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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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パワースポット

 エリカやミナが魔物に襲撃されたことで組織は方針を変更しつつ邪竜の捜索活動を進めていく。ただ攻撃した意図がわからないため、不気味さを残しつつ――ユキトもまたカイに言い渡された調査を行いながら、警戒を強める。


 けれど邪竜捜索に目立った進捗はなく、時間だけが過ぎていく。カイは色々とやり方を変えている様子だが、それが成果を上げることはなく、さらに二週間の月日が流れた。


 そんな折、放課後の時間帯にユキトのスマホに電話が掛かってきた。画面を見るとメイの名前が。

 珍しいと、思いつつも何かまた問題が生じたのか――ユキトは少し緊張しながら電話に出た。


『あ、ごめんユキト』

「いや、俺は大丈夫だけど……今日って仕事じゃないのか?」

『今日はこの時間に仕事が終わったの』

「そうなのか……どうした? 以前やった処置に何か問題が?」

『ううん、そこについてはもうほぼ解消した』

「大丈夫なのか?」

『追加の処置は必要ないかな。魔力面についてはもう平気』

「それは良かった」


 ユキトは内心で安堵しつつ、話を進める。


「それで今日はどうしたんだ?」

『うん、実は私が所属するグループが大きい会場でライブをやるんだけど』


 それはユキトも知っていた。今まででもっとも大きい会場――まさしく彼女が所属するアイドルグループが躍進していることを象徴する出来事。


『そこについて気になることがあって』

「気になること?」

『ツカサやタカオミが、魔力が集積する地点というのを以前調べていた時に……その会場の真下に霊脈みたいなのがあって、影響を及ぼしているというのを見たことがあるんだ』

「……会場が?」

『うん、そこは会場を満員にしたアーティストやグループは必ず売れる、みたいなパワースポットとして扱われているんだけど……』

「魔力が関係しているとか?」

『そこは正直わからない。でも、決して無関係ではない……のかな?』


 ユキトは電話の向こう側でメイが小首を傾げているのがなんとなくわかった。


『ごめん、話が逸れた。それで、そのライブにミナとエリカが行くみたいなの』


 ――現在、彼女達は事情を知った状態で魔法などを用いて警護をしている。とはいえ家から出るなというわけでもなく、基本的に行動は制限していない。

 最初は魔物という恐ろしい存在が出たことによって二人が「外出は控えるべきか」と言ったのだが、最終的にカイやツカサが相応の処置を施し自由にさせた。ユキトはその具体的な内容は知らないが、もし魔物が出てもすぐ対応できるように――という態勢は維持できている。


『何ヶ月前からチケットをとっていたわけで……今日、どうするべきか相談されたんだ』

「なるほど、魔物の出現の際に揃っていた面子が集まるわけか……カイには相談したのか?」

『電話を掛けたけど出なかった……後で説明するけど、ユキトの話を聞こうと思って』


 ――魔物は明らかにエリカ達を狙っていた以上、対策を施している町から出ないようにしてもらうのがベストではある。

 ただ、邪竜側もまったく動いていない状況。襲撃はあったが、敵としては別に目標を定めている可能性も――


『……正直、難しいな』


 ユキトは率直な感想を述べる。


「エリカ達には申し訳ないけど、相談して判断するしかなさそうだ」

『そっか……わかった、カイやユキトの判断に任せる』

「おそらくエリカ達にはカイが連絡をするとは思うけど」

『うん』

「……メイとしては、どうしたいんだ?」

『それはもちろん、観に来て欲しいよ……でも、危険なのもわかるし、他のお客さんに迷惑が掛かる可能性を考慮すると……』


 その言葉を受け、ユキトは「わかった」と答え、


「カイと改めて相談をする……時間が掛かるかもしれないけど」

『ううん、いいよ。よろしくね』


 電話が切れる。それでユキトは小さくため息をついた。


「……仕方がないとはいえ、なんだかやるせないな」


 本来なら組織や魔法と関係のない人なのに――カイが聞いたらどう思うのか。


「ただリスクがあるのは間違いないよな……けれどもし邪竜の狙いがミナ達だとしたら……」


 ユキトは家へ帰る。そこでカイへ電話をすると、彼は二回目のコールで出た。


『どうしたんだい?』

「カイ、さっきメイから連絡が来なかったか?」

『ああ、不在着信になっていたね。ちょっと用があって出られなかった。コールしようかと思った時にユキトから連絡が入ったけど』

「彼女から相談されたんだが……」


 ライブの件と、エリカとミナのことについて話をする。ユキトが話をする間、カイは沈黙し聞き入った。


「……邪竜の狙いがエリカ達であるのなら、今町の外へ出るのは危険かもしれない。カイは、どう思う?」


 問い掛けになおもカイは沈黙する。ただユキトは電話の向こう側にいるカイの姿はなんとなく想像できた。怒りや悲しみといった感情はない――ただ、事実を受け止めどうするか。冷徹に判断しようとしていた。


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