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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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もっとも忙しい高校生

 ユキト達とエリカの顔合わせは成功し、以降頻繁に顔を合わせるようになったらしい。カイとしては満足のいく結果だったと、どこか嬉しそうだった。

 ユキトとしても内心にあったわだかまりが消え、気持ち的には軽くなった――その一方で、邪竜探しについては進捗なく、魔物も散発的ではあるが現れている。


 組織の人員で対処できているため、見た目的に状況は悪くない。とはいえ成果が出ない日々が続いているため、仲間の中でも首を傾げる者が出始めた。


「やり方を変えるべきかもしれないな」


 ツカサはそんなことをカイへ提言し、カイもそれを了承。現在はタカオミと協議し、色々とやり方を考案しているとのこと。

 これについてはある程度時間が経てば成果が出てくるかもしれない――焦りたくなる気持ちを抑え、まずは組織の態勢を盤石にし、敵が現れても即時対応できるだけの準備をする。ユキトはそれを優先として、仲間達と訓練を重ねた。


 その間、メイが組織を訪れることはなかった――大型連休はそれこそイベントがあり、以前彼女が語っていた重要なイベントも開催された。

 彼女はユキトに魔力面で相談をしていたが、結局以降話し合うこともなくイベントを乗り越えた。それで休みがとれれば――とのことだったが、彼女が所属するアイドルグループのイベント内容を見る限り、本当に休みが取れるのか不安に思ってしまう。


「テレビで見る頻度が上がっているんだよな……」


 イベントを成功させたためか、それともここでさらに人気が出たのか――メイは間違いなく今、もっとも忙しい高校生として活動している。しかもその全てを笑顔で乗り切っている。果たしてどれだけ休めているのか。


「異世界で戦った経験と、何より魔法がある。体力的な面はそれで誤魔化せるところはあるかもしれないけど」


 問題は、彼女が魔法――魔力について相談してきたこと。ユキトは日々活動している中で彼女が直面する問題に対する解決法、それを記憶からどうにか引っ張り出して準備をはした。

 今のところ実際に処置をする段階には至っていない。しかし、


「……あれだけ忙しいとなったら、魔法で無理矢理体力を維持するなんて可能性もあるよな」


 そうなったら状況が一気に悪化してしまう恐れがある。メイから連絡はないし、ひとまずどうにか上手くやっているのだろうとユキトは思っているが――


 そんな風に日々考え、やがて大型連休も終わる。クラスメイト達が休み明けでけだるい表情をしている中、ユキトは昼休みに仲間へ声を掛けようとしていた時、


「……ん」


 スマホにメッセージが飛んできた。相手はメイから。


『今日、時間ある?』


 そんな端的なメッセージ。ユキトは即座に『問題ない』と返答。

 今日、身の内にディルはいない。最近は組織に入り浸っており、スタッフとよく会話をしている。ユキトとしてはいざとなれば手元に引き寄せられるので、自由行動について特に文句もない。


 むしろ、この状況では好都合かもしれない――


(今日は組織へ行くのを中止するか)


 メイはメッセージで落ち合う場所を指定する。ユキトが了承した時、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

 いつもならばプライベートのスマホに連絡を寄越すことはない。おそらく以前相談した魔力に関するものだろう――ユキトはそう確信しつつ、授業を受ける。


 メイのことが気になって少しばかり授業が集中できない中、午後の授業は全て終わり放課後を迎える。廊下を出たところでふいにスイハに呼び止められ、


「今日、組織に行こうと思うんだけど……ユキトはどう?」

「ごめん、今日は用事ができた」

「わかった。他の人にはそう伝えておくね」

「ああ……と、そうだ。ディルがいると思うから、俺の帰りは遅いかもしれないと伝えておいてくれ」

「うん」


 ユキトは足早に学校を出る。電車に乗り、メイの言われた場所――以前、エリカと交流した際に訪れた公園に辿り着く。

 ここを指定したことに大した意味はないだろう、と思いつつユキトは公園内を歩いていると、ベンチに座るメイを発見した。


「あ、メイ――」


 名を呼んだ瞬間、ユキトは思わず立ち止まった。そこにいた彼女は制服姿であり、見慣れた姿ではあったのだが、


「……あ、ユキト」


 ベンチに座った状態で手を振るメイ。だがユキトは応じなかった。無言で近づき、


「……前に会ったのは、エリカと顔会わせした時だったか」

「そうだね。結構忙しかったし」


 沈黙が生じる。ユキトは彼女の姿を見て目を細め、


「……誰も仲間に会っていなかったのか」

「うん」

「そうか……なら、誰かが指摘するはずもないよな」


 その言葉がどこか厳しい声音だったからだろうか、メイは小さく「ごめん」と呟く。

 しかしユキトは応じなかった。否、答えられなかった。彼女の姿は――身の内に渦巻く魔力が、目に見えてしまうほどに膨らんでいる様子が見て取れた。


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