彼女への計画
「俺のことは、何か言及していたか?」
メイとミナが話を続ける中で、ユキトはカイの幼馴染みについて尋ねる。
「その、俺が干渉したことで話がこじれたわけだし……」
「ああ、そこは大丈夫だよ。相談に乗ってくれた人に対し憤慨しているというわけじゃない。ちゃんと確認もしたし、ユキトが気に病む必要はない」
「そっか」
「むしろ彼女の方が謝りたいと言っていた」
「……それは、何故だ?」
「騒動があった際、他ならぬユキトもショックを受けていたし……何より、転校してしまったからね」
「……ああ、それもそうか」
むしろ、何故そのことに気付かなかったのかとユキトは頭をかく。
「引っかき回した挙げ句いなくなっただから、やっぱり怒っても仕方がないと思うんだけど」
「そこは大丈夫さ……そうだ、ユキト。よければ彼女と会って話をしないかい?」
「……そこは別に構わないけど」
「なら、話を通しておくよ」
言われ、ユキトは不思議な気持ちになった。そもそも召喚されるより前はカイの幼馴染みとは交流すらなかった。でも、色々あってカイが仲介し話をするというのは――
「……なあ、カイ」
ふと、ユキトはカイへ向け口を開いた。
「あの人と幼馴染み……関係はあるのか?」
ミナへ目を向けながら問い掛けるとカイは、
「いや、ないよ」
「その、カイが幼馴染みに対し色々やるのなら……まず、カイの友人とかと交流させるのも手じゃないかと思うんだが」
「ふむ、なるほど……確かに、一理あるね」
「住む世界が違うとか言われるのか?」
「どうだろうね。今は僕も彼女も歩み寄っている状況だ。その上で僕も彼女が知らないことを紹介したりするのは良いかもしれない……ただ、他ならぬミナの方がどう反応するのか――」
と、ここでメイとミナがカイへ視線を送った。
「用があるっぽいぞ」
ユキトが言及すると共に二人は近づいてくる。そして先んじて口を開いたのはメイ。
「ねえカイ、もしかしてミナさんに幼馴染みのことを話してないの?」
「……ミナは関係性について知ってはいるけど、知り合いではないよ」
「前々から気になった部分ではあるんですよね」
と、他ならぬミナから言及した。
「ただ、カイと彼女との間のことなので、私から何か言及することは控えていたわけですけど」
「……別に、会わせたくないと思っていたとかではないよ」
どこか弁明するかのようにカイは告げる。
「ただ、きっかけがなかった。それに、なんとなくだけれど……僕自身、僕がいつもいる世界のことを話すのを躊躇っていたのかもしれない」
「カイの方が、ですか?」
「僕自身、彼女とは分け隔てなく接していたつもりだし、彼女が言う住む世界云々については無いと語っていたけれど……改めて考えると僕自身もまた、色々壁を作っていたのかもしれないな」
ふう、とカイは息をつく。そして、
「なら、僕も一歩踏み出そうか……とはいえ、だ。ミナのことを紹介するにしても他ならぬ君自身が頷いてくれなければいけないが」
「私は構いませんよ」
あっさりと返事。するとここでメイが口を挟む。
「実を言うと私も気になっていたんだよね……そもそも今はどういう感じ?」
「色々あって告白はした」
「おおー」
拍手をするメイ。そこで隣にいるミナは反応を見て笑った。
「おめでとうございます、カイ」
「とはいえ、一緒になるためには色々解決しなければならないことがある……その中でミナの存在は、現状を変えるきっかけになるかもしれない」
「カイには幾度となく助けられてきましたし、私は喜んで協力しますよ」
「……僕の方も色々とミナには世話になっているけれど」
「私からすれば、頼まれるより頼むことの方が多いですよ。メイさんに会わせてくれなんて、無茶の極致みたいなものなのに」
(互いが気を遣っている感じだな)
ユキトはそう考察しつつ、よき友人関係なのだろうと察した。
「……彼女が萎縮してしまうか、それとも僕のことを知り喜ぶかは未知数だけれど、やってみようか」
「なら計画が必要ですね。単に会うだけではなく、ちゃんと交流するべきでしょう」
ミナの意見にカイは小さく頷く。一方でメイも乗り気なのか、
「それじゃあさ、今度話をしない? ユキトやミナと改めて」
「俺も?」
「ユキトだって思うところはあるわけでしょ?」
(……俺だけじゃなくてメイまでやってきたら、頭がパンクしそうだけど)
と、ユキトは思ったりもしたが犯した過ち――少なくともユキトはそう思っている――を、きちんと精算するには良い機会だとも感じたし、自分一人で会うより良い結果になるだろうとも感じた。
「カイが承諾するなら」
「僕は構わないよ。それじゃあ、日を改めて打ち合わせをする予定を立てようか。帰ってから電話でもいいけれど、四人のスケジュールが合うなんてあまりなさそうだし、今この場で決めてしまった方がいいだろうね――」




