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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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なんてことのない話

 都市部の騒動後、ユキト達はファミレスで食事をしながら打ち合わせを行い、その日は解散となった。


 翌日以降、ユキトはカイから今回の騒動に関する調査報告などを聞きつつ、学校生活を送り修練に励む。一日、二日と経つごとに魔物に関する調査も進んでいき、最終的にユキト達が倒した魔物は全て跡形もなく消え去った、という結論に達した。


『あくまで暫定的な結論になってしまうけれど、ね』


 学校の昼休み、中庭でユキトはカイから電話による報告を受ける。


『経過観察はするけれど……それと、索敵を行ったことにより少しばかり厄介な事態になっていた』

「他の場所に魔物が現れたのか?」

『そうだ』


 ユキトは頭をかきながらどうすべきか思案する。


「……倒して回るしか、ないよな」

『現状では、ね。魔物を発生させない仕組みを作るか、あるいは魔物が発生しても倒せるシステムを構築するか』

「どちらも現段階では非現実的だな……早速動くのか?」

『いや、昨日のように切羽詰まっている状況ではないから、少し様子を見る。そして、誰が向かうかは選抜しようと思う』

「俺やスイハだけでやるわけじゃないか」

『うん、十中八九こういうことが今後増えるだろうからね……ただ、一つ問題がある』

「問題?」

『というより、魔物の発生場所についてひどくバラバラなんだ。都市部かと思ったら、住宅街だったり、あるいは寂れた商店街であったり……はたまたキャンプ場であったり』

「人がいる、いないであんまり関係ないのか?」

『魔物が発生するポイントに規則性がない。だから現状ではしらみつぶしに魔物を探すしかないんだけど』

「かなり大変だよな、それ」

『うん……霊脈の位置などが関係しているとは思うのだけれど、さすがにあらゆる場所の霊脈を調査するには人員も時間も足りないからね』

「……地質調査と誤魔化して霊脈を調査していくしかないか」

『ただ、それをやったとしても果たして規則性が判明するかどうかも……そもそも霊脈は川の流れのようなもので、常に変化する。川は物理的に流れる場所を工事などで一定にできるけど、霊脈はそうもいかないからね』

「全国を調査して、これで万全かと思ったら霊脈の流れが変わっている……なんてことがあると。そうなったら、魔物の発生予測なんて夢のまた夢だな」

『うん、やるとすれば霊脈の状況をリアルタイムに調査するシステムの構築だけど……』

「……人員とか予算どころの騒ぎじゃないな」


 そんなこと、異世界でもやっていなかった。


「魔物の発生位置を予測するのは、それこそ地震を完璧に予測するみたいなものか」

『そうだね。現時点では無理……とはいえ、不可能というわけじゃないから、どうすべきか考えてしまうんだよね』

「かといって一クラス分の人数ではどうにもならないよな……」


 ユキトとカイは沈黙する。周囲では歩きながら談笑する生徒の姿が映る。


『……ともかく、可能な限り組織として対応はする。まずは索敵範囲を今以上に引き上げることを優先する』

「それは邪竜の発見にも繋がる、からか」

『うん。それに今回の魔物の発生……これは邪竜が直接的に関与したわけではないけれど、奴の活動が遠因となって、という可能性も否定できない。よって、可能な限り早急に調査を進める』

「了解……俺達は次の指示が来るまで待てばいいな?」

『うん、それで頼む……これでひとまず報告は終わりだけど』

「まだ何かあるのか?」

『前に約束したことだけれど』


 カイの幼馴染みに関することだろうとユキトは思い、


「ああ、日時なども決めただろ。何か不都合が?」

『いや、予定そのものは変わらないよ。より細かいスケジュールとかをデータで送ろうと思って』

「わかった……なんというか、気合いを入れているみたいだな」

『まあ、そうだね』


 ――口調から、多少なりとも緊張しているのだろうとユキトは直感した。彼にとっても幼馴染みについては、色々思うところがあるらしい。


「正直、俺にフォローできるかどうかわからないけど……」

『ありがとう。でも彼女については僕が必ずなんとかすると決めているから、ユキトはただ付き合ってくれると嬉しい』

「……迷惑にならないよう頑張るよ」


 そうして会話を行った後、ユキトは通話を終えた。そこでなんとなく、電話の向こう側にいたカイの顔つきが緊張しているのでは、などと考えた。


「……なんてことのない話、だと思うけどな」


 魔物の出現、邪竜の謀略――それと比べればちっぽけな話だろう。

 でも、異世界へ召喚され大きく歪んでしまった関係性である以上――ユキト達にとっては、複雑な思いを抱く話であるのは間違いない。


「絶対に成功させないと……でも、俺にできることはほとんどないよなあ……」


 カイに言った通り、迷惑にならないよう頑張ろう――いつになく弱々しい決意を抱きつつ、ユキトは教室へ戻ることにしたのだった。


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