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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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魔法処置

 ユキトとメイが顔を合わせておよそ十数分後、両者はユキトの家へと辿り着いた。家にユキトの母はいるが、魔法によりメイの存在を気付かれることなく、ユキトの自室へと辿り着く。


「ありがと」


 背中から下りたメイは礼を述べる。それに対しユキトは「まだだ」と告げ、


「ここから処置をするんだからな……ただ、俺も作業そのものは不慣れだ。メイに多少なりとも協力してもらうことがあるかもしれない」

「そこは大丈夫……具体的にどうすれば?」

「とりあえず椅子に座ってくれ」


 勉強机のために置かれた椅子を指さしユキトは言う。


「魔法により、どこにメイの魔力……その集積点があるのかを確認する。初期症状ならその場所は一箇所で、該当場所だけ処置すれば解決だけど、熱を持つくらいのレベルだからたぶん分散しているんだよな」

「ん、わかった」


 椅子に座りながらメイは頷く。そしてユキトは、魔法を使い彼女の魔力の流れを調べ始めた。


(……かなり、苦しいだろうなこれは)


 そして最初にユキトが抱いた感想はそれだった。体の各所に魔力が集積している。これを解決するには、まず収束する魔力面から対処しなければならない。


「メイ、まずは溜まっている魔力を発散させる。手を出してくれ」


 メイは黙ったまま手を差し出す。ユキトはそれに触れると、ほんの少しだけ魔力を流す。


「ん……」


 身の内で何か感じ取ったかメイは小さく声を上げる――が、反応はそれだけだった。途端に、どこか苦しそうな表情だったメイの顔が幾分落ち着きを取り戻す。


「今のは……」

「魔法を使って魔力を外部に出した。でも、これはあくまで応急処置。丸一日経てば元の状態に戻るから、魔力が集積する場所に魔法を刻んで体に影響が出ないよう抑える」

「ユキト、魔法は持続するの?」

「メイ自身の魔力を使うからな。つまり、魔力が集積すると同時に刻印した魔法が発動し、自動的に魔力を抑えたり発散させる。魔法そのものは日にちが経てば劣化するけど、次第に体も慣れていくから……」

「刻印そのものが消えた時には、体も慣れて問題なくなっている、ということ?」

「ああ、そういうことだ……で、問題としては」


 ユキトは感じた魔力の集積点を踏まえ、


「結構精密な魔法だから、直に肌に触れて魔法を使用しないといけないんだけど……」

「ん? ああ、そういうことか。別にいいよ。はいどうぞ」


 メイはあっさりと返事をする。その軽さにユキトは苦笑しつつ、


「ちなみに一箇所だけじゃないからな……とりあえず腕を出してくれ」

「右? 左?」

「両方。肘が見えるくらいでいい」


 言われてメイは袖をまくりユキトへ差し出す。真っ白い肌の彼女の腕を見て、ユキトは魔力の流れを見極める。


「両腕の……肘と手のひらの中間地点くらいかな。魔法を使うけど、痛みとかあったら言ってくれ」

「わかった」


 ユキトは両手で彼女の腕に触れる。それと共に魔力を高め、小さく言葉を呟いた。

 それと共に、手先から魔力が流れ、メイの腕に紋様が浮かび上がって――やがて消えた。


「見た目上、刻印についてはわからないし、日常生活をしていく上で仲間に気取られることはない」

「特に注意とかはないの?」

「ああ。何かしらあった場合……ないとは思うけど、魔物が出現した場合とかは遠慮なく魔法を使っていいよ。ただしその場合は刻印そのものが剥がれるから、もう一度作業をし直さないといけないけど」

「もし刻印が剥がれたら、また体調が悪くなる?」

「体が魔力に慣れるまではそうなるな……体調が悪くなるまでに二日三日くらいは余裕があると思うけど」

「ん、ならもしもの時はユキトにお願いするよ」

「可能な限り連絡は早くしてくれよ」

「了解……で、他は?」

「次は……足かな」

「足の裏とか?」

「いや、膝上くらいなんだけど」

「ん、はい」


 メイはあっさりとスカートを引き上げて膝上まで晒す。そんな様子にユキトは、


「一応、大丈夫? と確認するつもりだったんだけど……」

「そんなこと言ってたら処置できないでしょ。それに、ユキトは別に邪な感情とかないだろうし」


(そこは信用してもらっているわけか)


「はあ、一応俺も男なんだけど……」

「ほらほら、早く」


 と、急かすように述べるメイにユキトは苦笑したのだが――あることに気付いた。


(……体調、まだ戻っているわけじゃないか)


 メイの顔つきは少しマシにはなっていたが、やはりどこか熱を持っているようにも窺えた。


(とにかく早急に処置を施して、様子を見よう……ただ)


 ユキトはメイの足に手を置く。膝上部分に触れて魔法を使用し、終えた後一度立ち上がる。


「で、次が最後かな」

「お、早いね。どうすればいい?」


 問い掛けにユキトは沈黙する。それにメイは眉をひそめ、


「どうしたの?」

「いや、何でもない」


 返答しつつ、ユキトはメイへ向け口を開いた。


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