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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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奇妙な場所

 カイから仕事を言い渡された週末、学校が休みの日にユキトは当該の場所へ赴いた。装備はディルを用いた黒衣であり、ちゃんと目立たぬように立ち回っている。


「この周辺に異常の原因があるはずだ。ディル、どうだ?」

『それっぽい場所はあるね』


 ユキトの頭の中にディルの声が響く。


『ただ、気配というか魔力が地面に下にまで広がっている感じ』

「そこは観測した通り、地底へ繋がる何かがあるのか……洞窟とかかな?」

『あんまりこの世界に洞窟とか、イメージが湧かないね』

「結構、調査されていない洞窟というのはあるみたいだぞ」


 ユキトはディルとやりとりを交わしながら異常の原因へと向かっていく。

 やがて、辿り着いた先にあったのは――洞窟。森の一角にぽっかりと空いた姿に、ディルは感嘆の声を漏らす。


『おお、本当に洞窟だ。私有地ということで見つからなかったのかな――』

「……いや、少し妙だぞ」


 ユキトは小さく呟く。それにディルは反応し、


『ん? どういうこと?』

「洞窟……放置されているとなったら周囲には落ち葉が堆積していたりしているはず……だけど、ここはずいぶんと綺麗だ」


 ――ユキトが指摘するとおり、洞窟の入口はまるで清掃でもされているかのように綺麗だった。


「ディルの言うように私有地で誰にも見つかっていないのだとしたら、この綺麗さは異常だ」

『確かに……それじゃあどういうこと?』

「可能性としては二つ。一つは最近調査が行われた洞窟……といっても、調査する人が入口周辺を掃除するのか、という疑問が出てくるけど」

『落ち葉が堆積していて滑るかも、ということなら少しくらいはやるかもしれないけど……ここまで綺麗だと、確かに妙だね』

「なら、もう一つの可能性……この洞窟は、最近できた」

『最近……できた?』

「誰かの手によって作為的に……とはいっても、入口はかなり大きい。この穴を馬鹿正直に掘るなんてことをするのは、普通の人には無理だ。スコップなんかでやろうにも大変だし、重機なんかを使ったのならそうした形跡があるはずだ」


 しかし重機などを持ち込んだ形跡などはなく、洞窟の入口は人力で掘ったにしてはあまりにも自然過ぎた。


『つまり、普通のやり方ではあり得ない……魔法ってことか』

「掘削の魔法は俺達が召喚された世界にあった。そうした魔法を邪竜の配下が用いた、ということなのかもしれない」

『……何のために?』

「そこは今から調査をしないといけない……まずはディル。入口から魔力を探ってみてくれ」

『了解』


 告げると共に、ユキトもまた洞窟内の気配を探る。結果、すぐに洞窟の異常性を認識した。


「……ずいぶんと深いな」

『うん、それこそ……地底の奥底まで繋がっているように思える』

「魔法で作られた洞窟……かつ、この奥から気配もあるから魔物がいるってことだろうな」

『そこはたぶん間違いないと思う……入るの?』

「……ひとまず連絡をとろう」


 ユキトはそう呟くとスマホを取りだした。私有地ではあるが、国道からそれほど離れてはいないため、電波は通じている。

 電話を掛けると、カイが出た。ユキトは調査について報告すると、


『そうか……ユキトはどうする?』

「とりあえず中に入って調べてみようとは思う。状況によってはもう一度報告をするよ」

『わかった。気をつけて』


 ユキトはそれで通話を切り、洞窟入口へ歩み寄る。


「外からでもわかるくらいに、魔力がある……ただ、広さは底が見えないくらいだな」

『洞窟の規模、相当だよね?』

「ああ。しばらくの間下り坂が続いて、広い空間に繋がっている……そのずいぶん下に気配がある。地底の奥深くまで続いている……」


 ユキトは暗闇に足を踏み出す。同時に魔法を行使して、明かりを生み出す。

 洞窟は非常にしっかりしており、崩れるような気配はまったくない。入口もそうであったが、ここまでくると間違いなく魔法であることは明瞭――何も知らない人が見たら、あまりにも異質であり恐怖するかもしれない。


 そして入口から進めば進むほど、奥の気配が濃くなっていく。まるで、ユキト達を誘っているようであり――


「……洞窟内がどうなっているかの構造を確認して、一度戻った方がいいかもしれないな」

『魔物が多数いたら面倒だね』

「ああ、複数体……群れを作っているとしたら、ちゃんと準備をした方がいいな」

『今のユキトならどうにかなりそうだけど』

「いけなくもないとは思うけど、無茶をするなとカイから釘を刺されているからな」

『そうだね』


 ディルは同意、ユキトはその返事に苦笑しつつ、なおも奥へと進んでいく。

 ユキトはそこでスマホを取りだした。洞窟内ではさすがに電波は届いておらず、連絡手段は魔法しかない。


「ここで魔法を使って連絡が取れるか試してみるか」


 そうユキトが呟いた時だった。真正面から――これまで以上の濃厚な魔力が漂ってきた。


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