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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第七章

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小さな魔物

 ユキトが動くのを見ても、ネズミの形をした魔物については反応しなかった。多少なりとも魔力を発露しているにも関わらず、まったく興味がないという様子を見て、魔力の感知能力は低いのだろうとユキトは察する。

 ただ、そうなると一つ疑問が生じる。魔物である以上は魔力を糧にしているはずであり、魔力を感知できないのであればどういう理屈で体を維持しているのか――


(いや、そこについては愚問か)


 ユキトは苦笑する。なぜならこの世界には魔力が満ちている。小さな個体であれば、呼吸をするだけで生存が可能なはずだ。


(俺達が召還された世界で、小さな魔物もそれなりに魔力を自発的に取り込まないといけなかった。魔力が滞留している場所であればその限りではなかったし、実際に何もせずとも生きながらえている魔物を見たことがある)


 しかし――どうやらこの地球という世界においては、魔力そのものが多量に存在しているため、小さな個体であれば楽々生存できるらしい。


(ということは、現在進行形で小さな魔物とかが発生しているということか? 邪竜との戦いにより霊脈が活性化され、魔物が出現している……小さな魔物がいるとしても、索敵には引っ掛からないはずだし……)


 もしそういう魔物が多数生まれているとしたら、ユキト達にとってはあまり良い事態とは言えないだろう。

 考えている間に魔物へ近づく――それと共にまた一つ疑問が生まれる。


(魔物が生存できるのはわかった。だとすれば、こいつは何が目的でここにいる?)


 そう心の内で呟いた時、ユキトの目に魔物がある魔力で覆われていることに気付いた。


「……気配を消しているな」


 ユキト達であればわかる魔力。だが、魔力を観測できなければネズミの存在に気付くことができない。そういう魔力をまとっている。

 ユキト達は魔力を発し視界を通して見ているため、魔物に気付くことができた。しかし、周囲の人は気付かない――辺りに視線を漂わせる人間だっているはずだが、仮に床に視線を向けたとしても、ネズミがいるとはわからないはずだ。


 なぜなら、魔力を観測できなければ見えないようになっている――


(これは魔物が独自に編み出したのか? それとも、邪竜が生み出した魔物か?)


 疑問がさらに膨れ上がりながらも、ユキトはとうとうネズミがいる場所まで接近した。それと同時、軽く手を振る。一瞬だけ、手に漆黒の剣を生み出した。

 刹那、刃が魔物の体を通過する。小さい個体であり、床を斬らず魔物だけを斬るというのは繊細な技術が必要なのだが、ユキトはそれを難なくやってのけた。


 ネズミは刃が入るとあっさりと消滅する。ユキトはそれを確認した後にカイ達がいる場所まで戻ってくる。


「倒したが……色々わかったことがある」

「僕もこの距離で観察していた理解した。魔物は動物の見た目で誤魔化しているだけじゃない……そもそも、周りの人には見えていないようだ」

「それは私も思った」


 と、カイに続きスイハがユキト達へ向け語る。


「明らかに床に目を向けている人がいたけど、気付いている様子がなかった。ネズミなんて地下街には普通にいるし、とか考えて感心がなかったという可能性もありそうだけど」

「いや、間違いなく気付いていなかっただろう」


 カイはそう断定すると、ネズミがいた場所へ目を向けながら、


「邪竜が生みだし、そういった特性を持たせたという可能性はあるけれど、わざわざこんな個体を作るだろうか、という疑問はある」

「でも、自然発生的に生まれた魔物が、あんな能力を持っていると思うか?」


 と、ユキトが疑問を呈した時、異世界での戦いを思い返す。


「いや……ゼロではなかったか」

「うん、ユキトの言うとおりだ。魔力が濃い場所だと魔物は狡猾になり、多少ながら知能を持ち自らの魔力で身を守ろうとする。今回のネズミの場合は、人にバレると騒動になるかもしれないということを学習し、気配を消している……という見解もできる」

「邪竜が陽動で魔物を生み出した可能性は?」

「無論、それもある。よって現時点で結論は出せないな……とはいえ、魔物がいる以上は倒さないといけない」

「でも、群れを成しているならどうするんだ?」


 ユキトが問い掛けるとカイは考え始める。その間も三人は視線を周囲へ向け、魔物がいないかを確認する。


「……ユキト」


 一分ほど経過した時、カイは名を呼んだ。


「魔物の気配は?」

「さっきの魔物が持つ気配を参考に索敵をしているが、地下街に点在しているな」

「あの魔物がどういう目的を持っているかはわからないけれど、少なくとも群れを成し個体数を増やそうという意図はあるだろう。まずは他の魔物を見つけ出して、倒しつつ魔力をより詳しく解析しよう」

「索敵魔法の効果を高め、魔物の位置を精査できるようにすると」

「そうだ。群れを成しているのであれば、どのくらいの数いるのかも把握しなければならない……時間を必要とするだろうけど、まずはそこからやっていこう――」


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