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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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波形異常

「すまない、急に呼び出してしまって」


 顔を合わせた際、開口一番にカイは告げる。

 場所はカイが通う学校の近くに存在するカフェ。放課後であり、外には帰宅しようとする制服姿の学生がいる。


 ユキトは昼休みに連絡を受けてカイと会うこととなった。ライブ会場における戦いから組織の建物で幾度となく顔を合わせているため、別段久しぶりというわけではない。


「いや、大丈夫だけど……どうしたんだ?」


 けれど今回、カイが顔を合わせたいという要請の際に少なからず緊張している様子であることが電話越しに伝わってきた。ここまで態度を露わにすることは珍しいとユキトは思ったため、今日は急ぎ足でここまで来た。


「邪竜に何か動きが?」

「ああ……とはいえ、現時点で確証はない」


 カイは言うと共に鞄の中から資料を取りだした。


「いくつか魔力によって邪竜の居所を調査する手法を開発しているのはユキトも知っているはずだ。その中で特殊な魔力の波形を観測するタイプのもので引っ掛かった」

「魔物の仕業ではなく?」

「魔物に関する動きが主因であることは間違いない。最大の問題は、その場所がどうやら地下である点と、何よりライブ会場で発生した魔物発生の際に観測した波形と似た動きをしていることだ」


 その言葉でユキトはカイが緊張している理由を把握した。


「つまり……地上ではなく、地下のどこかで魔物が多数発生していると?」

「あくまでの可能性の話だ。魔物の姿を目撃できたわけではない」


 カイの言葉にユキトは眼光を鋭くする――もし魔物が大量発生していたとしたら、由々しき事態である。


「組織内で該当する場所を重点的に調べたのだけれど、元々霊脈が存在している地点で、魔物が発生しているのか魔力の流れなのか見分けがつかない」

「でも、波形そのものは異常を示していると」

「ああ。通常の魔力の動きでは起こらない挙動をしている……ただ」


 と、カイは難しい顔をする。


「魔力を観測し始めたのはつい最近の話だ。まだまだデータそのものが足りないし、異常だと思えた今回の事象も数ヶ月、あるいは年単位の観測では誤差程度の変化かもしれないけれど」

「……でも、現時点で違和感があるんだろ? なら、調査した方がいい」


 ユキトの言葉にカイは小さく頷く。


「場所は……ここだ」


 カイは述べながらスマホをユキトへ見せる。地図アプリを起動させているようで、具体的な位置と住所が表示されている。


「山奥……調べたところ私有地になっている」

「一応確認だけど、入るための許可は取っているのか?」


 カイは首を左右に振る――なるほどと、ユキトは理解する。


「私有地であることもそんな表情をしている理由か」

「本当なら外部から綿密に調査できればいいんだけどね……でも、現時点での技術ではできていないし、それが改善される目処は立っていない」

「なら、直接確認しないといけない……忍び込むみたいで申し訳ないけど、やるしかなさそうだな」

「……何かあれば、国側がフォローすると言ってくれている」

「騒動にならないよう立ち回るよ」


 ユキトとしても、決して良い話でないことは理解できている。魔物が大量発生しているかもしれないという事実もあるし、何より人の土地に立ち入ることもまずい。

 だが――ユキトとしてはここで発生している出来事を見逃せば、大惨事に陥るかもしれない。そういう可能性を踏まえれば、行動するのもやむなしか、と考えている。


「今回の件は、申し訳ないけれど誰にも話していない」


 カイはさらにそう述べる。


「私有地であるため一応立ち入る許可を取るように動いてはいる……ただ、それを悠長に待っていては遅いかもしれない」

「だから早急に調査して……というわけか。許可は得られそうなのか?」

「管理者とは連絡が取れているよ。地質調査というこ名目で話をすることになっている……組織の人が連絡したところ、とりあえず理解はしてくれたみたいだからいずれ許可は得られると思う」

「後追いで許可がとれたらそれでいい……というわけじゃないが、俺としても心持ちはスッキリするな」

「すまない、こんなことを頼んで」


 カイは謝罪する。それにユキトは首を左右に振りつつ、


「……ほら、異世界での戦いも俺はカイの指示を受けて色々仕事していたし」

「それはそうなんだが……」

「仲間に喋っていないようなこともあるわけだが……まあ、こういう役回りもないとね」

「カイ自身は釈然としていないみたいだけど」

「そういう考えは持っているべきだと思う」


 カイの言葉にユキトは頷きつつ、


「わかった……とりあえず該当場所には週末にでも行ってみるよ」

「ああ、頼む」

「カイはその日、組織にいるのか?」

「うん、作業をしていると思うから何かあれば連絡を」

「ああ」


 ユキトは応じ――話し合いは終了し、店を出た。


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