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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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霊具の機能

 ザアアア――と、形容するならそうした音がユキトの耳に入ってくる。まるで風に流れる葉擦れの音みたいだったが、それは一定のリズムを刻み、公園へと近づいてくる。

 ユキトは地面へ視線を向ける。そこに、多数のネズミが存在し、一様にカイが発する魔力溜まりへと進んでいく。ユキト達の敵意に気付けば逃げる可能性もあるが、警戒する様子はない。


「カイ、まだ魔物は近づいてくるな」

「集結する魔物が途切れたら攻撃しようか」

「……俺がやるんだよな?」

「そうだね。僕が魔力溜まりを上手く操作して、ネズミ達を結界で閉じ込める。スイハ、僕が結界を行使するタイミングで魔力を注いで結界そのものを強化して欲しい」

「わかった」


 段取りを話す内に、さらにネズミが近づいてくる。傍から見れば、押し寄せるネズミ達に恐怖を抱いてもおかしくないのだが――


「スイハ、大丈夫か?」

「平気。これって、霊具の効果もある?」

「そうだな。嫌悪感を始めとした、色々な感情……戦闘に支障が出るような感情は抑制される。精神の均衡を維持する霊具の機能だが……まさかイズミ、ここまで再現するとは」

「彼女とも相談したのだけれど」


 ユキトのコメントに対し、カイが発言した。


「その機能は絶対に必要だと判断したんだ」

「霊具の使用には欠かせないということか?」

「そうだ。霊具を自在に行使するためには体調面もそうだけど、精神面も安定していなければならない。これはユキトもよくわかっているはずだ。そのためにはどうすればいいか……僕らが異世界で手にした霊具には例外なく精神を安定させる機能が備わっていた。ならば、僕らが作成する霊具も同様にするべきだと考えた」

「なるほど、な……正直、ビジュアル的には恐ろしい状況だが、二人が冷静になれているのは良かった」


 ――話す間に、ネズミが魔力溜まり周辺に集結していく。カイが発する魔力は地面ではなく地上から少し宙に浮いた状態で収束しているのだが、ネズミ達はその場所に触れるために多数のネズミが踏み台となって上へと群集が伸びていく。


「よっぽど僕の魔力が気に入ったみたいだね……魔力をつかもうと多数の個体が自らを踏み台にしてでも手に入れようとしている」

「なあカイ、異世界における魔物って、こんな貪欲だったか?」

「……あの世界ではこんな魔力溜まりがなかったから、興味深い現象に見えるかもしれないけれど、僕は何度か見たことがあるよ」

「あるのか……ということは、魔物の特性は俺達が召喚された世界とそう大きく変わるものではない、か?」

「この世界とあちらの世界とでどの程度魔力が違うのかは不明だけれど……僕らが異世界ですぐ適応できたことを考えれば親和性は高いのだと思うし、似た魔物が生まれてもおかしくない。むしろ魔物が生まれた環境の方が、より重要だと思う」

「生まれた環境か……」


 この世界の人々は魔物を認識していない。そうした中で魔物自身はそれでも見咎められないよう気配を消している。これはもしかすると、モデルとなったネズミ本来の習性や特性だって関係しているかもしれない。

 会話を繰り広げている間も、ネズミが続々と集結してくる――やがて、ユキトは公園を訪れるネズミが途切れたのを悟る。そしてカイの周辺では無数のネズミが魔力溜まりを取り巻き、まるで一個の巨大な生物と思えるほどの何かを形成している。


 ユキトが索敵魔法を消したと同時、カイは気付いて声を上げた。


「ネズミが来なくなったかい?」

「ああ。この周辺……少なくともネズミの魔物が魔力溜まりを察知できる範囲では集結したらしい」

「後は、これで全てだと祈るしかないね」

「……カイが発した魔力溜まりは広範囲に魔力を拡散していた。一番遠くにいた魔物がどの程度の距離を駆けつけたかは不明だが……この周辺に根城を構えている魔物なら、余すところなく誘い込めた、かもしれない」

「経過観察が必要そうだ……そして、同様の魔物が他の場所にいないかも確認しないといけないね」


 カイはそう述べた後、静かに魔力を高め始める。


「未来の話をする前に、まずはこの魔物達を倒そう。一気に結界を構築して魔物を閉じ込める。ユキト、攻撃手段は?」

「魔物を浄化する系統のやつでいいよな?」

「ああ、それで構わない」

「……浄化?」


 スイハが疑問を呈す。そこでユキトは、


「魔物を倒す手段のうち、魔物だけを倒す方法がある。それが浄化……ゾンビを神聖な魔法で浄化するみたいな魔法が漫画とかに出てくるだろ? それと似たようなものだ」

「メリットとしては、魔物以外を傷つけることがない」


 ユキトに続く形で、カイが解説を加える。


「浄化魔法は魔力のみで構成されている存在にのみ通用する。つまり、僕らや公園の建物などは傷一つつかないというわけさ。ただし、一定の力を持つ魔物には通用しない……実際、邪竜の眷属や迷宮の魔物には一切通用しなかった」

「でも、こいつらなら通用するというわけだ」


 ユキトは言うと同時、両手に魔力を集め――カイが、結界を構成した。


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