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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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遠大な計画

「……惨敗、だな」


 とある部屋の一室。ヒロは先ほどの戦いを振り返り、小さく呟いた。


 ――ユキト達が戦っていた魔物。その全てはヒロが操作していた。


 主であるリュオから実験と称して魔物の指揮権を託された――その目的は遠隔による操作で問題なく動けるのか確かめるため。結果として複数の魔物を中継し、命令を与えることで安定した動きを見せるようになった。


 その時、遭遇したのが竜を倒した者達――即座に命令をどう与えているのかなどを見極められ、あっさりと全滅した。

 ならばと、次は強力な悪魔。ヒロはこれを操作している間、不思議な高揚感に包まれた。例えるなら、人型ロボットを操縦しているような――けれどあっさりと敗北し、ヒロは部屋の中で一人ため息を吐く。


「強い、というレベルじゃないなあれは……」


 後方にいる人間に狙いを定めたが、その動きを全て読まれて対処された。ついでに言うなら、戦っている最中にまったく底が見えなかった。

 とはいえそれは至極当然のことだった。なぜなら相手は主を打倒した存在。手に握りしめる剣は異世界由来の一品であり、霊具というこの世界にはあるはずのない、神々の武具。


 主は驚異的な力を持ちこの世界を蹂躙できるだけの力はあるはずだが――相対する敵もまた、同等の力を所持している。


「どうやって勝つんだ? あれに」


 ヒロは一考するが、正直どうやって倒すのか想像すらできなかった。どれだけ魔物を用意したとしても、例え万の軍勢であってもあっさりとはね除けるだけの強さがある。そんな風に感じられた。


「終わったか?」


 その時、部屋に入ってくる者が。主であるリュオだった。


「その顔つきだと、全滅したようだな」

「ああ。向こうは怪我人すらなしだ」

「構わない。遠隔でも問題なく操作はできたのだろう? であれば今日の目的は達成だ」


 そう述べたリュオに対し、ヒロは不満げに尋ねる。


「これで仕込んでいた魔物はなくなったわけだな?」

「ああ、手持ちの駒は全て使い果たした」

「ミリアの工作は?」

「進んでいるはいるが、まだ実を結んでいるわけではないな」


 状況は明らかに悪くなっている。しかし、リュオの表情は変わらない。むしろ、


「ここまでは予定通りといった案配だな?」

「ああ、その通りだ」

「手持ちの駒がなくなるのも、相手が戦力強化していることも予定通りか?」

「いささか相手の強化速度は早いが……おおよそ想定通りではある。異世界に召喚された者達は二グループいるのだが、その二つが顔を合わせ、強くなる……ついでに霊具も作成する、という流れは予想できた」

「明らかにこちらが強くなるよりペースが早いな」

「そうだな。こちらのアドバンテージはどこにいるのかわからない、くらいだ」


 明らかに劣勢ではあるのだが、それでもなおリュオは自信ありげな顔つきだ。


「……どういう手で動く気だ?」

「向こうはどういう状況になろうと動ける態勢を構築しようとしている……例えば、断続的に魔物を発生させて疲弊させる、という手段も通用しないだろうし、それではこちらが逆に魔物の生成に集中することになり、他の策がおろそかになる。あまり意味はないな」


 ではどうやって――と問い返そうとした時、リュオはさらに続けた。


「実験については滞りなく終了した。ここからは新たな作戦の準備段階に入る……が、その作戦は大きな目的に対する布石だ」

「目的を達成するために、次の作戦を実行すると」

「そうだ」

「その目的は……最終目標とは違うのか?」

「過程の一つにすぎない……が、これを実行することでかなり前進することは間違いない」


 なるほど、ここからが本番か――と、ヒロは内心で呟いた。


「ただしここからはより慎重に動く必要がある。というのも、直接相手方に干渉することになるからな」

「こちらの動向が露見するというリスクがあるってことか」

「いかにも。ただそうした中で最終目標へ到達するために、色々動くことができるかもしれない」


 ――どこまで遠大な計画を組んでいるのかとヒロは思う。それと同時に、人外であるためか心理すら読み解くことができないなと感じた。


「……何かしら意見はあるか?」


 そんなヒロの心境を推察してか、リュオは問い掛けた。


「いや、別に――」

「傍から見れば迂遠な行動だと思うのも無理はないだろう」


 そしてリュオは、ヒロが内心で考えている事に対しても言及した――確かに、実験と称して動いてはいるが、本当に意味があるのかと疑問を抱いているのもまた事実だ。


「そうだな、この辺りで少しばかり明かしておくか。一体何をしようとしているのか」


 ヒロはその言葉にリュオを注視する。人ではない存在の策謀。それは果たしてどこまで及んでいるのか。

 リュオが語ろうとした時、部屋にノックの音が。そこでリュオが応答すると、


「ここにいらしたのですか」


 そう述べて中に入ってきたのはミリア――ここにいて当然だ。なぜならばヒロの潜伏先は彼女の所有する建物であるためだ。


「少々お伺いしたことがありまして」

「ああ、丁度良かった。ミリアについても動いている以上、話す必要はあるだろう」


 リュオはそう語ると、ミリアへ視線を注いだ。


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