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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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過ぎゆく時間

 ライブそのものは大成功の内に終了し、ユキト達は無事に帰還。怪我人もなく、魔物も全て対処したため、邪竜の攻撃は失敗に終わった――はずだった。

 ユキトとしては結局敵の目的がわからないため、実はその裏で何かやっていたのでは、という推測をしていたのだが、防衛の方に回っていた仲間からの報告では、異常はなしとのことだった。


「……邪竜は、実験をしているのかもしれない」


 作戦から数日後、ユキト達は放課後に話をするため組織の建物に集まった。

 この日はメイも建物を訪れ、会議に参加する――メンバーはユキトとカイ、そしてメイとツカサ。他の面々はなおも作戦時の検証を進めており、何か新しいことがわかればすぐに報告が来るとのこと。


 そうした中でカイは先の発言をした。


「正直、僕の友人を狙って仕掛けるという意図は不明だ。ただ、あえて狙いを付けて魔物を生成する……挑発行為ではあるけれど、魔物の生成に指向を持たせるなど、色々とやり方を検証している可能性は高い」

「こちらが動くよう焦らしているとか?」


 発言したのはメイ。彼女は一度ユキト達を見回し、


「カイの友人や私を狙うことで……私達が動くことを狙っている?」

「その可能性もある。もっとも、僕らを動かして何をするつもりなのかというところは疑問だけれど」


 肩をすくめるカイ――結局、邪竜の目的がわからないためどこまでも推測することしかできない。


「今後も動きがないか検証する。ライブ会場についてもそうだけど、町の周辺など、邪竜が仕込みをしていた場所は重点的に調べていくことにする」

「仕掛けがあった場所に、何かあると?」

「かもしれない……とにかく、情報集めをしなければ」


 カイの言葉にユキト達は一斉に頷く――着々と戦力的には強化できている。霊具も作成し、魔法の研究も進んでいる。

 盤石な態勢になりつつあるが、それでも邪竜の動きが不明なままである以上、後手に回るしかないためどれだけ準備をしても足りないかもしれない――そういう状況がユキト達を不安にさせる。


 とはいえ――縮こまっているわけにはいかない。ユキトは口を開く。


「今はとにかく、やれることをやらないと」

「そうだね」


 カイは同意しつつ、頷いた。ただその表情にどこか陰があるように感じたため、


「……何か気になることが?」


 問いにカイはユキトを見返した。それは戸惑っているようにも、あるいは驚いているようにも見えた。


「……僕の態度が気になるかい?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、なんだか考え込んでいるようにも見えて」


 ユキトの返答にカイは「そうか」と応じ、


「邪竜の動きについてだけれど、僕の頭の中にはいくつか可能性が浮かんでいる。だが、確証は持てないし、情報集めを優先したい」

「そっか……その邪竜の動きというのは、異世界で戦った時の経験か?」

「うん、邪竜の動きを読もうとヤツの動きを色々と調べたからね……結果として戦略を読み切って戦えた戦場もあった。僕なりに持っている情報を活用して、次の一手を読みたいところだ」

「無理はするなよ」

「大丈夫。ユキトやメイの負担を比べれば、ずっと楽だよ」


 微笑を浮かべるカイ。その表情にもやはりどこか陰があるように見えたのだが、ユキトはカイがそう言うのなら、ということで頷いた。


「何かあったら相談してくれ」

「うん……メイ、今後は何か少しでも異変を感じたら連絡を。僕らの中で一番色んな場所へ赴くのはメイだ。自分の周辺で何か起これば、それが邪竜の仕業……つまり、次の一手かもしれない」

「わかった」

「……色々と負担を強いるようで申し訳ないけど」

「大丈夫、ありがとう」


 メイは笑い、それに応じるようにカイも笑う――そんな様子を見てユキトは大丈夫だと心の中で呟いた。






 そして――邪竜の動向を探りつつ、ライブ会場での戦い以降は平穏が続いた。

 結局、派手な動きはライブ会場で起きた一回だけであり、そこからどうやら邪竜は潜伏しているらしい。


 ユキト達はどうにか糸口を見つけようとするが、結局徒労に終わる――カイの言うとおり実験だったかもしれないと結論づけると同時に、もし次に動くとすればさらに派手に、という可能性もあり、より魔力による観測について強化する方針をとることとなった。

 それはイズミやタカオミ、ツカサといった面々が率先して動くことに。戦力面の強化も日が経つごとに進んでおり、邪竜とその配下との差は大きなものになっているだろう、という見解をカイは述べた。


 そしてカイは独自に動いているらしい――ということを仲間の一人から聞いた。彼なりに考えていることがあるのは間違いなさそうだが、その内容をユキトにも話さなかった。

 おそらく確証が持てた時に、報告をするのだろう――ユキトはそんな風に解釈し、尋ねるようなことはしなかったし、陰のある表情についても、いつのまにか忘れてしまった。


 そうして――ライブ会場における戦いから一ヶ月が経過し、初夏の空気が包み始めた頃、ユキトはカイから連絡を受けた。

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