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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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会場内の遭遇

 ユキト達が魔物を迎撃する間にカイは会場内へと入り込む。魔法を使用することで内部へ潜入することは容易く、一般客が立入禁止の場所にも容易に踏み込むことができる。

 カイは会場内にわだかまる魔力を感じつつも、それが魔物となっているわけではないことにすぐさま気付く。ツカサが仕込んだ魔法が機能しており、それを破壊されない限り問題はなさそうだった。


(とはいえ、だ。邪竜の配下が中へ入り込んでいて、それを破壊しようとしているのであれば……)


 カイはそう推測しつつ内部を見て回る。それと共に邪竜が仕込んだと思しき術式の場所を一ヶ所特定した。


「ここか」


 そこは関係者が入る廊下の一角。明らかに異質な魔力が存在しており、カイは手をかざし、魔力を放つ。

 それによってあっけなく魔力が途切れた。途端、周囲に存在していた魔力は消え失せ、霧散していく。


「会場内にもこういう魔法はあるのか?」


 カイは呟きつつ気配を探る――だが音が漏れ聞こえる方向にはそれらしい気配がない。


「魔物がいるのであれば、混乱していてもおかしくない……魔物という存在が何かしら演出のように見えていたとしても、何もしないはずがないし、怪我人が続出みたいなパターンがあるはずだ」


 しかしライブは滞りなく進んでいる。間違いなく会場内に混乱は起きていない。

 カイは念のため気配を殺しつつ会場の様子を窺う。場内に響き渡る声と、熱狂的なファンの声。その二つが混ざり合い、霊脈から魔力が立ちのぼってくる。


「……ライブは大成功みたいだな」


 カイは呟きつつ移動を開始。まずは邪竜が仕込んだ魔法を全て破壊する。

 そう決意し、素早い動きで対処していく――その途中でユキトから魔法により報告があった。


『まだ魔物は発生しているけど、ヤバい個体は出現していない』

「容易に対処できるというレベルだね」

『ああ。ただ魔物の数が多いし、会場の真上以外からも出現している。現在は会場を取り囲んでいる仲間が迎撃しているけど』

「ひとまず戦線の維持を頼む。邪竜が仕込んだ魔法は見つけたから、それを全て破壊すれば会場内で出現するということはなくなるだろうし、外にも影響があるはずだ」

『わかった……会場内に異変はないんだよな?』

「うん、そこは問題ないよ」

『それじゃあ引き続き迎撃をする。何かあれば連絡してくれ』


 カイは会話を終えて歩き出す。その道中でまた邪竜の仕込んだ魔法を見つけ対処。

 ――やはり邪竜は仕掛けていた、というのを認識すると同時に、なぜここまで手の込んだことをするのかという疑問もカイの頭の中に生じた。ただ、それと同時にカイは考える。


 こんなことをする原因は――自分にあるのではないか。


 カイは無言の中、歩みを進める。スタッフと出くわすこともあるが、魔法によって問題なく対処できている。このまま作業を進め会場内の害意を取り除くことができれば、事態は収束に向かうだろうと考えるが、


「その前に、何かしらあるだろう」


 カイはそう呟き進む――と、気配を察知した。

 それはスタッフなどではなく、まして観客でもない。そこは関係者が入る一般人立入禁止エリアであり、細い廊下が奥へと続いている場所。


 突如、周囲に魔力が。それは間違いなく人払いをしているのだろうと予想できる。

 カイは右手に魔力を集める。魔物が来れば即座に迎撃し、もし他に――と、考えている間にコツコツと靴音が聞こえてきた。


「冷静だな」


 そう告げながら現れたのは、黒髪の男性。スーツ姿で一見するとライブを運営する側のスタッフか、その会社の偉い人に見えるが、


「……邪竜か」

「容易に看破するか。ということは、このように私が現れることを予期していたというわけだな」

「可能性の一つとして、だけどね」


 カイは警戒を解くことはせず相手を見据える。距離はまだ十メートル近くは離れている。一足飛びで斬り込んだとしても、まだ間合いとしては遠い。

 聖剣を所持していればこの距離はないに等しい。だが今はお手製の霊具しかないため、いくらカイであっても対処は難しかった。


「とはいえ、だ。僕としては疑問ではあった……なぜこんな仕掛けを施したのか。その狙いは何なのか……まさか僕とこうして話をするためにこんなことをしでかすとは思わなかったからね」

「だが、それは事実だ……聖剣所持者にして白の勇者、カイ。貴殿と顔を合わせ話をするために、こんな計略を施した」

「魔物が質より量なのは、他の者達を食い止めるためか?」

「そうだ。瞬殺できるとはいえ際限なく魔物が生まれるのであれば、いかに黒の勇者とて現場を離れることはできないだろうからな」


 次々と語られる作戦の内容。ただそれは作戦が成功し気が緩んでいるのではなく、カイと話をするため詳細を語っているという雰囲気であった。


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