いなく魔物が発生する。


 魔物は凶悪で、本能的に人を襲う。凶暴性は動物などよりも遙かに高く、視界に人がいれば迷わず向かってくる――魔力樹が発する力の大きさから、ツカサは「少なくとも一ヶ月以内に魔物が大量発生する」と語っていた。それまでになんとかして、対策をしなければならない。


 だが、現実問題ユキト達だけでは――それに乗じて計略を施すであろうカイ達から止めるべきか。思考が堂々巡りをする中で、ユキトは道路の上でリポートする男性キャスターに目を向ける。

 その時だった。画面の奥にある森に、赤い光が見えた。どうやらその場にいるスタッフも気付いたか、画面外にいる誰かが声を上げた。


 それを見た瞬間、ユキトは背筋がゾクリとなった。その光は――考える間に、赤い光が森から飛び出した。


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